トラック01 数年前~ あの、本当に良いのですか…? 見ましたよね、私の目を… この、赤い目を… ひっ……ごめんなさっ… なんでも、ないです…… 私はさっき買われた時点でこれからあなたの奴隷です… 蹴るなり殴るなり、好きにして下さい… 決して…抵抗、しませんから… っ……その手は…? つな、ぐ…?手を…繋ぐ…? そんな…貴方の手を汚してしまいます…この鎖を… 私の首輪に繋がった鎖を引っ張れば、手を汚さずに済みますので… …あっ…なん、で……貴方…は…… うわぁ…大きい… ここが、貴方の家なんですね… えっと、私はどこに行けば… 中へ…? そ、そんなことできません! 私のような汚れた人間が入ったら、お家を汚してしまいますから…! え…それならお風呂に…? あのっ、私にお風呂だなんて… そんな高級な物… まっ、待って下さい…奴隷の私にそこまで…あのっ… えっと、その…ありがとう、ございます… こんなきれいな洋服まで用意していただいて… あ、あのっ!なんで奴隷の私に… …え?あ、はい…そこに座れば良いのですね… …? あの、これは…? え…?あ、はい。シチュー、ですね… そ、それは分かるのですが…何故私の前に…? た、食べていい…? あの…私は奴隷ですよ…? このようなものをいただける身分ではありません… 道具のように扱われて… そして必要が無くなれば捨てられる… そんな存在ですから… お風呂だって必要ありませんし、 服だってこんな素敵ではなくとも、最低限隠せるものであれば問題ありません もちろん食事も… 最低限の食べ物と水さえあれば、生きていけますから… それなのに、なんで…… …? あの、その石は何ですか…? きゃっ、…まぶしっ…… あっ…?奴隷の首輪が外れて… ぁっ、えっ…?なんで…? だってこの首輪は、自分で外すことはできないって… も、もしかしてさっきの…? で、でも、どうして… これで、奴隷じゃ無くなった…だから食べて良い…? な、なんで…なんでこんな事…わ、私は、奴隷として…売られて… ずっとお前には奴隷がお似合いだって言われ続けてっ… それなのに…貴方は、私を… ……本当に、良いん…ですか…?私が…食べても…… いただき、ます……あむっ もぐ、もぐ…ごくんっ… 美味しい…です… …あむっ……もぐもぐ…ごくんっ… 美味しい…です…ぐすっ す、すみません…な、何故か涙が… 美味しいです…美味しいです…ぐすっ… 美味しくて…ぐすっ、温かくて… その、上手く言えないのですが…うぅっ… シチュ―だけじゃなくて… 胸の奥が…ポカポカとして…う、うぅ…っ ごめんなさい…っ、ごめんなさいっ…ぐすっ… 美味しいですっ…凄く、美味しい…ですぅ…うっ、うぅ…っ あの…先程はお恥ずかしい所を…すみません…… はい、凄く美味しかったです… 今まで食べた物の中で、1番… … あの…私の首輪…もう、壊れているんですよね…? あっ…綺麗に割れてますね… 私、本当に奴隷じゃなくなったんだ… なんだか、実感がわきません… で、でも…これから私はどうしたら… 奴隷として売られたのに…奴隷じゃ無くなって…… え?どうして奴隷に…ですか? えっと…私、奴隷商人に売られたんです… ええ、実の家族に、です… 私には兄と姉がいたのですが、 その2人と比べて私はかなり出来が悪くて… 物心ついた時から、お前は出来損ないだ、お前は家族じゃないって言われていました… それでもある程度大きくなるまでは家に住まわせてくれて… でも、本当にただ住まわせてくれるだけ…食事はほとんど出ませんでしたし、 奴隷の時とあまり変わらなかったと思います… それで、ある日奴隷商人が来て、私は売られたんです… 名前…ですか?私に名前はありません… 産まれた時から家族じゃなかったので、 名前を呼ぶ必要なんて無いと思われていたんでしょうね… だから…貴方が私を奴隷から解放してくれても、 ふふふ…、私には行く所なんてありませんでしたね… ここまでしてくれたのに…申し訳ありません…… … ……ぇ?今なんと…? スピネ…? それは、どういう…… 私の、名前…?スピネ…が私の…名前…? あのっ、何故私に名前を… 私が、普通の人間として生きていけるまで、ここに居て良い…? なん、で…なんでそこまで… 住む所だけでは無く、名前まで… も、もう私はあなたの奴隷ですらないんですよっ… それなのにっ…! ひ、一目惚れっ…!? あ、あの…貴方は…いったい何を… 冗談はやめて下さい…っ えっ、い、いや… ……嫌では、ないです… むしろ、その…嬉しい、です。 今までそんな風に言われた事、なかったので… それに…名前を付けてもらった事も… スピネ、スピネ… これが私の…名前……ふふっ。 失礼します……あの、少しお話したいことが…よろしいでしょうか? えっと… 私、このままでは良くないと思うんです… いえ、この家から出たいと言うわけでは無く、 このまま何もせず、貴方のお世話になり続けるのは良くないって思いまして… その、貴方に恩返しをしたいんです… それでですね…この本見てください。 はい、メイドです…! 大きなお屋敷には何人もメイドが居て、 お掃除やお手伝いをしているんですよね? だからその… わ、私も、貴方のメイドになりたいですっ! 奴隷から解放してくれた恩返しとして… ううん…それだけではなくっ…! わ、私はっ、貴方のお役に立ちたいんですっ! … ほ、本当ですかっ!ありがとうございますっ! そ、それではさっそく…こ、こほんっ… これからはただのスピネでは無く… メイドのスピネとして…よろしくお願いしますっ えっと…ご、ご主人様♡ なーんて、えへへっ…