最深部の玉座に居たのは予想していた魔王ではなかった。  長い髪、つややかな唇、扇情的な体型……眼の前にいる女性型モンスターは魔族の中でも下級と言われているサキュバスに違いはないのだが、妙な威圧感がある。 (ただのサキュバスじゃなさそうだ。  まさか女王級か……気を引き締めなきゃならんな)  危険な相手だと咄嗟に判断する。  下級と呼ばれているやつらが意味もなくこんな深層にいるはずがない。  ここにいること自体に特別な意味を感じる。 「問おう……魔王はどうした?」 「あら、私じゃ不満みたいな言い方ね。ちょっと心外」  ぷくっと頬をふくらませるクイーンに剣先を向ける。  可愛らしい仕草だが邪悪さが際立つ。 「退け。魔物とは言え余計な命までは取るつもりはない。  その代わり、おとなしくヤツの居場所を教えることだ」 「余計な命ですって?  女王である私に向かってその言い方は気に入らないわ」 (やはりサキュバスクイーンか)  そしてやつはわずかに不愉快そうに顔を歪め、魔王の居場所を語る代わりに、魔界から召喚した炎を俺たち全員に浴びせてきた 「はあああっ!」  迫りくる火炎を切り裂き仲間を守る。  残念ながら交渉決裂だ。  おそらくこいつは魔王が召喚したであろうサキュバスクイーン。  この上なく淫らな存在が俺たちを出迎えたのだ。 「ねえ生意気な勇者クン?  私を倒すことができたらさっきの質問に答えてあげるわ」 「ほざけ!」  連発される魔界の炎。  俺たちは散開し、必死で応戦する。  妖艶な外見に似合わぬ強力な魔法の数々が俺たちの手数を圧倒する。  サキュバスなのに、魔王の力を吸収したような強さを見せつけている。 (案外そうかもしれない。だが今は集中だ!)  魔王の力を吸収したサキュバス……厄介すぎる。  できれば想像したくない。  しかし俺たちは怯まず挑み続ける。  魔王による世界の歪みをここで打ち消すために!  それから二時間……  数え切れないほどの駆け引きの末、ついに俺たちは成し遂げた。  握りしめた勇者の剣が淡い輝きを放ち、サキュバスクイーンを二つに切り分けた。  この一太刀はここにいる仲間の思いを一つに合わせ、全力を込めた一撃だった。  強力な防御結界を打ち破るために攻撃魔法を重ねがけしてくれた魔法使い・マギ。  俺への物理攻撃をすべて大きな体で防いでくれる戦士・タンク。  邪悪なオーラに対抗するために祝福を与え続ける僧侶・ディアーナ  俺一人では立ち向かえない相手でも、みんながいれば乗り越えられるんだ。 「やるじゃない……  でもね、ただで消えてあげるつもりはないわ」  もはや虫の息のサキュバスクイーンがあらぬ方向へ紫色の光弾を放つ。 ドウッ!  邪悪なオーラを纏ったそれは俺の右側を通過した。 パリンッ……  嫌な予感がする。  誰もいないはずだと思いながらも、念の為振り返ってみる。  俺は自分の目を疑った。  柱にかかっていた魔法の鏡が光弾を反射していたのだ。  さらにまずいことに、その凶弾は仲間である僧侶・ディアーナの背中に深々と突き刺さっていたのだ。 「が、ふぅっ……ホワイトウォールが、そん、な……」  俺の左斜め後方で崩れ落ちて膝をつくディアーナ。  ホワイトウォールというのは僧侶が使える最上級の全方位防御魔法。  隙などないはず魔法壁をあっさり貫通したのはサキュバスクイーンの底力だった。  漆黒の闇を凝縮したような一撃が僧侶であるディアーナの白魔法と、祝福された防具をあっさり打ち破り、強烈なダメージを与えていた。  そしてそれが致命傷であることは明白だった。 「本当は勇者クンに当てたかったのに残念。  でもお仲間が倒れたなら、まあいいわ」 「な、な……ディアーナ!」 「自分の背中が鏡に写っていることに気がつかないなんて  隙だらけもいいところね。死んで当然よ」 「貴様あああぁぁ!」 「ほらあ、早く治してあげなさいな。  私は貴方の邪魔はしないわ」 「嘘だ。俺が目を離した瞬間、お前はここから逃げるだろう」  否定も肯定もせず、サキュバスクイーンは満足そうに笑うだけだった。  一見すると瀕死だ。  放っておいても消滅するか?  いや、もうひと押し足りない気がする。  だがここでやつを倒すことに全力を注げばディアーナは死ぬ。  どうする? どうすればいい!? 「悩ましいわよねぇ。  でもその子より先に私が死ぬかもしれないわ。  いつでも倒せる敵なんかほっときなさいよ。  お仲間の命のほうが大切ではなくって?」 「~~~~~っ!!」  悔しいがこれもまた正論だ。  王様からの依頼を達成しても大切な仲間を失っては意味がない。 (まずいぞ、なんてことだ!)  焦る。考えがまとまらない。  最後の最後に見せた敵の予想外の反撃に舌打ちする。  時間がない。どうすればいい……  するとディアーナの震える手が俺の体に触れた。 「オ、オリエン……  私を気にせず目の前の悪を倒してください、お願い……」  今にも消えそうな声で彼女が言う。  決死の覚悟でバトンを渡されたのだ。  敵の前でなければ俺は泣き崩れていたかもしれない。 「オリエン! 彼女の命は私がつないでみせる。だから今は集中して」  そんな俺の背中にそっとふれたのは魔法使いのマギだった。 「マギのいう通りだ。  ここまで来た意味を考えろ! 行け!」  魔法使いと戦士の二人の言葉を背に受けて俺は決意した。 「わかった。これで終わりにしよう!」  先程よりも強い勇気の光を剣にまとわせ、俺はサキュバスクイーンを睨む。  咄嗟に飛び退くクイーン。  傷はいくらか癒えているようだが動きが遅い。  素早く追いつき必殺の間合いへと入った。  ここで確実に討つ。  勇者の剣がまばゆく光る。 ザンッ!  瞬間的に何度も切り刻まれた敵の体が聖なる輝きの中へと消えてゆく。 「さすがは勇者……ね。  冷静で冷酷、それに無残な最期を与えてくれるなんて素敵」 「こいつ、まだ口を動かせるとは……」  剣を上段に構え、さらにもう一度深く斬りつける。 「あぁ、なんて心地よい痛み……  貴方って悪魔の王みたいで最高だわ」  難敵が口にした最期の言葉がそれだった。  俺はやつが消滅したことを確認してからすぐに傷ついた仲間へと駆け寄る。 「オリエン、ありがとう……」 「それは俺のセリフだよディアーナ。さあ今すぐ治してやる!」  治療してくれていたマギの隣でディアーナの手を取る。  震える指先を掴み、励ましながら治癒魔法をかけ続ける。  だが傷が塞がらない!  大穴が空いた彼女の細い体から生命力が抜け落ちていく。 「私はもういいの……オリエン、最期までありがとう」 「馬鹿なことを言うな!  俺が今直してやる、あきらめるな! 今……くっ!!」  予想外にサキュバスクイーンの呪いは強力だった。  神の祝福を受けているディアーナにとって、闇の魔力は猛毒に等しい。  傷口が塞がる様子はなく、出血だけが増えていく。  さらに黒と紫が混じったような不気味なオーラがディアーナを包み込んでゆく。 (くそっ、なにが勇者だ!  俺ではどうすることもできないじゃないか……もっと力があったなら!)  無駄だとわかりながら治癒魔法をかけ続ける。  少しでも痛みを緩和してやりたかった。  青ざめた顔でディアーナが口を動かす。 「オリエン……隠していたけど、  ずっと、あなたが好きでした……  もうさいごだから、言ってもいい、よね……?」 「ディアーナああああああああああぁぁぁ!!」  ニコッと微笑んだままディアーナは俺の腕の中で目を閉じた。  あまりの悲しみに俺は泣きながら彼女を抱きしめる。  マギとタンクは何も言わずにその様子を見つめていた。  沈黙が支配した。  だがその数十秒後。聖なる光がディアーナの体を包み込んだ。  そして彼女は何事もなかったかのように目を開けて、周囲を見回した。 「ただいま、オリエン。  タンク、マギ、ありがとう。私戻ってこれました」 「ディアーナ……?」  それは彼女の命が尽きた時に発動する究極の回復魔法・反魂術だった。  一度死ぬことでもう一度新たな生を授かる僧侶の秘法。  ディアーナが微笑みながらそう教えてくれたのだった。 ◆  道中色々なことがあったものの、大切な仲間が生き返ったことに喜び、俺たちは笑顔で凱旋した。  王様に報告した後で褒美を与えられ、それぞれが休息を取ることになった。  マギは故郷へ行くといい、タンクは海へ向かうといった。  ディアーナと俺は王都に残ることにした。  実は彼女の傷が完治していないのだ。 