・院長先生 そこまででよろしい! ……後のことは聞いております。 山に放たれた猟犬の匂いに気がついた魔物が、土から出てきて貴女を置いて逃げ去ったと。 そして、貴女が孕まされていて、魔物の番雌に堕ちてーーいえ、今の話からすれば、より悍ましいところまで堕ちていたためにーー こうして、懺悔に至った。 ……よろしいですね。 ・シスター アザリア(一気に狂気をぶちまけて、ちょっと虚脱状態) ……はい、間違いありません。 ・院長先生(すべてを話し終えた教え子を心から労わるように) 貴女は、咎人として、自らの罪を全て告げましたね? ……私の、シスター・アザリア。 ・シスター アザリア(虚脱状態から、院長先生の呼びかけで正気を取り戻す) はい…… はい……! 全て、全て告げました。 ・院長先生(「偽りはありませんね?」と言おうとする) 偽りはありません(「ね?」) ・シスター アザリア(院長先生のセリフに食い気味で)(正気を取り戻したことで、自分の今までの言動が一気に恐ろしくなってきた) ありません! まちがいなく! 偽りなく全て告げました!! 本当です! 何もかも、本当に全て告げました!! 私は、私は最低です! でも、でも、お願いします!! ぜんぶ、ぜんぶ言いました!! だか、だから、おねがい、 ゆる、してぇ……(啜り泣く) ・院長先生(正気を取り戻したシスターを見て少し安心した感じ) ……許されたい、のですね。 ・シスター アザリア(半ば泣きながら) はい……! はい……! どうか、どうか、私、もう、無理かも、しれませんけど、それでも……! 私、人間で、いたいです……! 私、わたし、最低だけど、許して、ゆるしてください……! ・院長先生 ……確かに、聞き届けました。 いと慈悲深き母なる神は、禊を終えた者を決して見捨てはしません。 この懺悔を終えた時、貴女は許されるでしょう。 ・シスター アザリア う、うう…… は、はい…… はい…… ・院長先生(優しさを込めて、励ますように) シスター・アザリア、顔を上げなさい。 さあ、そちらへ立つのです。 ええ、その縄を膝に。 執行人、手伝ってあげてください。 決して解けないように。 ……よろしい。 大丈夫、大丈夫です。 苦しいのは、あとほんの少しです。 自らの罪を認め、告解した貴女ならば、大丈夫です。 あと少し、頑張れますね? ・シスター アザリア はい…… はい、先生…… ・院長先生 今から、貴女を吊るします。 両膝に結んだ縄で逆さ吊りにします。 貴女は、その姿勢で、頭を地に向け、女性器ーー出産口を天に向けて、信徒達の立ち会いのもと、出産を行うのです。 その胎の中に抱えた、大きく育った貴女とナメクジの子供を、誰の目にも確かなように分娩し、その罪の塊を皆に認めていただくのです。 ・シスター アザリア ひうっ、う…… ・院長先生(最後は励ますように) 出産は、辛く苦しい物になるでしょう。 このような巨大な、人間の赤子では決してあり得ない程の、重く、大きな異物を、貴女の小さな身体で産み落とすなど…… ええ、正気ではありません。 ですが、これこそが貴女の罪、悍ましい蛞蝓を夫とし、子宮を捧げて、神と人に背を向けた罪の結晶…… であれば、許しを乞うのです。 敬虔なる信徒達に、神に、その罪を詳らかになさい。 その先で、きっと神は貴女をお許しくださいます……! ・シスター アザリア(こんなことを言ってもいいのかと少し口ごもる) は、はい…… あ、あの…… その…… ・院長先生 なにか、ありますか。 ・シスター アザリア 先生は、許して、くれますか……? ・院長先生(心からの優しさを込めて) ……ええ、勿論。 ……では、執行人。縄を引き上げなさい。 ・シスター アザリア(一気に吊るされて驚き) う、うあっ…… あっ、ひあっ! ・院長先生(儀式の進行のため、淡々と) 咎人よ、手は前に。出産口を隠さないように。 その穴は既に魔物に貪られた物、蛞蝓に奉仕するためだけの穴、神と人に仇なすものを産み落とす物。 その罪を隠さず、晒しなさい。 ・シスター アザリア は、はい…… ・院長先生 ……吊るし終えましたね。 執行人、縄を固定しなさい。 刑が終わるまで、咎人が地に触れることが決してないように、 ・シスター アザリア(逆さづりなので苦しい) あ、くあ…… ・院長先生 これより、咎胎の儀を。(とがばら) 咎人が出産を行います。 咎人よ、手を組みなさい。 祈りの形に。 決して、決してその手を崩さぬように。 ・シスター アザリア はい…… ・院長先生 これより、聖水を出産口に注ぎます。 貴女の子供は、その罪深さに耐えかねて暴れ、もがき、そしてその姿を暴かれるでしょう。 貴女は、その苦しみを受け止めねばなりません。 貴女の血を分けた、愛する夫との間の子の苦しみを、母として受け止めるのです。 貴女は、母親なのです。 ・シスター アザリア は、い…… ・院長先生 それでは、祈りなさい。 メイェン…… (水をそそぐ音) ・シスター アザリア(腹の中で赤子が暴れるため苦しい) あ、ぐうううっ!!! ・院長先生(叱るよりも、励ます感じで) 手を崩さぬよう!! そう、そうです、祈りの形を。 ・シスター アザリア は、はぎっ、ぎいぃ…。 ・院長先生(正しい作法を教えているだけで、悪意はない) 苦しいですか? そう、苦しみを受け入れるのです。 息を深く、ゆっくりと吸いなさい。 もっと、苦しくなるように。 ・シスター アザリア ふ、ふうっ、う、ぎいいい…… ・院長先生(たしなめるように) 苦しみは当然です。 貴女は母親なのですから。 悍ましく、ぬめぬめとした、汚らしい蛞蝓の母親なのです。 その子供の苦しみを貴女は背負わねばなりません。 ・シスター アザリア(正気に戻っているため、蛞蝓の子供を孕んでいることを改めて自覚して恐怖と嫌悪がよみがえっている) ひいっ、あ“…… ・院長先生 初潮も来たばかりの子宮でありながら、貴女は姦淫に耽りました。 よりにもよって魔物の、低劣で穢らわしい、蛞蝓の雄を相手に、その男性器を受け入れておぞましい淫行に溺れました。 獣すら行わない行為に我を忘れました。 ・シスター アザリア あがっ! ぎっ! お”、ながあ、あ“っ ・院長先生 ですが、その罪を認めなさい。 さすれば、地の母は待たれています。 ・シスター アザリア ひーっ、ひーっ…… ふっ、ぎっ、ぎゃあああっ!?(破水) おぶっ、ぶあっ!?(口に羊水が入る) ・院長先生 破水しましたか。 そろそろですね。 詩篇、103編を唱えなさい。 ・シスター アザリア(許してもらうために必死で頑張るけれども耐えきれない) あ”、い…… は、母よ、貴方は、その名を呼ぶっ! ぎいっ!! いぎゃっ! あ”ーーー!! ・院長先生(唱えきれない分を代わりに唱えてあげている)(がんばれと思っている) その名を呼ぶ全ての者に寛容を与え、豊かなあわれみを教えてくださいます。 ・シスター アザリア ぎ…… き、北が、南から遠いように はっ、はっ…… 全ての咎を、遠ざけてください…… 不義を隠さず、幾た、あぐうううううっ!?! ・院長先生 ……もう、出始めましたね。 (ここから悲鳴をバックに)(初めは朗読の声の方が大きめ、段々悲鳴が大きくなる)(悲鳴が始まるタイミングや間の息継ぎで調整?) ・院長先生(下記の悲鳴と重ねて) では、これよりの朗読を代行いたします。 不義を隠さず、幾たびの許しを得て我が咎を雪ぎます。 私は縄を打たれ、熱い水を被り、罪を懺悔します。 罪を受け入れ、重き咎を支え、命の全てをもって贖います。 