<院長先生> そこまででよろしい! ……後のことは聞いております。 山に放たれた猟犬の匂いに気がついた魔物が、土から出てきて貴女を置いて逃げ去ったと。 そして、貴女が孕まされていて、魔物の番雌に堕ちてーーいえ、今の話からすれば、より悍ましいところまで堕ちていたためにーー こうして、懺悔に至った。 ……よろしいですね。 <シスター アザリア> ……はい、間違いありません。 <院長先生> 貴女は、咎人として、自らの罪を全て告げましたね? ……私の、シスター・アザリア。 <シスター アザリア> はい…… はい……! 全て、全て告げました。 <院長先生> 偽りはありませんね? <シスター アザリア> ありません! まちがいなく! 偽りなく全て告げました!! 本当です! 何もかも、本当に全て告げました!! 私は、私は最低です! でも、でも、お願いします!! ぜんぶ、ぜんぶ言いました!! だか、だから、おねがい、 ゆる、してぇ…… <院長先生> ……許されたい、のですね。 <シスター アザリア> はい……! はい……! どうか、どうか、私、もう、無理かも、しれませんけど、それでも……! 私、人間で、いたいです……! 私、わたし、最低だけど、許して、ゆるしてください……! <院長先生> ……確かに、聞き届けました。 いと慈悲深き母なる神は、禊を終えた者を決して見捨てはしません。 この懺悔を終えた時、貴女は許されるでしょう。 <シスター アザリア> う、うう…… は、はい…… はい…… <院長先生> シスター・アザリア、顔を上げなさい。 さあ、そちらへ立つのです。 ええ、その縄を膝に。 執行人、手伝ってあげてください。 決して解けないように。 ……よろしい。 大丈夫、大丈夫です。 苦しいのは、あとほんの少しです。 自らの罪を認め、告解した貴女ならば、大丈夫です。 あと少し、頑張れますね? <シスター アザリア> はい…… はい、先生…… <院長先生> 今から、貴女を吊るします。 両膝に結んだ縄で逆さ吊りにします。 貴女は、その姿勢で、頭を地に向け、女性器ーー出産口を天に向けて、信徒達の立ち会いのもと、出産を行うのです。 その胎の中に抱えた、大きく育った貴女とナメクジの子供を、誰の目にも確かなように分娩し、その罪の塊を皆に認めていただくのです。 <シスター アザリア> ひうっ、う…… <院長先生> 出産は、辛く苦しい物になるでしょう。 このような巨大な、人間の赤子では決してあり得ない程の、重く、大きな異物を、貴女の小さな身体で産み落とすなど…… ええ、正気ではありません。 ですが、これこそが貴女の罪、悍ましい蛞蝓を夫とし、子宮を捧げて、神と人に背を向けた罪の結晶…… であれば、許しを乞うのです。 敬虔なる信徒達に、神に、その罪を詳らかになさい。 その先で、きっと神は貴女をお許しくださいます……! <シスター アザリア> は、はい…… あ、あの…… その…… <院長先生> なにか、ありますか。 <シスター アザリア> 先生は、許して、くれますか……? <院長先生> ……ええ、勿論。 ……では、執行人。縄を引き上げなさい。 【SE:縄で吊るし上げられる音】 <シスター アザリア> う、うあっ…… あっ、ひあっ! <院長先生> 咎人よ、手は前に。出産口を隠さないように。 その穴は既に魔物に貪られた物、蛞蝓に奉仕するためだけの穴、神と人に仇なすものを産み落とす物。 その罪を隠さず、晒しなさい。 <シスター アザリア> は、はい…… <院長先生> ……吊るし終えましたね。 執行人、縄を固定しなさい。 刑が終わるまで、咎人が地に触れることが決してないように、 <シスター アザリア> あ、くあ…… <院長先生> これより、咎胎(とがばら)の儀を。 咎人が出産を行います。 咎人よ、手を組みなさい。 祈りの形に。 決して、決してその手を崩さぬように。 <シスター アザリア> はい…… <院長先生> これより、聖水を出産口に注ぎます。 貴女の子供は、その罪深さに耐えかねて暴れ、もがき、そしてその姿を暴かれるでしょう。 貴女は、その苦しみを受け止めねばなりません。 貴女の血を分けた、愛する夫との間の子の苦しみを、母として受け止めるのです。 貴女は、母親なのです。 <シスター アザリア> は、い…… <院長先生> それでは、祈りなさい。 メイェン…… 【SE:水をそそぐ音】 <シスター アザリア> あ、ぐうううっ!!! <院長先生> 手を崩さぬよう!! そう、そうです、祈りの形を。 <シスター アザリア> は、はぎっ、ぎいぃ…。 <院長先生> 苦しいですか? そう、苦しみを受け入れるのです。 息を深く、ゆっくりと吸いなさい。 