「ディアーナ、具合はどうだい」 「はい、普通に生活する分には何も問題ないのですが……  お腹の傷口がまだふさがりません……」  寂しそうにそう言ってから、ディアーナはうつむき、上着の裾をチラリとめくってみせた。 「うわああっ! 急に見せちゃ駄目だろ」 「あっ、すみません。でもそんなに嫌がらなくてもいいのに」 (べつに嫌がってるわけじゃない……恥ずかしいんだ)  ディアーナは時々こんなふうに俺を困らせる。  わざとやっているのかどうかは不明だが。  シャツの裾から見えたのは白い肌と、サキュバスクイーンに受けた傷だった。  しかしそれは傷というよりも模様に見える。  痛みを感じさせるような肉体の損傷とは思えなかった。 「まだ痛むのか?」 「いいえ……ちょっと触れてみてください」 「うん」  そっと指先でなぞった瞬間、 「あはぁんっ♪」 「!?」  それは明らかに愉悦の声と表情だった。  ディアーナは目を細め、体を小さくブルっと震わせた。 「ディアーナ、あのさ、そんな声を出されると、俺は困ってしまうのだが」 「す、すみません!  やだ私、はしたない声を……」  ディアーナは少し笑ってから、また先程のように頬を赤く染め始める。 「はわわ、えっと、オリエン、あのね、あ、あの……」 「今度はなんだい? そんなに慌てて」  不思議なことだが、いつのも彼女らしくないとその時の俺は思わなかった。  きっとまだ傷が癒えていないのだろうと哀れに思ったほどだ。  なんとかしてやりたい。  俺のせいでキズモノになってしまった彼女を助けたい。 「遠慮するなよ。俺ができることなら何でもする」 「そうですか。では……」  ディアーナの口から出たのは、俺の想像を遥かに超えた願いだった。 「はしたないついでに、勇者様……お情けをいただけませんか?」 「!?」 「あの日からずっと、体の奥が熱くて……火照ったままなの」  そう言いながら、彼女は着ている服を全て脱ぎ去ろうとした。  俺が見ている前で白い肌の面積が徐々に増えていく。 (なんだよこれ、ディアーナの行為は止めなければならない……)  でも彼女の姿があまりにも色っぽくて、俺は言葉をなくして見つめ続けていた。  まるで魅了されているかのように。 「いけないことであるのは自分でもわかっております。  しかし、淫魔に体と心を汚されたせいかもしれません。  体の芯がうずいて仕方ないのです。  鎮めていただきたいのです……お慕いする貴方に」  生まれたままの姿になったディアーナが俺に身を寄せてきた。  柔らかな感触と温かい肌、それに彼女の甘い声。 「好きよ、オリエン……」  駄目だ、こんなに可愛い彼女を拒むなんてできない。  勇者としての責務を果たした後なのだ。  恋人同士に戻っても咎められはしないだろう。  むしろ彼女が望むなら俺は与えてやりたい。  だが何故か嫌な予感がする。  ずっと誰かに見られている気がするのだ。  素早く周囲を警戒すると、彼女はこういった。 「恥ずかしいから、あかりを消して……」 「あ、ああ」  俺はその言葉にしたがうことにした。  窓のカーテンを閉め、入口の鍵をかけて灯りを落とす。  ついでに感知魔法で部屋の中が盗撮されていないかも確かめた。  これで誰にも見られないはずだ。  少し気が緩んだのは事実。 「ディアーナ。でもどうして急に……?」 「このままでは自分の心が抑えられず、  誰かれかまわず襲ってしまいそうで……  自分が怖いのです。だからオリエン、私を抱いて」  愛しさに任せて目の前の大切な女性を抱きしめる。  甘い吐息を漏らしたディアーナに口づける。  密かの彼女の傷口がピンク色に光ったのだが、俺はなぜか気にならなかった。  ピンク色の光は淡く、そして淫らに感じた。  でもそれらに注意を払うことはなかった。  警戒すべきことなのに意識の外へ追いやられていたのだ。 ◆  いつしか俺たちの周囲がほんのりと明るさを増していた。  しかも頭の中がぼんやりする。  思考がまとまらず、なにか不自然だ。 ちゅ……  かすかに浮かび上がった疑問は優しいキスでかき消される。  ディアーナの柔らかい体に溺れてしまいそうだ。  ただ静かすぎる。  静寂の中で二人きりというのはわかるが、ここまで無音なのは異常だ。  違和感を訴えると、これは防音結界であるとディアーナに言われた。  妙に納得する。彼女の声がいつもより心地よい……  防音ではなく、魅了のために空間が封鎖されていたことに俺は気付けずにいた。 「オリエン、もう一度口づけを……んぅ……チュッ」  このキスを受けるたびに心が少しだるくなっていく。  だが心地よさがそれを惑わせる。  彼女は恥ずかしそうに顔を寄せ、控えめに口づけをねだる。  顔を寄せれば自分からついばんでくる。  かわいい。  ああ、まただ……果実のような甘みを持った唇が俺の呼吸と思考能力を奪う。  頭の中にまた一枚、薄いベールをかけられたように思考が鈍くなる。 「んちゅ、あなたとのキスは素敵です。  心と体が同時に満たされていくようで」 「ディアーナ、キミがこんなにキス上手だなんて知らなかった」 「ふふっ♪ もっとしてください。今度は貴方から」  両手を俺の肩に添えて、彼女はそっと目を瞑る。  思わず見とれてしまうほど静謐な表情だ。 (クスッ、どうなさったの?)  唇が僅かに広がり、ドキッとした。  俺の心に直接語りかけられたようで。  そのまま彼女を見つめていると、ゆっくりとまぶたが開いた。  ディアーナはうっとりした顔で俺を見つめ返している。 「見とれてるんだ……そんなに綺麗ですか、私」 「あ、ああ……」  夢見心地で答えると彼女は嬉しそうに笑ってから、右手をそっと下ろす。 フワリ……  ディアーナの指先がペニスを弄ぶ。  指先を広げ、やわらかなものを包み込むように。 「嘘じゃなさそうですね。おちんちん、こんなに硬くして」 「あうっ! な、なっ……!」 「素直な貴方を気持ちよくしてあげたいのですが……準備はよろしくて?」  僅かに首を傾げながら俺に許しを請うディアーナ。  その間も指先は妖しく蠢き、じわじわと俺に快感を与えてくる。  うめきながら小さく頷くと彼女はもう片方の手も下ろした。  両手でペニスを捧げ持ち、静かに上下にしごき始める。  我慢できずに俺は声を出してしまう。 「たっぷりくすぐってあげます。先端から根本までゆっくりと」  両手で挟み込んだペニスに指を這わせるディアーナ。  細い指先がカリ首をいじめるようにくるくると同じ場所をなぞる。 「あっという間にヌルヌルですね? 次にくびれと裏筋の部分を……」  快感で硬直した俺を観察しながら次々に新たな快感を植え付けてくる。  ディアーナの指は魔法でもかかっているかのように気持ちよすぎた。  感じやすい場所を探り出し、俺が責めてほしい場所を予測して緩慢に這い回る。  そのうち俺は自分の体を支えられなくなり、彼女にすがりついていた。  俺を抱きしめたままディアーナも横になった。  ただし彼女が俺に覆いかぶさる形で。 「ふふっ、いじめすぎてしまいましたか。では癒やしてあげますね。私の魔法で」  自分の指先にチュッと音を立ててキスしてから、魔力で白く光る指先を見せつ、ディアーナが再びペニスを握り込む。  トロリとした粘液が彼女の指を伝って、俺に快感を染み渡らせる。  その魔力は意思を持ってうごめき、形を成してペニスを白い膜で覆った。 「これは停滞の魔法……  感じやすいまま、刺激がゆっくりおちんちんに溜まっていくのです」 「う、ううううっ! しかし、こ、これじゃ……」 「じれったい? ふふ、でもこれが気持ちいいのでしょう」  イきたいのにイけない、といいかけた俺をディアーナは言葉で封じ込めた。  条件反射のように俺はうなずいてみたものの、我慢できずに身悶えする。  彼女が言うように快感が蓄積していくのがわかる。 「気持ちいいのが積み重なったところを、さらに刺激されたら天国でしょう」  更に快感を加速させる彼女の手コキ。 「だ、だめだ! いまそんなにいじられたらあああ!!」  ヌチュヌチュと音を立てながら規則正しくペニスが上下にしごかれる。  俺はそのリズムに釣られるようにビクビクと体を跳ね上げるしかなかった。 「オリエン、愛してます……だからもっと私だけを見て」 「うあっ、ああ、ディアーナ……うくううっ!」  気持ちよすぎて集中できない!  ディアーナの指が亀頭だけをくりくりと撫で回した。 「目をそらしちゃダメ……もっと深く、私の目の奥を見つめて」  言われるがままに見つめ返す。  彼女のきれいな瞳に心が吸い込まれそうになる。  無防備にされてしまった心と体をディアーナは弄り回す。  