その罪を許され、魂を大地に還すことをお許しください。 我が魂に安らぎとあわれみをお恵みください。 メイエン。 ・シスター アザリア(上記の朗読の声と重ねて) あ“あ”ああああっ! ひぎっ、あっ……! いだ、いだいいいいっ!!! ひいっ! や、やべてっ、こないでえっ!! えげっ! がっ…… はーっ、は、ひっ、ひい…… や、だ…… あ、ああああああああああ!!! (破裂するような音と、魔物の産声) ・院長先生(ちょっと恐怖した感じで) ああ、なんと罪深い…… なんと悍ましく、醜い赤子でしょう…… ・シスター アザリア あ“…… わ、わた、し…… いやぁ…… ・院長先生(いたわりを込めて) シスター・アザリア。 貴方の罪は、認められました。 この場にある全ての信徒達が、貴女の出産を見届けました。 貴女とその子供が、臍の緒で繋がっている様を今まさに皆が認めています。 その巨大で悍ましい蛞蝓は、間違いなく貴女自身の息子です。 ・シスター アザリア(絶望) あ。ああぁぁあ…… ・院長先生(穏やかに、優しく) 貴女の罪は認められました。 汚らしい魔物のオスを心から愛し受け入れ、悍ましい男根に屈服して淫欲のままに異常な姦淫に耽った番雌、その血と魂を分けて蛞蝓の息子を子宮で育み、産み落としたその罪は、今詳らかにされました。 ……故に、許されるでしょう。 貴女の命は、これより罪を背負います。 そして貴女の魂は雪がれ、清らかなるままに地の御許へと安らぐことでしょう。 ・シスター アザリア(虚脱) あ、う…… ・院長先生 執行人、臍の緒を、彼女の首に巻きなさい。 魔物の赤子をぶら下げるように。 ・シスター アザリア(首にへその緒をまかれて、不快感と、処刑が迫った恐怖で声が出る) ひ、ひいっ…… ・院長先生(信徒の人を安心させるようによびかけ) 信徒の皆様、ご安心ください。 執行人は聖別された籠手を着けております。 穢れそのもののような魔物の赤子を触ろうとも、決してその身に汚濁を浴びることはありません。 ・シスター アザリア(死の恐怖を間近にして、こらえられず泣き始める)(幼い感じで) ひっ、ぐすっ…… うあ…… ああぁん…… うあぁ…… ・院長先生(優しく言い聞かせる) 怖い、ですか。 恐ろしいですか。 ・シスター アザリア(ほんの少し、助けてくれるかも、許してくれるかもと期待がある) ぐっ、はいっ、はいっ…… こ、こわい、です こわい、です……! ・院長先生(心から優しく、「神の許し」を得るためにと本心からの優しさで) 大丈夫、大丈夫ですよ…… (一拍おく) きっと、許されます。 安心して委ねなさい。 ・シスター アザリア(認識の違いを理解して、絶望と恐怖) ひっーー ・院長先生(普通の声で) 落としなさい ・シスター アザリア ぐげえっ が、ぐがっ が…… ・院長先生(下記のセリフ二つと重ねて)(優し気に) 母よ、貴女はその名を呼ぶ全ての者に寛容を与え、豊かなあわれみを教えてくださいます。 北が南から遠いように、全ての咎を遠ざけて下さい。 不義を隠さず、幾たびの許しを得て我が咎を雪ぎます。 私は縄を打たれ、熱い水を被り、罪を懺悔します。 罪を受け入れ、重き咎を支え、命の全てをもって贖います。 その罪を許され、魂を大地に還すことをお許しください。 我が魂に安らぎとあわれみをお恵みください。 メイエン。 ・シスター アザリア(上記セリフ一行目の「母よ〜あわれみを」のあたりと重ねて)(大きめの音ではっきり聞こえるように) かみ、さま…… ・シスター アザリア(上記セリフの「我が魂に〜」あたりと重ねて)(ちょっと小さめの音で、かき消されない程度に)(さっきの「かみさま」と逆にこっちが聖句のバックぐらいの感じで) だす、げっ (息絶える)