女性の案内に従い、あなたが郵便受けを開けるとレコーダーが入っている。 振り返るとさきほどの女性はもういない。 レコーダーの最新の日付から再生すると、先程までの女性との会話が再生される。 「過去の日付からですよ!今すぐにです!」 その言葉の意味に気づき、あなたは1年前の2022年10月1日分から データを再生し始めます。 ●神無月 四季(かんなづき しき)  神無月とは10月の旧暦です。  10月は全国の八百万の神が出雲大社へ出かけるため、神無月という説があります。  四季にわたる物語なので、四季ちゃんです。 ●日付の意味  【10月1日】  企業では下期が多いと思います。物事のスタートにふさわしい日付です。  【12月20日】  「果ての二十日」と呼ばれ忌み日とされてきました。四季が堕ちていく予兆を感じます。  【3月22日】  「世間は野球一色です」日本時間でWBCの決勝戦がありました。世間の浮かれ具合と四季の孤独の対比です。  【6月10日】  夢の日。時の記念日。四季ちゃんにまつわるテーマの記念日です。  【7月14日】  「私はどう死ぬのか」ジ◯リ映画最新作の公開日でした。 ●描写 ・実際にはほぼ毎日音声日記を吹き込んでいます。本作は核となる日付を抽出。 ・四季は真面目な性格なので西暦から毎回きちんと読みますが、機嫌が悪いとサボります。 ・怒った音声監督の真似が上手いのは、日記の前だと素をさらけ出しやすく、感情が込もっていたからで、この時点ではまだ声優としてのスキルは育っていません。 ・多目的トイレで収録したのは、そこが舞台の作品だったから。納期間近で他に良い場所を探す余裕もなかったので、「環境効果音も込み」での納品と誤魔化した。 ・トイレのトラックでは四季はずっと葛藤しており、同人世界を肯定する声と否定する声を交互に繰り返しています。 ・黒い傘→色に理由はありませんが、安物(ビニール傘)ではない優しさ。 ・不動産屋のおじさんがちょっと抜けてる→主人公に郵便受けの説明を教え忘れる。 ・傘を貸しただけのあなたにガチ恋するなんてちょろいのでは?→「すべての日付を聴いてくれたあなた」への恩返し。 ・男と直接話している時の声質が違う気がする?→意中の人を目の前にして「落ち着いた私の演技」を彼女はできるようになっていました。声優として成長した証です。 【あとがき】 2023年9月23日。青春堕ちです。 私はネットで読み漁ってきた「日記」がテーマの物語が好きでした。 秀逸な作品では、最初は「赤の他人の第三者」として読んでいたはずなのに、 いつの間にか日記の人物と自分がとてつもなく近い距離に引き寄せられています。 神無月四季という、100%フィクションとは言い切れない存在を通して、 この同人世界を陰まで愛するきっかけになれば幸いです。 追伸: サークル創立から1年が経ちました。 同時期にはじめたサークルを勝手に「同期」と呼んで チェックしていましたが、ばったばったと倒れていきました。 ツイッターのアカウントを新設したサークル主は 楽しげに活動記録や告知ツイートをしていたのに、 処女作を出してからぱったりと音沙汰がなくなるのです。 漏れなくレッドオーシャンの現実に溺れていきました。 実は私も一度は盛大にぶっ沈んでいたのですが、 蜘蛛の糸を掴んでなんとか今作まで漕ぎ着けました。 出したい作品がいっぱいあります。 「これが本当の自分の人生だったんじゃないか」 聴き終えた後に立ち上がれなくなるような、 でもそこには虚しさではなくカタルシスが残るような、 そんな傑作をいつか完成させたいです。 応援していただけますと幸いです。 青春堕ち