優しく、緩慢に、逆らえぬように。 「あ、あああっ、やばい!!」 「ふふっ♪ どうされたのですかぁ?  我慢できなくなっちゃったのはなぜでしょうね~」  いつのまにか停滞の魔法が解除されていた。  当然俺は耐えきれず、腰の付け根から一気に精液が吹き出してくる! ビュルッ! ドピュウウウウッ!!  妙な声を上げながら俺は爆ぜた。  愛しいディアーナに見つめられたまま断続的に精を吐き出す。  彼女は薄く微笑みながらゆっくりと指先を動かし続けた。  射精した直後、心と体が無理やり剥がされたような感覚になった。  肉体に染み渡る快感が消えない。  指先を動かすことすら億劫だ。 「ふふっ、急に体が重くなっちゃいましたね。  無防備な状態で心が堕とされてしまうとそうなるのですよ」 「な……堕……と……」 「今のは停滞の魔法じゃなくて、魅了の魔法です。  これは普通の僧侶が扱える魔法ではないですけど、  今の私ならたやすいこと……ふふっ、あはははははは!」  ディアーナの表情が淫らに歪む。  それは表面ではなく心の奥がにじみ出たような動作。  魅力的だけど危険。  静謐なのに嘘がある。  俺の経験と勘が警鐘を鳴らすが、思考が何かに邪魔されている…… 「なぜキミが魅了なんて……」」 「まだ気づきませんか?  オリエン、やはり貴方と私は相性がいいみたいです」  彼女は両膝を俺の脇腹あたりについて、真っ白な下腹部を指さした。  そこには心臓のように赤い紋章が明滅していた。 「貴方が知るディアーナのおなかに、  こんな美しい紋章がついていたかしら?」  俺は愕然とする。  これは僧侶の、いや人間が持っていいものではない! 「見覚えがあって当然。  だってあなたはコレを持つ相手と死闘を繰り広げたのですから」  思い出したくないことなのに、すぐに思い出した。  サキュバスクイーンの妖艶な肢体。  その魔力の源である淫紋を。 「まさ、か、お前……ッ!」 「この時を待っていたわ、勇者クン。さあ、契りましょう」  考えたくはないが、ディアーナの体にクイーンが同居している!?  いつそんなことができたというのだ。  あの日、俺たちは死闘を繰り広げていたというのに! 「今はまだ半信半疑の心を、このディアーナが塗りつぶしてあげる」 「違う、お前はディアーナじゃない!」 「そうね。否定はしないわ」  俺の叫びを無視して彼女が笑う。 「あなたの欲望をすべて叶えてくれる堕天使が、ここに降臨したのよ。  聖なる力を持ったサキュバスとして、華麗に勇者をもてあそぶ存在として!」  まさにこれは悪夢(ナイトメア)だ。  しかし、醒めない夢などない。  自らを堕天使と呼び高笑いするサキュバスクイーンから、俺は大切な仲間であるディアーナを取り戻さねばならない。 ◆  目の前にいるのはサキュバスクイーンであり僧侶ディアーナ、もしくはその逆と呼べる存在。  今は主人格がクイーンに乗っ取られているだけで、ディアーナと引きはがすことができるのかもしれない。  これすら楽観的な俺の考えに過ぎないのだろうか。 「勇者クンと私が気持ちよくなれるようにお膳立てしてあげなきゃね。  魅了拘束魔法……パライズ!」  突然現れた魔力の枷が俺の手足に絡みついて自由を奪う。  白魔法と闇魔法が融合したような邪悪な枷は桃色の輝きを放っていた。 「はなせっ! ぐ、ああぁぁっ!」 「うんうん、ちゃんと使えました。  ふふっ、ニンゲンの体も捨てたものではないですね」  得意げに鼻を鳴らすクイーン。その見た目と声はディアーナのままだ。  せめて完全にサキュバスになってくれたなら敵愾心を持てるのに。 「ねえ勇者クン、ディアーナは神族の血統みたいよ。  彼女は隠していたと思うけどあなたは気づいていたのかしら」 「な、なんだって!?」 「ディアーナが僧侶というのは半分嘘。  彼女は月の女神の加護を持つ神官よ。  サキュバスにとって天敵にも等しい厄介な存在ね」  クイーンから語られる衝撃の事実。  神官と言えば国王ですら敬意を払う存在。  俺は自分よりも高貴な女性と一緒に旅をしていたことになる。 「勇者クンだけでも厄介なのに、  こんな子がサポートが付いてたら勝てないわけよね……  でもそれが今は私の思うままになりつつある」 「思うままだと? ふ、ふざけるなああああ!」 「ふふっ、うふふふ……なんて愉快なんでしょう! あはははははははは!」  憤る俺を冷ややかに見つめながらクイーンは笑う。 「このまま魂を汚染しながら時間を重ねれば、  いずれディアーナは完全に堕ちる……  でも今は健気に、私からの支配を抗っている。  う~ん、ちょっと困りますね~」 「出ていけ、その体から! ディアーナを返せ!!」 「は? この体を返す?  なぜせっかくの好機を手放せというのですか?」 「何を偉そうに……お前は仮初の存在だ!  ディアーナの心はディアーナのものだろう!!」  俺が吠えるとクイーンはいやらしい笑みをやめた。  そして宙を見上げて考え事をし始めた。 「ふむ、なるほど。いちおう筋は通ってます。では賭けをしませんか」 「賭け?」 「この体の支配権を彼女に戻します。  制限時間はそうですね……二時間と言ったところでしょうか?」  クイーンはディアーナの体をあっさり返そうと言い出した。  しかし完全に引き渡すつもりは無いらしい。 「その間に勇者の力と彼女への愛で、この体から私を追い出してみてください」 「なぜそんなことを……」 「理由は後ほど教えてあげても良いですが、  簡単に言うならば私がこの体を支配しやすくなるということです。  この賭けはそれくらい価値あるものです」  得意げにクイーンは胸を反らせる。  俺とディアーナが失敗すれば奴の力が増すのだろう。  でも逆に言えば……  完全にディアーナの体からクイーンを追い出せるチャンスだ。 「そのとおりです。あなた達にとっても悪くない話では?」 「だがお前にとっては益のない話だ」 「まだ疑ってるのね。  これはただのゲームだと言っているのに」 「ディアーナの命がかかってる。  勝たせてもらうぞ、クイーン!」 「いいでしょう。ではゲーム開始です」  クイーンが目をつぶるとディアーナの体が脱力した。  数秒後、パチっと目を開いた彼女は間違いなくディアーナだった。  俺の手足は拘束されたままだ。 「うっ! オ、オリエン!」  ディアーナの瞳から邪悪なオーラが消えているのを見て安心する。  こころなしか目つきも穏やかになっている。  つまりクイーンは俺との約束を守ったことになる。 (悪魔が嘘をつかないことに意味があるのは……  考えすぎか。頭を切り替えよう)  クイーンの行動理由は後回しにして、今は何をすべきかを考える。  するとディアーナが拘束魔法を解除しながら語りはじめた。 「あのね、私達がどうしたらいいかは……知ってる。  入れ替わる間際にクイーンが教えてくれたの」 「そうか、どうすればいいんだ!?」  渡りに船だと思って俺は彼女の言葉を信じた。  勇者としての力と彼女への思いの強さでサキュバスを追い払えと言われたが、具体的に何をしていいのかわからないのだ。 「私を抱いて欲しい」 「えっ」 「オリエンと体を重ねて、心もひとつになって、激しく愛されたらきっと……」  顔を真赤にしてディアーナが言う。  逆に俺は魂が抜けたように彼女を見つめて絶句した。  これは参った……俺は経験がないのだ。  すると彼女の方からゆっくりと体を合わせてきた。 「お、おいディアーナ!」  生まれたままの姿でお互いに抱き合う。  ただそれだけなのに激しく興奮する。  彼女の体は神々しさを放つほど眩しかった。  見ているだけでもスベスベだとわかる素肌は清らかで美しく、何人たりとも穢してはならないように思える。  神官の直系だとクイーンが言っていたのは嘘ではあるまい。 「私が上になるけど、優しくしてね。  恥ずかしいけど、わ、私だって初めてなんだから」  動けない俺の真上に覆いかぶさり、形の良いバストをゆっくりと押し当ててくる。  ディアーナは何も言わずに体を上部へスライドさせ、二つの大きな柔肉の塊で俺の顔を挟み込んだ。 (ド、ドキドキする……こんな事されたら、我慢なんてできない!)  淫らなサキュバスの時よりも清潔感あふれるディアーナのほうが圧倒的に好みだ。  俺にとっての破壊力が桁違いだった。 「あんっ! そんなところ……きゃっ、ペロペロしちゃダメ……濡れちゃうよぉ……」  気づけば俺は彼女の乳首を求めて自ら顔を動かしていた。  桃色の蕾は口に含むと甘く感じる。  