あ、お疲れ様です。 先輩はこの後、サークルに顔を出すんですか? 私は……ごめんなさい、寄りたいところがあるので、これで帰りますね。 ねぇ、どこへ行くつもりなのか、とか聞いてくれないんですか? あっ、ごめんなさい。 先輩とちょっとお話ししたくて、変なこと言っちゃいました。 えへへ、実は私、最近ボクササイズを始めたんですよ。 それでジムに行こうと思ってたんです。 私、やせてるように見えるかもですけど、ちょっと太りがちなんですよね。 だから元から運動は結構やってるんですけど、試しにサンドバッグを叩かせてもらったらハマっちゃって。 ほら、見てくださいよ。 あまり高いのじゃないですけど、グローブとかも買っちゃったんです。 えへへ、かっこいいでしょ。 でも、本当はもっとちゃんとしたのが欲しいんですよね。 ただ、結構値段もするし、このグローブも買ったばかりなのでしばらくは我慢しようかなって。 え、先輩……私の誕生日覚えててくれたんですか? 確かにもうすぐですけど……もしかして、プレゼントしてくれるんですか? 先輩、嬉しいです! でもやっぱり、先輩には悪いですし……そうだ、じゃあちょっとした勝負をしませんか? 私が勝ったら、このグローブを買ってもらう。 私が負けたら……そうですね、先輩の言うことを何でも1つ聞きますよ 大丈夫ですよ、先輩がそういう酷いことは要求しない人だって知ってますから。 勝負の内容ですか? ふふ、ボクシングですよ、ボクシング。 なんですか、その顔。 あ、もしかして女の子を殴るっていうのは気が進みませんか? だったら、こういうのはどうですか? 私だけがパンチを撃って、それをガードしたり避けたりして、2分間ダウンせずに耐えられたら先輩の勝ちっていうのは。 ふふっ、大丈夫ですよ。 私、ボクササイズなんて始めたばかりですし。 それに高校の時なんか、体育の成績、すごく悪かったんですよ? 運動してるっていっても、他の女の子の方がずっと体力とかあるでしょうし。 まあ、万が一、私が勝ったとしても先輩の目的は果たせるわけですしね。 えへへ……でも先輩も男の子ですし、女の子のパンチでダウンなんかしちゃダメですからね? じゃあ先輩、さっそくこれからやりましょうよ。 うちの大学、使ってないリングがあるんです。 昔はボクシングのサークルがあったみたいですけど知ってました? 準備なんてそんなのいりませんよ。 お互い全力で殴り合うわけじゃないですし。 ねぇ、いいですよね?先輩。 じゃあ先輩、改めてルールを確認しますね。 先輩からの攻撃は無し。 ここのスポーツタイマーはまだ使えるみたいですし、2分にセットしますね。 それまで立っていられたら先輩の勝ちってことで。 先輩、緊張してるんですか?顔が赤くなってる。 ふふっ、かわいい。 私の方は大丈夫ですから、先輩がよければタイマーを操作してくださいね。 ふふっ、早速撃たせてもらいますね。 シッ! ううん、簡単にガードされちゃいました。 しかも全然効いてないみたいですし……。 でもまだ始まったばかりですから、どんどんいきますよ! シッ! シッ! シッ! ジャブだけだと流石に厳しいかなぁ。 だったら、少し強いの、撃ち込んでいきますね! はいっ! シッ! シッ! シッ! えへへ、ちょっとは効きましたか? 腕がプルプルしちゃってますよ? このままガード、崩させてもらいますね! やあっ! えいっ! シッ! シッ! シイッ! あはっ、ようやくガードを開けてくれましたね。 もう腕、上がらなくなっちゃいました? えへへ……結構時間使っちゃいましたけど、これで先輩はもう私のパンチをノーガードで受けるしかないですね。 もちろん避けられるんだったら避けてもいいですよ? ま、先輩は私のパンチ、目で追えてないみたいですから頑張るしかないですけどね。 じゃあ……いきますよ? シッ! シッ! シッ! ジャブ、ジャブ! ワンツー! フック! ジャブ! ワンツー! ストレート! アッパー! ふふ、もう終わりですか? 男の癖に弱いんですね。 トドメ、刺してあげますね、 アッパーの連打で脳みそ揺らしてあげれば、ダウンしてくれますよね? アッパー! アッパー! アッパー! アッパー! これで……倒れてっ! あははっ、先輩、ダウンしちゃいましたね。私の勝ちです。 あははっ!あとほんの数秒耐えれば勝ちだったのに、残念でしたね。 あ……先輩、ごめんなさい。私、つい楽しくなっちゃって。 それに、私だけが攻撃していいなんてルールなんて、不公平でしたよね。  私、何て言ったらいいか……。 やっぱり新しいグローブも買ってくれなくて大丈夫ですよ? えへへ……そうですか。 そう言って約束を守ろうとしてくれるところ、好きですよ。 