01_『プロローグ「姫宮沙稀の独立宣言」』 -------------------- こんにちは。 久しぶりね、おじさん。 急に押しかけてきて、びっくりしたでしょ。 うん、びっくりしてる、って顔してる。 昔と違って、ほとんど会うこともないのに、急にどうしたんだ? って言いたげな顔してる。 実はね…… 私、姫宮沙稀は、本日をもって独立することを宣言します! その手始めに、家を出て、おじさんのところへやって来た、というわけ。 まあ、独立と言っても、いきなり女子高生が一人で生きていけるわけないから とりあえずおじさんに協力してもらおう、っていうわけ。 状況、理解できた? なんで独立したいのか、って? そ、それはもちろん、母親との意見の不一致よ。 け、ケンカイのソーイ、ってやつね。 はあ⁉ ただの親子喧嘩で家出しただけじゃないか、ってぇ⁉ そ、そんな風に言い換えないでよ。 まるで、私がちっちゃな子どもみたいじゃない。 でも、まあ、おじさんが、そう思うのなら、それでもいいわよ。 そうよ、お母さんと喧嘩して、家出してきたの。 なにか悪い? 言っておくけど、私、もう十六歳なんだからね。 おじさんと遊んでいた、あのちっちゃい頃の私とは違うの。 大人になったんだからね、大人に。 そこのところ、ちゃんと理解しておいてね。 はあ……それに比べて、なんなの、おじさんは。 ちっちゃい頃に遊んでくれたおじさんは、もっと格好よ―― ごほん、まともだったと思うんだけど、 随分とヨレヨレになってるじゃない。 ちゃんとご飯は食べてるの? 仕事はしっかりできてるの? だいたい、彼女の一人でもいないわけ? いたら、もっと、ピシッとしているでしょ。 ふうん……そうなんだ。 ずっと独り身、ね……ふうん、へええ。 しょうがないなあ。 こうなったら、ますます、私がいてあげたほうが良さそうね。 私は家出したい、おじさんはまともな生活を送れる。 ウインウインじゃない。 さ、玄関で話しているのもなんだから、上がらせてもらうわ。 ふんふーん♪ お邪魔しまーす。 ちょっと荷物をリビングに置かせてもらうね。 お部屋はあとで相談するとして…… って、なによ、これ⁉ どうかした? って顔しないでよ! ゴミ袋は外に出してないし、食器だってシンクに突っ込んだまま! もうちょっと部屋を綺麗に出来ないの⁉ まったくもう、くたびれているのにもほどがあるわよ。 おじさんってば、しょうがないなあ…… 誰かが世話してあげないと、まともに生活できないの? 仕方ないから、私がしばらくお世話してあげる。 いいでしょ? 異論も反論も許さないから。 ここに住ませてもらうわよ。 しばらくの間、よろしくね!