それが錯覚だとわかっていても貪欲に求め続けてしまうのは男の性というやつか。 「ね、ねえ、きて……ううん、ちょうだい……」  やがてディアーナは無理やり俺の顔を胸元から離して、すっかりビンビンになったペニスの真上に腰を下ろそうとしてきた。  これから彼女とつながるのか。旅の最中も潔癖を貫き通した俺達がサキュバスが用意した舞台で一つになるのはなかなかの皮肉だった。  ためらいがないと言えば嘘になる。  だがディアーナはすでにペニスの先端を膣内へ迎えようとしていた。 クプゥ……  一文字に唇を結んだまま、じわりじわりと腰を沈めてくる。  柔らかな膣肉がめくれ上がり、ディアーナは少しずつ俺を迎え入れてくれた。  トロトロになった彼女の内部は優しく俺を包み、俺はその母性に甘えるようにして無意識に腰を突き上げてしまう。 「はぁんっ、おちんちん、もっとちょうだい……」  うっとりした目で俺を見つめるディアーナ。  いつもより可愛くて、思い切り抱きしめたくなる。そんな気持ちを察してくれたのか、彼女の方から上半身を倒して俺にすがりついてきてくれた。  豊かなバストが形を変えてひしゃげるのを感じながら、ペニスが完全に彼女の中へ埋まった。 (や、やばい……ウネウネしてるっ、き、きもちいいいいいいいっ!!)  もはや我慢など不可能だった。  元々経験がないところへ、とびきりの甘い刺激を送り込まれたのだから。 「やんっ、硬すぎて、もう! あ、あひっ! アアアアアァァァッ!」  ディアーナは小さく叫びながら絶頂する。  同時に腟内が激しく俺を締め付ける! 「あ、ああああ! イくううううううううううっ!!」 ビュクビュクビュクウウッ!!  たっぷり我慢を重ねたせいもあって、ペニスから信じられない量の精液がディアーナの膣内にほとばしった。 「あんっ、あんっ! 熱いよ、オリエン!」  数回に分けて膣内へ大量の精液を注がれた彼女は身をくねらせて悶えた。  その妖艶な姿に見とれながら俺はまた興奮してしまう。 ビクッ、ビュクウウウッ!  下腹部の淫紋が淡い光を放っているが先程のように真っ赤ではない。  どこか慈愛を感じさせるピンク色だった。  やがて射精も終わり、落ち着きを取り戻した彼女が軽く俺にキスをしてくれた。 「はぁ、はぁ、はぁ、オリエン……私の中で、何回もイっちゃったの?」 「あ、ああ、最高だったよディアーナ」  その言葉を聞いた彼女がもう一度キスをしてくれた。 「満足してくれたなら良かった。でもね……」  顔をあげたディアーナの表情は、わずかに禍々しさを放ち始めていた。  俺は自分の中で渦巻く疑惑を振り払いたかった。 「賭けは私の勝ちよ、勇者様」 「な、なにっ!?」 「あはははははは! バカ正直なのも困りものね」  可能性のひとつとして存在していた結果が実現しようとしている。  残念ながら俺にとって最悪の事態が起ころうとしていたのだ。  クイーンは自らの目的を明かしてまで俺とディアーナを結びつけようとしていた。  はじめから勝算がクイーンにはあったのだ。  これは二人の愛を利用した奸計だった。  もちろん愛の力で本当にクイーンを追い払うこともできたのだろう。  だがそれをできぬように念入りに、何重にも魅了の魔法をかけ続けていたのだ。  ディアーナの肉体に! 「勇者クン、神官の娘を自分から犯してくれたよね?  厄介な女神の系譜を断ち切ってくれてありがとう!」 「そんな、まさかお前……最初からそれが目的で!」 「処女じゃなくなれば女神の加護は大幅に薄れちゃうのよ。  そんなことも知らなかったの?」  得意げに微笑みながらクイーンは自らの下腹部をなで上げる。  闇のオーラを手のひらから受けた淫紋が朱に染まった。 「さぁて、反撃しちゃおうかな。  勇者様もたっぷり注いでくれたから、これでも肉体的な束縛は無くなった。  解き放ってくれたお礼に思う存分感じさせてあげる」  ゆらりと立ち上がったディアーナが、魅了拘束魔法・パライズを再びかけてきた。 ◆  先ほどとは比べ物にならない強度で思考が歪む。  精神が弱った肉体を魔力で支配され、俺の体の自由が奪われてゆく。  それは無理やり心と体を剥がされて、同時に甘やかされているような感覚だった。  ディアーナの肉体に寄生したクイーンが邪悪な魔法で俺を拘束する。  だが、その表情がわずかに翳りを見せる。 「おかしいわね。  女神の加護が外れきってない。  まだ肉体が完全に操れていないような気がするわ……」  手を握ったり開いたりしながらクイーンは首を傾げている。  どうやら肉体がうまく馴染んでいないようだ。  自分の思い通りにいかない焦燥感が彼女の表情から感じられた。 (もしかして今ならまだ俺の声が届くのではないだろうか?)  悪魔に支配されることに望まないディアーナの、聖者の魂が必死で抗っているのかもしれない。かすかな期待を込めて俺は叫ぶ。 「この魔法をやめろ、やめるんだディアーナ!」  一縷の望みを託して俺はディアーナに呼びかける。  やがて彼女の表情が緩みはじめた。  俺の声が届いたのだろうか。  だが次に俺の耳に入ってきたのは予想外の一言だった。 「ねえ、オリエン。  元々あなたはディアーナのことが好きだったのよね?」 「だれがそんなことを……」 「この体が教えてくれるの。  いつもエッチな目で、じっと見つめられてましたって」 「馬鹿なっ!!」  声そのものはディアーナだけれど口を動かしているのはクイーンなのだろう。  俺を動揺させるためにそんな作り話までするとは思っていなかった。 「でもね、この子も嫌じゃなかったみたい。  好きな人に見られるのは興奮するって。  神に仕える身分なのに、とんだヘンタイね?」  優しいディアーナの口調で語り続けながら、フンと鼻を鳴らすクイーン。  嘘か真か……  寄生した相手の記憶や思考を読み取ることができるらしい。  だがそんなことよりも、肉体を乗っ取った上でディアーナを罵られてはさすがに我慢できない。俺は歯を食いしばってパライズの魔法に抗い叫ぶ。 「今すぐにその体から出ていけ、クイーン。  それとお前が彼女のことを悪く言うんじゃないっ!!」 「ふん、何度でも言ってあげるわ。  あなた達ふたり、どっちも好きモノね。  世界を救う勇者と神官のくせに呆れたものね」  事もあろうにクイーンは左手をすっと下ろして、秘所を慰め始めた。  呼吸を乱し、うっとりした目で指先を加速させてゆく。 「許さない……お前には絶対負けないぞ!」 「じゃあせいぜい射精しないことね」 「なにっ」 「あなたの精を浴びれば浴びるほど、ディアーナの体は興奮してしまうから私の支配力が強まるの」  すっと指先を俺に向け、クイーンがニヤリと微笑む。  そしてクイッと指先を上へ折り曲げた。 ギチイイイッ!!  手足と心臓が鎖で思い切り締め付けられたような痛みが俺に襲いかかる。 「あらためて、ここからは私が相手よ」 「があああっ! あうううっ!」 「愛しい女性に痛めつけられる快感をあなたに教えてあげる」  自分の動きが完全に掌握されているのだと再認識する。  身動きはほとんどできない。  でも俺の心までは折れていない! 「生意気な目。でも、ふたりとも欲望に忠実で可愛いから許してあげる。  そのままでいいわ。せいぜい抗いなさい」 「俺は、俺とディアーナはお前なんかに屈しない!」 「あっそう。どこまで持つか楽しみね。  じゃあここからは、あなたが大好きなディアーナの声でいじめてあげる♪」  クイーンが静かに目を閉じる。  自分の中に隠れているディアーナを呼び起こすように。  そして再び目を開けた時、彼女はディアーナになっていた。  禍々しいオーラを瞳の中に宿しながら…… 「勇者クン、たっぷり感じて。  恥ずかしいお顔をたくさん見せてもらうからね?」  ゆっくりと膝立ちになるディアーナ。  柔らかそうに揺れる胸元を見せつけるようにしながら俺に迫ってくる! 「やめろ、こんなのお前じゃない……演技なんてするな!」 「ふふっ、演技するのがずるい? どうしてかしら?」 ふにゅ…… 「私だって気持ちよくなりたい。  オリエンのことを気持ちよくしてあげたい。  だからこれは演技じゃないよ?」  そのバストを顔に押し当てられ、俺は困惑する。  柔らかさと温もりに身を委ねてしまいそうになる。  さらに彼女の表情が、俺のよく知るディアーナその人で……  健気で儚くて、清らかで可憐。  淫らな色気とは違う魅力で満ち溢れている。  男なら思わず彼女を守ってやりたくなる、そんな表情をしている。 「オリエン、好きよ……あなたのことが好き。  