そうだ、私の誕生日にまたここで、今度は普通にボクシング勝負しませんか? 私のパンチでダウンとれることも証明出来たし、先輩もこのままだと悔しいですよね? えへへ、女の子の顔を殴りたくない、なんて言ってももう聞きませんからね? じゃあ決まりです。 約束ですからね。 えへへ、先輩、ありがとうございます。 私、こんな風に男の人からプレゼントをもらったの初めてなのですごく嬉しいです。 じゃあ早速、このグローブ……はめさせてもらいますね。 わぁ、ぴったり。 どうですか?似合ってますか? ふふっ、ありがとうございます。 えへへ、なんだか本当にボクサーになった気分です。 じゃあもう一つの約束の方、お願いしますね。 ええ、もちろん本気です。 せっかくの新しいグローブなんだから、使ってみないとですよね? それに、先輩に貰ったものなんですから、初めて使うのは先輩との勝負がいいじゃないですか。 あ、先輩には私が今まで使ってたグローブをあげちゃいますから、それを使ってくださいね? サイズとかも大丈夫だと思います。 えへへ、先輩もよく似合ってますよ。 じゃあ、今回は普通のボクシング勝負ってことでいいですね。 ボクシングのルールは覚えてきてくれましたか? 時間とかラウンド数とかは色々あるみたいですけど……。 今回はあまり細かいことは決めないで、時間は無制限。 ダウンしてもカウントはとらないってことにしましょうか。 とにかくどちらかが倒れるまで殴りあって、立てるか立てないか、それだけです。 えへへぇ、その顔……負けた時のこと考えちゃってます? 大丈夫ですよぉ、今回はお互い公平なルールですし、負けないですよね? 私、今まで格闘技なんてやったことないですし、誰かを殴ったのなんてこの前の先輩との勝負が生まれて初めてだったんですよ? 普通に勝負したら、先輩が負けるわけ……ふふっ、ないですよね? 先輩、そろそろいいですか? 私、早くこのグローブを使いたくて仕方ないんです。 じゃあ……始めますよ? んー、いきなりガード固めちゃってますけど、先輩も打ってきていいんですよ? あ、もしかして……私にいっぱいパンチ浴びせられたのを思い出しちゃって、ガードを解くのが怖いんですか? えへへ、かわいい。 でも、自分から攻めていった方が、結局は被弾は抑えられると思うんですけど。 まあ来ないんだったらいいですよ。 シッ! シッ! シッ! ほらほら、反撃しないと勝てませんよ? シッ! シッ! シッ! いきなりガードに徹するんだから、前回と同じにならない策があるのか、それか練習でもしてきたのかと思ったんですけど……違うみたいですね。 えへへ……私はぁ、今日が楽しみで、いっぱいサンドバッグを叩いてきたんです。 前よりパンチ力もスピードもテクニックも上がってると思いますよ。 だからそんなガード、すぐに壊してあげますね。 シッ! シッ! えいっ! やっ! 連打、いきますね。 ふふ、もう腕がガクガクしちゃってますね。 これなら先輩のガードを突き抜けながら、私のストレートを叩き込めちゃうかも。 試してみますねっ。 ストレートっ!! あははははっ!綺麗に入っちゃいましたね! ガード破られながらパンチをねじ込まれちゃう気分はどうですかぁ? 悔しいですか?悔しいですよね? 私はとっても気持ちいいです。 先輩が買ってくれたこのグローブで、先輩にパンチを叩き込むの、最高です。 えへへ……ガラ空きの顔面にストレート、もう一発いきますね。 せーのっ! あはっ……私のパンチがずばーんって先輩の顔に直撃しちゃいました。 せっかく顔を狙うって言ってるんですから、ガードするなり避けるなりしたらどうですか? もうフラフラになってますけど……これで終わらせるのは勿体ないですね。 ストレートを2発も入れられちゃいましたけど、女の子のパンチなんですから、先輩も頑張ってくださいね。 しばらくはジャブで可愛がってあげます。 シッ! シッ! まだまだいきますよぉ。 シッ! シッ! どうですか?私のパンチの味は。 シッ! シッ! シッ! 私のパンチが先輩の顔を撃つたびに、なさけな~い悲鳴、漏れちゃってますよ? ふふ、女の子みたい。 ジャブ。 ジャブっ。 ジャブっ。 ねえ先輩、撃ち返してくれてもいいんですよ? 私はいっぱいパンチできて楽しいからいいですけど、先輩は一方的に殴られ続けるだけ。 悔しいですよね?このまま負けるのは嫌ですよね? ほら、しばらく攻撃を止めてあげますから、撃ってきていいですよ。 どうしました? もう腕、上がらないんですか? あははっ!情けないですね。 自分から攻めた方がいいって忠告を無視した癖に、結局こうなっちゃうなんて。 