もっと、苦しくなるように。 <シスター アザリア> ふ、ふうっ、う、ぎいいい…… <院長先生> 苦しみは当然です。 貴女は母親なのですから。 悍ましく、ぬめぬめとした、汚らしい蛞蝓の母親なのです。 その子供の苦しみを貴女は背負わねばなりません。 <シスター アザリア> ひいっ、あ“…… <院長先生> 初潮も来たばかりの子宮でありながら、貴女は姦淫に耽りました。 よりにもよって魔物の、低劣で穢らわしい、蛞蝓の雄を相手に、その男性器を受け入れておぞましい淫行に溺れました。 獣すら行わない行為に我を忘れました。 <シスター アザリア> あがっ! ぎっ! お”、ながあ、あ“っ <院長先生> ですが、その罪を認めなさい。 さすれば、地の母は待たれています。 <シスター アザリア> ひーっ、ひーっ…… ふっ、ぎっ、ぎゃあああっ!? 【SE:破水の音】 おぶっ、ぶあっ!? <院長先生> 破水しましたか。 そろそろですね。 詩篇、103編を唱えなさい。 <シスター アザリア> あ”、い…… は、母よ、貴方は、その名を呼ぶっ! ぎいっ!! いぎゃっ! あ”ーーー!! <院長先生> その名を呼ぶ全ての者に寛容を与え、豊かなあわれみを教えてくださいます。 <シスター アザリア> ぎ…… き、北が、南から遠いように はっ、はっ…… 全ての咎を、遠ざけてください…… 不義を隠さず、幾た、あぐうううううっ!?! <院長先生> ……もう、出始めましたね。 では、これよりの朗読を代行いたします。 不義を隠さず、幾たびの許しを得て我が咎を雪ぎます。 私は縄を打たれ、熱い水を被り、罪を懺悔します。 罪を受け入れ、重き咎を支え、命の全てをもって贖います。 その罪を許され、魂を大地に還すことをお許しください。 我が魂に安らぎとあわれみをお恵みください。 メイエン。 <シスター アザリア> あ“あ”ああああっ! ひぎっ、あっ……! いだ、いだいいいいっ!!! ひいっ! や、やべてっ、こないでえっ!! えげっ! がっ…… はーっ、は、ひっ、ひい…… や、だ…… あ、ああああああああああ!!! 【SE:出産の音】 【SE:魔物の産声】 <院長先生> ああ、なんと罪深い…… なんと悍ましく、醜い赤子でしょう…… <シスター アザリア> あ“…… わ、わた、し…… いやぁ…… <院長先生> シスター・アザリア。 貴方の罪は、認められました。 この場にある全ての信徒達が、貴女の出産を見届けました。 貴女とその子供が、臍の緒で繋がっている様を今まさに皆が認めています。 その巨大で悍ましい蛞蝓は、間違いなく貴女自身の息子です。 <シスター アザリア> あ。ああぁぁあ…… <院長先生> 貴女の罪は認められました。 汚らしい魔物のオスを心から愛し受け入れ、悍ましい男根に屈服して淫欲のままに異常な姦淫に耽った番雌、その血と魂を分けて蛞蝓の息子を子宮で育み、産み落としたその罪は、今詳らかにされました。 ……故に、許されるでしょう。 貴女の命は、これより罪を背負います。 そして貴女の魂は雪がれ、清らかなるままに地の御許へと安らぐことでしょう。 <シスター アザリア> あ、う…… <院長先生> 執行人、臍の緒を、彼女の首に巻きなさい。 魔物の赤子をぶら下げるように。 【SE:魔物の赤子の鳴き声】 <シスター アザリア> ひ、ひいっ…… <院長先生> 信徒の皆様、ご安心ください。 執行人は聖別された籠手を着けております。 穢れそのもののような魔物の赤子を触ろうとも、決してその身に汚濁を浴びることはありません。 <シスター アザリア> ひっ、ぐすっ…… うあ…… ああぁん…… うあぁ…… <院長先生> 怖い、ですか。 恐ろしいですか。 <シスター アザリア> ぐっ、はいっ、はいっ…… こ、こわい、です こわい、です……! <院長先生> 大丈夫、大丈夫ですよ…… きっと、許されます。 安心して委ねなさい。 <シスター アザリア> ひっーー <院長先生> 落としなさい 【SE:縄が軋む音】 【SE:魔物の赤子の鳴き声】 <シスター アザリア> ぐげえっ が、ぐがっ が…… <院長先生> 母よ、貴女はその名を呼ぶ全ての者に寛容を与え、豊かなあわれみを教えてくださいます。 <シスター アザリア> かみ、さま…… <院長先生> 北が南から遠いように、全ての咎を遠ざけて下さい。 不義を隠さず、幾たびの許しを得て我が咎を雪ぎます。 私は縄を打たれ、熱い水を被り、罪を懺悔します。 罪を受け入れ、重き咎を支え、命の全てをもって贖います。 その罪を許され、魂を大地に還すことをお許しください。 我が魂に安らぎとあわれみをお恵みください。 メイエン。 <シスター アザリア> ■■、■■