//02 それにしても…本当に綺麗な診療室ですね。 待合室も…骨董品だらけで…。さっき夫とも話してたんですよ。 タイジール先生くらい素晴らしい方だと絵画とかツボとか…買えるんですね。 凄い…私全然分からないんですけど、見るのは大好きで。 あ…いいんですか。じゃあこのツボ…少し触らせて…。わ…すっごい。 思ったよりも…重みがあるんですね…。ずっしりとしてて…。ん。 貴方も持ってるみる? んしょ…気をつけてね。 ね、すごいわね。 私達の生涯年収よりも価値が…? えっ…そ…そんなに…そんなものが腕の中に収まるって…不思議な気分。 ほら…傷の一つでも付けたら大変。そろそろ先生にお返しになって、貴方。 ひゃ…っ! きゃっ――!! …………っ う、うん。私は大丈夫。 貴方も大丈夫? 先生もお怪我ないですか? よかった…。 先生の手に確実に渡したように見えたのですが…。 す…すみません。そうですよね…。 ごめんなさい…! 凄く価値のある高いツボって仰ってましたよね…。 弁償…はい…。何とかお金を工面して…必ずお返しします。 あの…あの…私達貯金も殆ど無くて…この診療所に受診するのもやっとな程で…。 はい…必ず…必ず弁償をさせて頂きますので… 本当に申し訳ございませんでした…。 貴方出来たわよ。夕ご飯。 今日はマンダリナダックの野草煮込みよ。 ただでさえお金がないんだから…今後はもっと質素なメニューにしないとね。 まだ落ち込んでいるの? あのツボを割ってしまったのは…もうしょうがないわ…。 あの時は私達の人生まで壊れてしまうんじゃないかって怖かったけど… タイジール先生がいい人で良かったわ。不幸中の幸い。 今ある私達夫婦の貯金を全部渡して… 後は私が先生の診療所で1年間働けばそれで良いって言ってくれたわ。 大切に育てたお野菜を…何度も城下町まで運んで頑張って売って出来た貯金。 私達にとって、とても少ない額とは言えないけれど… あのツボの価値に比べれば、端金(はしたがね)に過ぎないのよ、きっと。 少し運が悪かっただけ。タイジール先生の所でよかったと思わないとね。 一生掛けて払わなくちゃいけなかったかもしれないんだから。 ええ、私は明日から先生の所で働くわ。 良いのよ。貴方はこの農園を守らなくちゃいけないんだから。 ツボを割ったのは貴方だけじゃなくて、私にも原因はあるわ。 だからお互い様。そうでしょ? 私が働く事に罪悪感なんか感じないで? お願い。 しばらく貴方と農作業ができなくなって、寂しい思いをさせてしまう方が申し訳ないわ。 だけど、それも1年間だけ。 農作業を貴方一人に任せるのも忍びないけれど、来年はまた一緒に美味しいお野菜を作りましょう。ね。 夜にはちゃんと帰ってくるから安心して。 それに悪い事だけじゃないわ。 診療所で働いてる間、不妊診療も一緒にしてくれるって。 そのお金もタダでいいって先生仰ってたわ。 一石二鳥でしょう さぁ、ご飯冷める前に頂きましょう♪