先輩って、おバカさんですね。 じゃあとりあえずラッシュ叩き込んであげますから、1回おねんねしましょうね。 ジャブ! ワンツー! フック! アッパー! ワンツー! アッパー! ジャブ! ワンツースリー! ストレートっ! あはっ、全部クリーンヒットしちゃったぁ。 私のパンチが入る度に、顔面を弾き飛ばされて、よだれ撒き散らしながら悶えてる先輩、すごくみっともないです。 うふふ、必死に立とうとしてますけど、腕や足に力が入らなくて崩れ落ちちゃって。 ここからずっと眺めてるのもいいですけど……私は優しいですから、起きるの手伝ってあげますね。 ほら、私の体に腕を回してくれていいですから……ほら、ゆっくり立ち上がりますよ。 あ、先輩の顔が私の胸に当たってますけど……今回は特別ですよ? はい、よくできました。 でもまだ自分の足じゃ立っていられないでしょうから、しばらく私が支えていてあげますね。 ねえ、先輩。 後輩の女の子にグローブをプレゼントしたら、自分がサンドバッグにされちゃうなんて、一生忘れられない思い出になっちゃいましたね。 というか、私にボコられちゃうなんてなんとなくわかってたんじゃないですか? 断ることも出来たのにそうしなかったってことは、私のことが好きだからなんですか? それとも、私にいじめられたい変態さんだからですか? 後で答え、ちゃんと聞かせてもらいますからね。 ぷっ、くくくく……。 こんなにボコボコにされて、無理矢理立たされて、耳元で罵倒されてるのに、さっきより息が荒くなってますよ? ちょっと女の子の柔らかい体に抱きついて、胸に顔を埋(うず)めて、甘い匂いを嗅いじゃうだけで興奮しちゃうんですね。 勝負の最中に気持ちよくなってる先輩には、お仕置きしないといけませんね。 密着したまま腹パンしますから、覚悟してくださいね。 まあ、この状態だとあまり力も入らないですから、それなりに耐えられますよね? じゃあ20発とか行ってみます? いきますよっ。 いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう、じゅう! あはははは!苦しそ~。 ま、これはお仕置きですから苦しくて当然ですよね。 ほら、まだ半分ですよ? あと10発頑張ってください。 じゅういち、じゅうに、じゅうさん、じゅうし、じゅうご、じゅうろく、じゅうしち、じゅうはち、じゅうきゅう、ラストっ! はい、よく頑張りましたね。 えらいですよぉ。 先輩が今どんな顔してるか見せてくださいよ。 ほら、こっち向け。 ぷっ……くく、ごめんなさい、ふふ……。 先輩の顔、面白すぎ……。 口も半開きだし、目も虚ろだし……見てるこっちが恥ずかしいです。 あ、私がそんな顔にさせちゃったんですよね……くくっ、ごめんなさい。 さすがにこれ以上は無理でしょうし……もう終わりにしましょうか。 最後に一発、顔面に右ストレート入れてあげますね。 あははっ、何ですかその顔。 もしかして、フィニッシュブローもなしに終えられると思ってました? うーん、私ももう終わりってことにしてあげたいんですけどぉ……最初にルールの確認、しましたよね。 どちらかが倒れるまで殴り合う、って。 ギブアップなんかは決めてなかったはずですから、認めてあげられないんです。 ふふっ、ごめんなさいね。 じゃあ、先輩の左頬を撃ち抜きますから、殴りやすいようにこっちに向けてください。 ああ、あまり動かない方がいいですよ? 変に抵抗しようとして、鼻を真正面から叩き潰されたりとか、顎を思いっきり揺らされて脳震盪を起こしたりとかしても知りませんからね。 じゃあ十秒数えてあげますから、その間に私のパンチを受ける覚悟、しておいてくださいね。 じゅう、きゅう、はち、なな、ろく、ご、よん、さん、に、いち。 ゼーロっ!! カンカンカーンっ。 私の勝ち~。 先輩、意識ありますか? ふふっ、一応起きてるみたいですね。 先輩はぁ、女の子との本気の殴り合いで、一方的に負けちゃいました。 スポーツが苦手な女の子に、いっぱいパンチ叩き込まれて、ボッコボコにされちゃいました。 ふふっ……恥ずかしいですね。 あ、そういえばぁ……さっきの質問、答えて貰ってなかったですよね。 忘れたフリをするなら、もう一度聞きますね。 先輩、私との勝負を断らなかったのは、私のことが好きだからですか?それとも、私にいじめられたかったからですか? ふふっ、答えによっては先輩の望み……叶うかもしれませんよ? もしかしたら私と同じ気持ちなんじゃないかなって期待してるんですけど……どうなんですか? うふふふ、ちゃんと答えてくれるまで帰してあげませんから……それまでこうして見つめあっていましょうね、せーんぱいっ。