ええ……そうなの。そうなのよ……。  貴方、何かご存じないかしら……。  そう……そうよね……。  貴方もあちらの方も、とても沢山、探して下さったものね……。  ……でも。  ど。どうしましょう……?  ……お財布を無くしてしまったの。  御免なさい……。助けて下さる?  あぁぁ……。  やっと。やっと、辿り着けた……!  ええ。ええ……!  ありがとう。  貴方が来て下さらなかったら、どうなっていた事か。  本当にありがとう……!  うん。貴方がいるものね。もう怖くないわ。  ありがとう……。  ……あの。  でも……。  貴方は何故、駅にいらっしゃったの?  試験の事は……如何なさったの?  ……そうよね。  私に何か、伝えたい事や……聞きたい事があっていらしたのよね。  承知したわ。貴方には聞く権利があります。  どのような事もお聞きするし、どのようなご質問にもお答えするわ。  ……そちらへおかけになって。  ……うん。  うん。貴方ならそう仰ると思ってた。  謝る必要なんてないのよ。  貴方と、クロエさん。それから倉庫の方は。  皆、私の勝手な行動に付き合わされただけなのですから。  どうか、気に病まないで頂戴ね。  ……ええ。  私がなぜこうしたかについて、お聞きしたいのよね。  どうぞ。どのような事でもお答えします。  ……。  あぁ……もう、そんな事までご存知なのね。  クロエさんから聞いたの?  なるほど……過去の私の情報と、今回の私の行動から……お二人でこの答えに行きついたのね。  ええ、仰る通りよ。  これが初めてではないの。  私は過去に、これを何度も繰り返して……今に至る。  ふふ。  『なぜ?』というお顔ね。  うん……貴方には理解しがたい事なのだと思う。  そうする理由は、いつも同じよ。  傍にいて下さる方に、私なりのお礼がしたかったの。  既にご存じの通り。  私は、人間の身体だけではなく、切り分けた別の自分を持つ、一般的とは言えない魔法を使う、魔女です。  行使する術も……とても『ふつう』とは言えない。  だから、誰も近寄らないのが当たり前。  一人でいるのが当たり前で、それも仕方のない事だと思って生きてきたわ。  ……でも、そう思いながら、本当はずっと、誰かと仲良くなりたくて。  誰かが声をかけてくれると。  『弟子になりたい』『力を借りたい』と言ってくれると。  凄く嬉しくて。  その人の為に、自分ができる全ての事をしようとして……でも……いつも失敗した。  ええ。その通りよ。  これまで『弟子や助手になりたい』と仰り、家にいらした方がいても。  誰も長く留まられなかったのは、それが理由。  私の愛情表現が、いつも間違っていたから。  私が誰かの為に何かをしようとすると、最後には、皆居なくなってしまうの。  これも、ご存知の事だとは思うけれど。  私の所へ来るのは大抵、高い志をお持ちだけれど、思うような成果を出せずにいたり。  アカデミーや国研にはなかなか認められなかったりして、苦しい生活をされている方がほとんどなの。  ……私は、そんな方々の手助けがしたかった。  わざわざ『変わり者』と。『付き合いにくい』と評される私の所へいらして下さった方に、何らかのお礼がしたかった。  そうよ。  私は私の弟子さんや、助手さんになって下さった方の暮らしを楽にしたり、今後の研究の足掛かりにしたりして頂く為に、いつしか、自分の研究の権利をお譲りするようになった。      色々な方がいらっしゃったわ。  笑顔で受け取って下さったけれど、次の日には姿を消された方。  『ごめんなさい』と泣きながら、国研に提出して……成功を収めた方。  凄く怒った方もいたわ。  『なぜ、こんな事を』と言って。  ……突き返されて、そのまま去られた。  今思うとその人、少し貴方に似ていたような気がするわ。  とても真面目で、優しくて。  でも、そのせいで沢山の物を失ってしまった方だった。  