この気持ちは素直に受け入れてほしいな?」 「う、うううぅ、そうなのか、ディアーナ……ァ……」  ギュッと顔を抱きしめられる。  間違いなくサキュバスクイーンの演技なのに……  わかっていても、多幸感が訪れて全身の筋肉が緩む。  抱きしめられ、ディアーナの心臓の音まで聞こえる。  今の俺は幸せだ……  だが俺を抱いている彼女がそっと囁いてきたのだ。 (あなたにとってはこのほうが受け入れやすいでしょ。  大好きな彼女の体と声で、  心を溶かしきって好きだっていわせてあげるよ)  やはりクイーンだ。  俺を抱いているのはディアーナじゃない。  深い絶望が快楽に蝕まれた心を食い荒らしていく。  同時に怒りもこみ上げてくる。  好きな気持ちを利用して甘く言い寄ってくるなんて卑怯だ。  ディアーナの声と体で、あんな事を言われたら嘘だとわかっていても動揺してしまう。 (ほらほら、はやく諦めちゃいなさい?) 「あああぁぁ……ッ! うあっ、ああああぁぁっ!!」 「そんな可愛らしい抵抗なんて無駄無駄。  全部受け止めて、組み伏せて、  甘い甘い快楽シロップ漬けにして食べてあげるわ」  そう言ってからクイーン・ディアーナは抱きしめていた俺をその場へ投げ捨てるように解放した。  さらに、大の字になって動けない俺の腰に自分の膝を滑り込ませてきた。 「心が抵抗すればするほど、私の術はあなたの中心に食い込んでいく。  抗えば抗うほど堕ちた時に魂が美味しくなっちゃうの。  だからいっぱい我慢していいのよ」  腰全体が膝枕されたような状態。  彼女の目の前では、快感を待ちわびるペニスが脈を打っている。  快感でしびれ、手足が動かない俺にはどうすることもできない。 「いくよぉ? 貴方の好きなおっぱいで責めてあげる♪」  豊かな胸がペニスを左右から挟み込もうとしている。  ゆっくりとその時が迫ってくる。  ペニスが完全に隠れるまで俺はその様子を見つめることしかできない。 きゅ……チュクッ…… 「はあああぁぁぁ……ッ」  その刺激はあまりの優しくて、でもたまらなくもどかしくて……  俺は思わずため息を漏らしてしまった。 「おちんちんをたっぷり甘やかして駄目にしてあげる。  まずは腰回りを固定しちゃうね、さあ……おいで?」  それから、ふわりと挟み込まれた先は天国だった。  固くなりきったペニスを柔らかく包み込むバスト。  しかもディアーナは腕を伸ばし、指先で俺の乳首を捉えている。  同時に両脇で胸を寄せている格好になる。 「根本をしっかりはさんでギュウウウ~~~~♪ ロックアップしてあげる」  下から上にしごかれながら、ペニスが悲鳴を上げる。  クイーンは器用に体を揺らす。  そのたびに前後へギュッギュッとリズムよくペニスが圧迫され、しぼられていく。 「しまるっ! うあああっ、ああああーーーーーーーーーーーっ!!」  柔らかいのに抜け出せない。  本当にペニスがおっぱいにロックされているかのようだ。  そこへ追撃が来た。 「ふううぅぅぅ~~~♪」 ビクビクビクッ!  圧迫されて悶える亀頭に熱い息が吹きかけられる。 (あつぃぃぃ! とける……息が、気持ちいいよぉ……)  同時に美しい爪の先が乳首をコリコリと刺激する。  ペニスと乳首の三点責めに悶絶する。  そのハーモニーはたまらなく刺激的で甘美なものだった。 (俺の、力が……奪われていく……)  手足が脱力して意識がペニスや乳首へと集中してしまう。  気を抜いたら自ら快感を求めて叫んでしまいそうだった。  清らかな体で邪(よこしま)な快感を生み出す魔性のパイズリに対して俺は一切の抵抗が許されていない。  十秒も経たぬうちにクイーンの性技は俺を射精寸前へと追い込んだ。 「もうすぐ出ちゃいそうだね。  でもまだよ……  閉じ込めたままこの先の段階へ追い詰めてあげるわ」 ぱちゅっ、ぱちゅっ、ぱちゅっ、ぱちゅんっ! 「うあっ、ああっ、あっ、だめだああああ!」  クイーンは前後だった動きを上下のピストンへと切り替えた。  すっかり敏感にされたペニスが彼女の中でもみくちゃにされる。  胸の中で無限に性感帯を弄ばれ、俺はますます乱れる。  もはや正気を保つのが難しい。  この快感から逃れることはできない。  乳首責めとパイズリによっていつ射精してもおかしくない状況なのだ。 「クスッ、気持ちいいのに苦しい? ほらほら、先っぽがパンパンだよぉ」  ビクビクッと震え続けるペニスの先端をクイーンの舌先がひと舐めする。 チロチロ♪ 「あうううっ、あっ、ああああ~~~~~~~~~~っ!!」  イくっ、イっちまううううううう!!  でも射精したらディアーナへの支配力が強まってしまう。  ここは我慢しなければならないのだが、 「じゃあここでリリース。どうなるのかしらね?」  だが射精する一秒前でペニスへの圧力がゼロになった。  乳首へのカリカリ責めも止んで俺はホッと一息……つけなかった。 「んっ、は、あ、な、なにこれ……あ、ああああ、あついいいい!」  行き場を失った精液がペニスの根本でぐるぐると渦巻いて苦しい。  この上なくもどかしい状態が続く。  弱火で魂が焼かれていくみたいだった。 「ごめんね。今からいっぱい寸止めしちゃう♪  気持ちいいのが広がって、ジワジワきちゃうよね~~~?」  クイーンは俺の悶っぷりを見てクスクス笑っている。  その笑顔はディアーナそのもので、見とれてしまうほどかわいらしい。  快感を耐えきるために俺は無意識に目をつぶった。  するとまたパイズリが緩やかに再開される。 (イきたいっ、イきたいのにイけないいいいい!!)  ほんの数秒前とは真逆の思考に頭の中が埋め尽くされていく。  情けなく震える肉棒を見ながらクイーンが笑う。 「あはっ、悶えてる!  おちんちんはゆるく閉じ込められたままなのに」  そう、挟まれたままなのだ。  まだまだずっと彼女のターンなのだ。  俺への責めは継続されている。  圧力なしのパイズリは、次にどんな攻撃を仕掛けてくるのかわからない。 「じゃあ追い打ちかけちゃうね。  このまま柔らかホールドでフォールダウンだよ……上から下へ、ストンッ」 シュルルルル……  優しく包まれたまま落ちる。 「ぁあーーーーーーーーーーーーーっ!!」  間抜けな声を出しながら俺は喘ぐ。  柔肉がゆっくり滑り落ちていく。  亀頭に優しく触れていた、俺自身をゆるく挟み込んでいた魅惑のバストが自由落下でとろけるような刺激を与えていく。  距離にすればほんの数センチの動き。  密着したままなので外見上は何も変わっていないのだろう。  しかし、 「うふふふふ、きもちいーい?  ギュウギュウだった刺激が急にフワフワの甘責めに切り替えられたら  男の子はみんな我慢できなくてたまらないよねぇ」  ここでまたロックアップ……ペニスがしっかりと挟まれ、揉み込まれた。 ギチュウウゥゥ…… 「ひぎっ、あ、あああ、まっ……」  クイーンには完全にバレている。  この責めによって俺が今までで一番忍耐力を削られてしまったことを。 「じゃあコレを繰り返すね。  ぎゅううううう~~~……ストンッ」 シュル……ヌチュウウゥゥゥ……ッ  そろりとペニスを撫でながらおっぱいが滑り落ちる。 「ふあああああああああああああああああ!!」  耐え難い快感に腰が勝手に跳ね上がる。  緩急をつけられたパイズリがここまで気持ちいいとは! (だめだ、漏れるッ! イっちまううううう!!) ぱちゅっ、ぱちゅっ、ぱちゅ……  再びペニスの根本をギュッと締め上げられる。  続いてそこからじわじわと上へ絞られていくような動き。  精液が通る道を真っ直ぐに伸ばされると、我慢していたものが下から湧き上がってくるように感じる。  そして最後には自由落下でペニスを擦るバスト責めがやってくるのだ。 「ふふっ、もういっかい……ストン♪」 シュルルル…… 「ああっ、あーーーーーーーーーーーっ!!」 「ふふっ、あははは! なんだかもう出ちゃいそうだけど大丈夫?」 「いあっ、ああああ、これ、もうやめてええええ!」  この責めを何度目か繰り返された時、俺は恥も外聞もなくそう叫んでいた。  ディアーナを助けたいのに助けられそうにない……  そんな自分を感じて情けなってくる。 「もう谷間が我慢汁でタプタプ……  勇者様、弱いおちんちんでちゅね~?  かわいそうだから少し手加減してあげましゅね~」  ディアーナの指先が亀頭に触れる。  そこから淡い光が溢れてペニス全体を包み込んだ。 (射精感が……少し薄まったような……でも消えてない!?)  ペニスを痺れさせていた射精寸前の衝動が収まり、代わりにジクジクとうずくような快感へと切り替わった。 