お疲れ様。  差し入れ持ってきたよ。  ふふふ。  でも、課題は順調みたいだね。  御影先生は、どこか行っちゃったの?    あまね。シーラちゃんは今日、勉強会でしょ。  シーラちゃん。勉強会への参加表明がきっかけで、すごくやる気だと思われちゃって。  志保さんに色々薦められてるんだっけ。  対等かぁ……。  …………。    …………。  ……。  そうだな……。  あのね。  急にごめんね。  ちょっと、違う話してもいい?  この前の。現国の授業の事。  あの時あなたは、  『小説の『主人公』は、ヒロインである『彼女』と対等になりたいと思っている』  『そうするには、まず、彼女を様々なしがらみから解放し、選択の余地がある状態にしなくてはいけない』  『そうする事で、彼女は救われ、一人の人間として独立する事ができるからだ』  『その時二人は、真に対等になれる』  『そう主人公は考えているから、今は無茶をしている』  って、言ったよね。  ……でも、その意見。  私はちょっと、あなたの主観が多く入ってるなって思ったの。  あなたの考える主人公は、ちょっと、対等になる事を重視しすぎてるなって。  もちろん、色々な解釈があっていいと思う。  ただ、私のとは、ちょっと違う。そう思ったの。  うん。  だから……今日は、私の解釈を言うね。  私が思うに。  『主人公』が望むように、『彼女』もまた、主人公と対等になりたい気持ちはあると思う。  ……それは、主人公にふさわしい人物になりたいから。  彼女は、自分に選択肢を与える為に頑張っている主人公に恩を感じているし……。  その姿を尊敬している。  だから、たとえ、一緒にいられない事で淋しい思いをしても。  きっと何も言わないと思う。  だから。この課題にはないし。  小説でも描かれる事はなかったけど……。  もし、この解釈が『意外と近いかも』『正解かも』って思った時。  『主人公』は、どうするんだろう。って思う事があるの。  ……あなたは、どう思う?  主人公は、どうするのかな?  ん? 誰から?  ん? どこへ行くの?  そうなんだ。  まぁ、課題はできてるみたいだし……。  どうしても外せない用事があるなら、仕方ないと思う。  御影先生には、私達が代わりに渡しておいてあげる。  気をつけてね。