でも、その時うまくいかなかったのは、私が、その方の事をちゃんと理解できていなかったから。  その方が本当に欲しい物を、差し上げられなかったからだろうと思った。  だから私は、そんな自分を恥じて。  今まで悲しませてしまった方々に、とても申し訳なく思って。  ……そして、次こそは失敗するまいと思った。  もし次に、私を選んで下さる方が現れたら。  その方がもし、とても辛い思いをしていたなら。  今度こそ絶対に、私が助けると。  ……私には、その力があるから。  これが、貴方に薬と推薦状をお渡しした経緯です。  貴方は私にとって……本当にお姫様みたいな人だった。  出会ってすぐの私の。決して一般的とは言えない治療を、心から了承してくれた。  私が間違いを犯しても、すぐに笑って許してくれた。  人間ではない方の私の事まで、受け入れてくれた……。  貴方との日々は、どれも、とても幸せで。  貴方が、心と身体の全てを使って、私を受け入れてくれてる事が伝わってきた。  ……でも。貴方と過ごしながら。  私はこうも思っていたの。  『そんな貴方に、私は何をさせているのだろう』って……。  貴方は未来ある、とても有望な方。  なのに私の指示と言えば、簡単なお手伝いばかり。  貴方の本来の研究とは程遠い、基礎的な作業ばかり。  貴方の事が、好きで。好きで。  誰よりも大切にしたいのに……一緒にいれば、ただ、欲望をぶつけるばかり。  日毎、貴方に申し訳なく思う気持ちが強まっていった。  ……そんな時に、魔法薬学試験の事を思い出したの。  この試験の肝は、推薦者が必要な事。  貴方がその点で躓いて、また、課題薬を作る時間のなさもあって、受験を諦めている事はわかっていた。  ……じゃあ、私がその両方を解決すればいい。  貴方なら受験資格さえ得れば、きっと合格できる。  だったら私が推薦人になって。間に合わなかった課題薬は代わりに作る。  そうすれば貴方は、未来への足がかりを得られる……。  本気で、そう思ったの。  私はやっぱり悪い魔女ね。  あんなに一緒にいたのに、貴方の気持ちをちっとも考えられなかった。  また、過去と同じ失敗を繰り返したの。  嫌われて当然だわ。  ……私からの申し開きは以上です。  私のやり方は間違っていた。  貴方を傷つけて、他の方々まで巻き込んで。  貴方に、そんな顔をさせる程の。  誰も幸せにならない事をしようとした。  本当に、申し訳ない事をしたと思っている。  ……でも……。  貴方には諦めて欲しくない。  『今の暮らしで十分』なんて。  『わたしはもう終わった人』だなんて仰らないで。  貴方という素晴らしい人の事を、そのように仰らないで……!  ……っ。  うっ。うっ。うぅっ。  ううぅっ……。  ……はぁ。  三日前。これをちゃんと言えたらよかった。  そうすれば、このような事にはならなかったのにね……。  え?  ……なぜ、貴方が謝るの?  貴方が申し訳なく思う事は何一つないと、お伝えしたはずよ?  ……!  ……ううん。貴方は悪くないわ。  あの時、私が急にあんな事をお尋ねしたから。  貴方が咄嗟に『話したくない』と仰って。  お話を切り上げようとしたのだって、何もおかしな事ではないのよ。  ……っ。  ……っ。  ううぅっ……。    ……うん。    うん……。  うん……!    勿論よ……。  私は最初から、一つだって怒っていない。  貴方は何も悪い事をしていないのですから。  沢山勝手な事をして御免なさい。  貴方を悲しませて、御免なさい。  私も、貴方さえ許して下さるのなら、仲直りがしたい。  いつもの私達に戻りましょう。  ……キス、してもいい……?  ふふ……。  そうね。  初めての時は、もう、治療の事で頭が一杯で。  キスしていいか、お尋ねするのも忘れていたわね。  ……だから、今日はちゃんと聞くわ。  キスしてもいい?  ふふ……❤ 可愛い方。  んっ……。  ちゅ❤      大好きよ……。  私も、貴方を愛してる。  ちゅ❤