「はぁい、気持ちいいのが続く停滞の魔法~。  おちんちんのあたりだけ時間の流れが普段の十分の一になっちゃうんだよ」  これは戦いの時に重大な傷を受けた者の痛みを一時的和らげ、即死を回避するための白魔法だ。 「そんなっ、うああああああ!」 「射精したくても強制的に我慢させちゃうから、集中できて便利でしょ?」  悪魔には使えないはずの白魔法を、ディアーナを支配することでクイーンが使いこなせるようになっている! 「じゃあ、おっぱい天国続けましゅね~。うふふふふふふ」 「ま、まって、うあああああああああああ!!」  さっきよりも苛烈にパイズリを再開するクイーン。  これが彼女の言う「手加減」だとしたら、残酷すぎる!  射精を引き伸ばすかわりに快感を何倍も蓄積させていくつもりなのだ。 (頭と体がバラバラにされて、ダメだ、こんなの我慢できないッ!!) ビクビクビクビクッ!!  次の瞬間、視界が真っ白になって意識が飛んだ。 ビクンッ!  意識が飛んで無防備なところへ刺激を加えられて俺は悶える。  与えられた快感を逃がすこともできず、俺はもう一度射精してしまう。  ただし脳内だけの、まやかしの射精……サキュバスクイーンのせいで体より先に頭の中がイかされてしまったのだ。 ビクビクビクッ!  連続絶頂を味わう。ただし精液は出ない。  ゆっくりとペニスの中間あたりを通過しているのはわかる。  このまま確実に射精するとわかっているのに止められない!  たっぷりと焦らされながら続けられるパイズリは、俺の意識が正常なときも、飛んでいる最中もずっと切れ目なく続けられている。 「頭も体の心も、何度もイきつづけて幸せね。  下ごしらえはもう十分かな?  骨抜きになったところで~……はい、パチン♪」  クイーンがウィンクをしながら指を鳴らす。  停滞の魔法が解除された。  時間がもとに戻る……圧倒的な快感が俺の下半身に襲いかかる! 「あっ、あああっ、ああああああああああああああああ!!!!!」 ビュクビュクビュクビュクドプドプ~~~~~~!!  十数回分の射精を一瞬で味わったような気分。  ペニスはビクビクと震え続けて止まらない。  壊れたように精を吐き出し続けている。 「どうだった? 気持ちよかったでしょ。  あなたみたいにエッチな勇者クンじゃ  絶対に我慢できない気持ちよさ、体の芯に叩き込んであげたわ」  ディアーナに寄生したクイーンがとびきり淫らな表情で俺を見つめていた。 ◆ 「あらあらこれは……良い知らせよ、オリエン。  あなたの愛しいディアーナはまだ堕ちてくれそうにないわ」 「え……」 「こんな姿になってもオリエンのことを信じ切っているのね。  今も必死で抗ってる。  私にこの体の支配権を完全に渡さないように」  訝しげなクイーンの表情は演技とは思えない。  わずかに期待が膨らむ。 「健気なものね。  勇者であるあなたが必ずサキュバスの誘惑を振り払ってくれるって」  フッと溜め息を吐いたクイーンはお手上げと言わんばかりに両手を広げてみせた。  もちろん見た目はディアーナのままだが。 「だから大サービスよ。チャンスをあげる。  二人が本気で愛し合うところを私に見せて?  それが気に入ったら彼女を開放してあげる」  本気で愛し合うことができたのなら、ディアーナはクイーンから主導権を奪い返せるということらしい。 「本当か?」 「愛し合う二人の邪魔をする気なんてないですもの。  もっとも、すでにサキュバスに肉体を犯された神官を  あなたが心から愛せるとは思えないけど」  侮蔑に満ちた目で見つめられ、俺の中で怒りの炎が巻き起こる。 「そんなことはないっ!」  あらそうなの?という表情のクイーン。  でも納得したのか、彼女は静かに目を閉じる。  次第に禍々しい雰囲気が薄れていく。  そしてもう一度目を開いたときには、完全にクイーンの気配は消え去っていた。 「さっきの話は本当よ。信じてほしいの……」 「ディアーナ、なのか……?」  彼女はしっかりと頷いてみせた。 「サキュバスクイーンが私に意識を譲ったところまでは覚えてる。  それに私があなたに何をしたのかも……」  少し顔を赤くしてディアーナが俯いた。 「でも、それでも信じてほしいの!  オリエン、あなたを愛してるから!」  そっと寄り添い、唇を重ねてくるディアーナ。  心がホッとするような優しいキスだ。  サキュバスのキスみたいな淫らさなど存在しない。 「二人で力を合わせて  この体からクイーンを消滅させたいの。協力してくれる?」  今度は俺が力強く頷く番だった。 「うれしい……来て、オリエン」  恥ずかしそうに両足を広げ、俺を導いてくれるディアーナ。  美しい花弁にペニスの先端を合わせると、抵抗なく飲み込まれていく。 「あんっ、きもち、いい……」  ヌルリと滑り込んだ膣内は慈愛に満ちた柔らかさで、思わず射精しそうになってしまうほど心地よい。 「はじたないよね。汚れてるよね。  でもお願い、今だけは愛して……んちゅっ」  彼女が汚れているなんて俺は微塵も感じていない。  悪いのはサキュバスクイーンなのだから。  むしろその迷いを俺の愛で包み込んで消し去ってやりたい。 「オリエンの感じやすい場所しってるよ。ここと、ここだよね?」  細い指先に触れられた場所が疼く。  甘い痺れとともに快感がジワリジワリと迫ってくるようだ。 「あはっ、悶えちゃうんだ……かわいい……♪」  ディアーナは少しいたずらっぽい表情でそう言いながら俺を責めてくる。  正直、とんでもなく気持ちいい……勝手に腰が前後に動いてしまいそうだ。 「もっと早く言ってくれてよかったのに。  私もあなたのこと、大好きよ……」  そしてまた口づけを交わす。  心がほぐれていくのがわかる。俺も彼女のことが好きなのだ。  当然その思いは体の一部に現れる。 「おちんちん、怒ってるみたい……もう我慢できないの?」  まっすぐに尋ねられると赤面してしまう。  だが俺は素直に答えた。  すると彼女はニッコリと微笑んでから、俺を受け入れてくれた。  さらに深い場所へと俺をいざないながらディアーナがつぶやく。 「じゃあ一番奥まで挿入して。私のこと、好きにしていいから」  クイッと腰がひねられ、すでに埋まっていた部分が彼女の膣内へさらにめり込んでしまう。俺の口からも思わず情けない声が漏れ出す。  それは甘く、抗えない命令だった。  心が動くより先に腰を前に突き出してしまった。 ずちゅううっ! 「あはあああああああああああああああああああっ!!」  ディアーナは顎を跳ね上げ感じ始める。  その様子がさらに俺を興奮させ、腰の動きが加速する! 「や、やだ、こんな声出したらまた言われちゃう……」  恥ずかしそうに口元を抑える彼女だが、興奮を完全には抑えきれない。  目元に浮かぶ涙は歓喜によるものだろう。  クイーンに弄ばれた彼女をもっと喜ばせてやりたい…… 「淫らで汚れた神官だって、クイーンに……ふああああぁっ!」 「ディアーナ、自分を傷つけるようなことを言っては駄目だ」  強く抱きしめ、その体を全身で味わう。  桃色に染まりゆく肌は艶かしく、元々美しい彼女を情熱的に彩る。  お互いを求め合う動きが頂点に差し掛かる頃、ディアーナは俺にすがりつきながら懇願してきた。 「いいよっ、思い切り出してっ! 私の体にあなたを……あ……」 「うあっ、締りがすごい! 俺も、も、もうすぐ、出るッ!!」  膣奥が震え、ペニスに微妙なバイブレーションが加わる。  こんな刺激を与えられたら男なら誰でも果ててしまうだろう。  しかし彼女は急に何かを思い出したように、腰の動きを止めようとしてきた。 「あっ、やっぱり駄目! 射精しないで、オリエン」 「な、なにっ!?」 「今わかったの。私の中に潜んでいるサキュバスが何を企んでいたのかを」  だがもう遅い。いまさら止められない!  射精寸前の律動を繰り返していた俺の体は震えだしている。 「精を注いだら強くつながってしまう、  あなたとサキュバスの、  そして私と彼女のつながりが、あ、ふああああぁ~~~~~! 「くっ!」  こらえきれず俺が射精する直前、ディアーナは自分から腰を引いた。  膣奥にしっかりと咥えこまれたペニスが引き抜かれ、膣内に引っかかりを覚えた時に大きな快感が背筋を駆け抜けた。  今までで一番強い刺激だった。 「出るっ、あああああああああーーーーっ!!」  膣内から抜け落ちる時、断続的にペニスが強く締め付けられた。  それがトドメとなって俺は精液を放出してしまう。 ドピュ、ブピュッ、ビュルルルルルルルッ!!  膣内で爆ぜるはずだった大量の白濁が彼女の下腹部にぶちまけられた。 「あんっ、あああっ! 熱いっ、駄目だよ、こんなに注いじゃったら、もう……!」  どうしていいかわからず俺は熱い衝動に任せて彼女を抱き寄せる。  すると桃色の波紋が周囲に広がり始めた。 「こ、これは……」  魔力を伴う光はそのまま魔法陣となり、ディアーナおへその下あたりを照らし出す。  クイーンが残していった淫紋が強く光り輝いていた。 「うふふふふ♪ せっかく秘密にしていたことを教えてあげたのに  残念だったわね、ディアーナ。  彼ったら、ぜ~んぜん我慢出来なかったわ」 「なっ、お前……クイーン!?」  抱きしめた腕の中でディアーナの気配が消えていた。  変わりに俺を見えげていたのは邪悪で淫らな存在だった。 「ディアーナに肉体の主導権を渡す前のこと覚えてる?」 「ああ……」 「なぜ私が自分に不利になるようなことをあなたに伝えたのか……  不思議だとおもわなかった?」  今思えばたしかにそのとおりだ。  主導権を渡す必要はなかったのだから。  なにか策略があると疑うべきだった。  そしておそらくそれは――、 「そうよ。ちゃんと意味があったの。  あなたの精神をもっと深いところで私につなぎとめるためよ。  最初に行動理由を告げることで私の呪縛は数倍強くなる。」  爛々と光る眼で彼女が続ける。 「私の目的を知った上であなたを射精させてしまえば  あなたは自ら堕落したことになるの。  だから気持ちよかったでしょう? 最後の膣外射精♪」  クイーンの言葉に俺は愕然とした。  射精の瞬間まで俺はディアーナのことを信じていた。  だがそれも「信じる」という言葉によって彼女に甘えていただけなのだ。  射精するための、快楽を得るための言い訳に過ぎない……  クイーンは俺に向かってそのような言葉を投げかけている。 「逆に言えば、私の暗示を乗り越えて助かる見込みもあったのに。  あなたは我慢できずに射精してしまった。  自ら快楽に溺れ、淫紋の真上に!」  クイーンは下腹部に指を伸ばし、精液を引いて邪悪な紋様に擦り付ける。  淫紋の輝くがさらに強くなる。 「あ、ああああぁぁぁ!!」  考えたくないことだが俺がクイーンを強くしてしまったのだ。  内側にも射精するだけでなく、外側も……  よりによって淫紋に精を捧げてしまったのだから!  愕然とする俺を見て、微笑みながら彼女は詠唱する。 「聖者の肉体、勇者の子種、魔刻の呪印、今ひとつに――!」  クイーンの下腹部が妖しく輝き出した! ◆  俺の目の前で信じられないことが起きていた。  聖なる光と闇が溶け合い、空間が歪みを見せている。  その中心にいるディアーナの肉体に寄生したサキュバスクイーンが微笑む。 「これでようやく自由の身……  心も晴れやかで素敵な気持ちよ、勇者クン」 「ああああぁぁぁ、あああっ! ディアーナを返せ!!」  叫ぶ俺を見つめながら彼女は手のひらを開いたり握ったり、肉体が馴染んでいるかを確かめるような動きを繰り返している。  闇の世界でしか生きられないはずのサキュバスが、聖なる加護を受けたディアーナの肉体を支配する。それは悪夢としか言えないような現実。 「ふふふふ、今の気持ちはどうかしら? 軽く絶望しちゃってるみたいね」  俺は過ちを二度も犯したのだ。  ディアーナの膣内への射精によってサキュバスクイーンに精を捧げてしまったこと。  そしてディアーナの体表に施された淫紋に精を浴びせたことで彼女たちのつながりを、交わりを強化してしまったこと。 「でもまだ足りないわ。  私を祝福したいならもっといい顔をしてもらわないとねぇ」  不意に近づいてきたサキュバスクイーンが指先で俺の顎をくいっと持ち上げる。  その整った顔立ちはディアーナに間違いないのだが、瞳の奥に宿っている淫らな炎はサキュバスそのものだった。 「これからなにをするつもりだ……クイーン……」 「見せてあげる。  貴方が愛するディアーナの本当の力を」  そう言いながら彼女は両手を大きく広げ、呪文を唱える。  すぐさま全身から淡い光を放つ。  その光は一秒ごとに輝きを増してゆき、ついに目を開けていられないほどになる。 (何が起こるんだ……)  両目を右腕で隠すようにしながら輝きの中心を見つめていると、ディアーナの肉体からもう一つの影が生まれた。 「うっ、これ、は……」  それはまるで生まれたばかりの、もう一人のディアーナ。  見慣れた髪の色、白い肌。しかし目に生気がない。  しかも下腹部には忌々しい淫紋が! 「おはよう、聖女様。  あなたの愛する勇者様のおかげで私は戻ってくることができたの」  クイーンが語りかけると生まれたばかりの彼女は僅かに顔をあげ、ポツリと呟く。 「そう……」 「あらあら、随分そっけないこと!」  クイーンの言うとおりだった。  声も顔もディアーナだと言うのにまるで別人。  嫌な予感がこみ上げてくる…… 「これはどういうことだ……説明しろ、クイーン!」 「説明も何も、あなたと彼女の感動の再会シーンじゃない?」 「戯言を!」 「クスクス、なぁーんてね。  だいたいあなたの予想通りよ。  もはや彼女は私の分身に過ぎない。そうよね? サキュバス・ディアーナ」  クイーンの言葉にディアーナが小さく頷く。  俺にとって最悪の展開だった。 「聖女の魂と、私の性技を融合させた疑似生命体よ」  二人のディアーナが俺に近づいてくる。  ゆらりと左右に別れ、自然な仕草で俺の手を握ってきた! 「今から二人がかりで、勇者クンを困らせてあげましょうね」  ディアーナの冷たい手とクイーンの生暖かい手。  どちらも極上の感触だった。  そして握られた手から淫気を流し込まれ、俺は身動きが取れなくなった。 「オリエン……ごめんね」 「ディ、ディアーナ……まだ意識が……ッ!」  申し訳無さそうにつぶやく彼女を見つめながら俺はハッと気がつく。  もしかしたらこの状況を打破できるのではないか。  ディアーナの心はまだ死んでないのではないか?  それならばと、彼女の劇的な回復に一縷の望みを託す。  しかし…… 「ううん、ちがうわ。  謝るべきはあなたのほうだよね」 「なっ!?」 「あんなに膣内には出さないでってお願いしたのに……」  生気の無い目をしたディアーナから出た言葉は俺への叱責だった。 「私の言うことを無視した結果、こんなことになってしまうなんて……許せない」 「や、やめろ……やめてくれディアーナ!」 「サキュバスにされた私の気持ちなんて貴方にはわからないでしょう。だから」  ディアーナが先に体を擦り寄せてきた。  クイーンはその様子を黙ってニヤニヤしながら見続けている。 「オリエンの全てを奪い尽くしてあげる。  精液を絞り尽くして、徹底的に枯れ果てさせて、  それからまた私の愛を注いであなたを満たしてあげる」  はじめてディアーナが微笑んだ。  しかしそのトロ~ンと陶酔しきった表情を見て、背筋が凍りつく思いだった。 (完全に操られている……どうすればいいんだ!?)  ディアーナの回復に期待を持つことすら難しそうだ。  打開策を思いつけない俺にとどめを刺すようにクイーンがいった。 「そうね。ディアーナと私の、  私達の愛で貴方の心を体を満たして、永遠の虜にしてあげましょう」 「はい、クイーン。仰せのままに」  敵が増えた……認めたくない現実を俺は初めて受け入れた。  受け入れざるを得なかった。  俺は二匹のサキュバスにとらわれていたのだ。 「というわけよ、勇者クン。覚悟は良いかしら?」  その言葉を受けてディアーナが一歩前に出る。 「オリエン……私のここ、よく見てたよね。エッチなんだから♪」  俺の左側に滑り込むようにして、腕を絡ませてきた。  その艶めかしい感触は彼女そのものであり、本人の証だった。 「お望み通りにしてあげたら?」 「はい、そうさせていただきます。オリエン、いっぱい感じてね」  右側に滑り込んできたクイーンに向かって分身であるディアーナが頷いた。  見た目に違いはない。  しかしまとっている雰囲気でわかるのだ。  そっとディアーナの手がペニスに覆い隠す。  じっとりとした快感を送り込む指先は思わずため息が出るほど心地よかった。 「気持ちいいんだ? おちんちんすごいね……」 「大好きなディアーナに挟まれて幸せそうね。勇者クン?」  キラリと彼女の眼が光ると、手足の感覚が瞬時に遠のいてゆく。  魅了魔法の強化版だ。  身うごきできずに快感を耐え忍ぶ俺を見てクイーンが笑う。 「私も動きを合わせてあげる。  淫らになった聖女の肉体、たっぷり味わって?」  クイーンの囁きにやきもちをやくように、ディアーナは俺の顎先に手を添えて、くいっと自分の方へ向けた。 「キス、しよ……んちゅ、ちゅぷぷぷ、レロレロレロ……」  積極的なキスに俺は戸惑う。  少なくとも俺が知るディアーナはこんなふうに自分から口づけをねだるようなことはしない。でもこの雰囲気は間違いなく彼女なのだ。歪んでいても思いに変わりはない。 「聖女様のキスは濃厚でしょ? うふふふふ」 「オリエン、お顔がとろけきってるよ。だらしないなぁ~」  言われるまでもなく俺は彼女に骨抜きにされていた。  顎に力が入らない。  淫魔の力がそうさせているのか、ディアーナの思いが強すぎて俺を封じ込めているのかわからない。 「次は私とのキスよ。  もっとおかしくしてあげるわ。んっ……じゅるるるる、ずちゅ♪」  クイーンのキスはさらに情熱的だった。  ディアーナによって無防備にされた俺の心を蝕むサキュバスの愛撫。 「キスだけでこんなにされちゃうなんて恥ずかしいね、オリエン」 「ほんとにね。勇者失格じゃないかしら? ふふふふ」  交互にキスをされ、言葉責めをされ、嘲笑される。  それは俺の心をがんじがらめに縛り付ける魔の誘惑。  やがてその行為に飽きたのか、彼女がゆらりと立ち上がった。 「じゃあそろそろ、おちんちんをもらっちゃうね?」  膝立ちになり、俺のペニスへ狙いを定める。  片足だけついた状態で自らの秘部を見せつけるようにしながら、ペニスの先端が彼女の膣口にキスをした。 ずぷ……  口を結んだままディアーナが腰を沈めてゆく。  驚くほど抵抗なく、すんなりと俺を迎え入れていく。 「あんっ、あっさり奥まで入っちゃうね。逃げられないね?」  クプクプと淫らに音を立て、ゆっくりと飲み込まれていくペニスを見ながら俺の心の中に絶望感が舞い降りる。  やばい、気持ちいいけどこれはダメだ……身を任せたら、すぐに落ちてしまう! 「一番奥で抱きしめてあげる。いくよ?」 ズチュウウウウウウウウウウッ!!  一度引き抜いた様子を見せたディアーナが、一気に腰を落としてきた。  熱い膣内に包まれ、俺は思わずイきかけた! 「ふふっ、まだ我慢できるんだ? でもこれならどうかな」  次の瞬間、奥深くまでくわえ込んだペニスを味わうように、彼女の膣内が動き出す!  それはまるで別の生き物のように、複雑なざわめきを伴って俺に純粋な快感を植え付けてくる。 「ビクビクしてるよぉ……ほら、ミルクだして? 私の膣内、好きでしょ」 ちゅ……  騎乗位のまま倒れ込み、軽くキスをしてくるディアーナ。  たったそれだけの行為なのに、心がまた剥がされた…… 我慢がどんどんできなくなる。もう一度キスをされたら、俺は――ッ! 「じゃあこれでトドメ。あなたはもう我慢できない……」  そっと触れ合う唇。それが今は恐ろしい。  全く抵抗できずにすべてを奪われてしまうような、 ちゅ……という甘い音色が頭に響く。  同時に体の奥にせき止めていたものが溶け出す。  防波堤を侵食して海水がにじみ出てくるような感覚。  駄目だ、本当にもうイく! イっちまう!! ビュクビュクビュクビュクウウウ!!  抱きしめられ、キスをされたまま俺は彼女に精を捧げてしまう。  ……幸せだった。  ディアーナと俺はもともと愛し合っている間柄なのだ。  一度歯止めがなくなってしまえばとめどなく愛情だけが溢れてくる。  挿入したまま俺はさらにもう一度彼女の中に精を吐き出した。 「クスッ、いいのぉ? そんなに気持ちよさそうにしちゃって」  クイーンはすぐとなりでその様子を見つめている。  だが声が遠い。ディアーナに魅了されているからだ…… 「魂の守りがお留守になってるわよ。えいっ」  ドクンと俺の心臓が高鳴った。  魅了魔法の重ねがけだった。  ディアーナだけでなく、それ以上にクイーンが愛しく感じる。 「んふふ、簡単に魅了されちゃったね~。  しかもこれは深化魅了……  サキュバスである私に縛られたんだから簡単には解けないわよ」  ディアーナは示し合わせたようにそっと身を引いてクイーンに自分の位置を譲る。  正面からクイーンに見据えられ、俺の鼓動が高鳴る。 「もう一つプレゼントしてあげる。その前に」  髪をかきあげながら余裕たっぷりにクイーンは言った。 「キスしてあげなさい、ディアーナ」 「はい、クイーン。んちゅっ……レロォ、チュプププ……」  意識の外からのキス。  それは先程よりも甘く俺の心を溶かす魔法。  ディアーナに口づけをされた俺の胸にクイーンが唇を当てた。 「はい……オリエン、もっときもちよくなろ? ん、ちゅ、ううぅぅ……」 「そうよ。聖女のキスで、もっと心をユルユルにされちゃいなさい」  甘いキスのせいで俺は変化に気づけ無い。クイーンにキスされた場所に、彼女の下腹部にあるのと同じ淫紋がプリントされていた。 「かわいい勇者くんのおなかに、私と同じ淫紋をつけてアゲル♪」  ニッコリと微笑むクイーンと目があった。  そして淫紋はすぐにその効力を発揮し始める。 (あ、あついいいいいいいっ!!)  胸が、心臓が、いや心を直接あぶられているような感覚だった。 「はい、完成。  隷属淫呪、発動させちゃおうね~」  クイーンが持つ情欲の炎で、燃え尽きないようにじっくりと温められていく。  溶け出した心はディアーナにねぶられ、無駄なく吸い取られていく…… 「クスクスッ、これでもうあなたは終わりよ?  自由に動くことすらできないわ」  もはや震えることしかできない俺を見つめながらクイーンが膝立ちになった。  下腹部の淫紋が今までになく光を放っている。 チュク…… 「さらにもう一つ絶望を。  じきじきに私が犯してあげる」  スライムのように震える膣口が先端に触れた途端、俺は腰を突き上げてしまう。  クイーンの膣はディアーナのそれとは次元が違う……  そう予感させるのに十分な、男を狂わす危険な刺激。 「私の魂を貴方の心にかぶせてあげる。  裸の心と心で溶け合っちゃえばもう離れられない。  私からも、ディアーナからも……」 クチュリ……  ゆっくりと飲み込まれていくペニス。  そして僅かな時間差で俺は快楽の渦に巻き込まれていく。  あまりの快感に声も出せない。底なし沼のような快楽に身を浸していると射精のことしか考えられなくされてしまう。 「もちろん、おちんちんも優しく包み込んであげるわ」  焦らすようにゆっくりとクイーンが腰を沈めていく。  それは性技に長けたサキュバスのテクニックの一つだった。 「サキュバスの名器に包まれて、愛しい聖女様にキスをされながら果てたらどういうことになるか……考えるだけでも楽しいわね?」  一番奥へ招かれた瞬間、膣圧で少し弾かれる。  それがとても気持ちよくて自分から腰を突き上げるが、阻まれる。  それを何度か繰り返しながら、ついにサキュバスの貪欲な子宮が俺自身をぱっくりと加えこんできた! 「おしゃべりはここまでよ。  もう我慢しなくていいよ……イきなさい」 ビュックン!  彼女が言い終わる前に終わっていた。  意識する間もなく俺は精を捧げてしまったのだ。  その瞬間、淫紋が再び輝きを増した。 「ふふふ、こんなにたくさん出しちゃうなんて悪い子ね、勇者クン。」  くねくねと腰を動かしながら、射精直後のペニスを弄ぶクイーン。ディアーナは乳首を優しく舐めながら快感を継続させるようにサポートに徹している。  やがて完全に射精が終わるころ、クイーンはディアーナと位置を入れ替えた。 「オリエン、クイーンの膣内にこんなに出すなんて許せない……今度は私がやるから代わって!」  嫉妬に満ちた言葉だが今はそれが心地よく思える。クイーンの淫紋に内部から精を捧げた俺は、先程までよりも感度が何倍にも跳ね上がっている。  ディアーナは両手で俺の胸を愛撫しながらゆっくりと上下にピストン運動を始める。  彼女の膣内がキュンキュンと俺を締め上げ、再び降参させる。  そのまま数回ディアーナに搾られた後、今度はディアーナがクイーンに譲る。 「はいはい、かわりましょうか。やきもち焼きの聖女様。  せいぜい手加減してあげてね?」  終わりのない愛撫を受けているうちに俺は気づく。  いつの間にか結界が張られている。  俺たちの周りだけ時間が止まっているようだ。  クイーンがほほえみ、ディアーナが少しやきもちを焼く。  そして二人に犯され尽くす。 「このさきも彼女と交代で犯してあげるわ。  幻も交えて、時が止まったこの空間で、永遠にね♪」  もはや意識を失いかけている俺にとって、それはこの上なく甘い提案にしか思えないのであった。 (了)