「退廃の繭」をご購入&お聴きいただき、誠にありがとうございます! シナリオ担当の毛ガニです。  本作「退廃の繭」を作ろうとしたのは、ちゃんとえっちぃシチュエーションボイスを作るかと思い立ったのがきっかけでした。  それで、「エロって言ったらデカダンスの文学だよなぁ!」という文学脳で退廃的な作品を作ろうと決めたわけです。  DLsiteのジャンルタグには、「退廃/背徳/インモラル」というタグがあります。このタグが付けられた作品数も多く、「ボイス・ASMR」だけでも3720個(あとがき執筆時点)もあります。  ただ僕には、退廃というかデカダンスには、確かに背徳やインモラルな要素も含まれるものの、それだけでは表せないものが含まれているように感じられます。実際、「退廃/背徳/インモラル」のタグが付いた作品を見ても、「うん、実にインモラルですね!」とは思いますが、デカダンスの香りを感じるかと問われると、ほとんどの作品からは感じないと答えざるをえません。  僕はデカダンスとは、持てる者が埋められない心の隙間を埋めようと享楽に手を伸ばして堕ちていくさまに暗い美意識を重ねた、そんな退廃の芸術なのだと思います。  お金もある、地位もある、そんな持てる者の心の底にも満たされないものがわだかまっている。お金も地位もあるからこそ、その空虚感を埋められない事にうすうす気づいてしまっている。だから、持たざる者がするよりも一層の深刻さで、溺れる者がワラにもすがるように享楽に手を伸ばしてしまう。それで、一時は空虚をまぎらわせても、終わってしまえばまた空虚が、それもより重く現実にのしかかってくるような空虚に襲われ、それをまぎらわすために更なる享楽を求めてしまう。そういう人間の弱さや暗いエロスの表現が、デカダンスの要素だと思うのです。  さて、創作には商売の面と芸術の面があると思っています。両立できるのが望ましいでしょうが、両立には流行りが自分のやりたい事と合っているかなどの問題もあり、なかなか難しいのが現実でしょう。両立が難しい場合はどちらを取るかで作家としてのスタンスが変わってくるのだと思います。  それで、「創作で食べているプロじゃないんだから、芸術に極振りしてやれ」とやってしまったのが本作です。こういう決断ができるのが同人活動の良さだと思います。赤字は勘弁して欲しいですけどね。  というわけで、デカダンスの要素とは何かを考え、その美学を詰め込んだつもりです。興味が無かった方にもデカダンスの魅力が伝わる作品になっていたようでしたら幸いです。  あれ? えっちぃシチュエーションボイスを作ろうと思い立ったのは、知名度向上と同人活動の資金集めのためだったはずでは……。まあ、自分が納得できる作品を作れたんだからそれでよし! それが同人ってもんよ!  本サークルでは、他のジャンル等でも似たような事をやっております(だから、毎回シナリオ大変なんだよなぁ)。本作でデカダンスに魅力を見いだせたという方がいましたら、試しに他の作品の体験版だけでも聴いていただけましたら幸いです。そして、未知なるジャンルに魅力を見出すきっかけになれたら嬉しいです。  声優は、逢坂成美様。  実はちょうどシナリオの推敲を繰り返して完成が見えてきた頃、逢坂様が体調を崩されて活動休止されてしまいました。ですので、他の声優様を探してみたのですが、逢坂様の声をイメージして書いていましたし、せっかく苦労して書き上げた台本ですのでやはりベストな作品に仕上げたいと活動再開を待つことにしました。  それで1年近く待っての依頼となってしまいましたが、収録にオンラインで立ち会っていて、やはりその判断は間違っていなかったと思い知らされました。台本や打ち合わせから繭ちゃんのキャラクターを深く理解して実にデカダンスな魅力を表現していただけました。そんな風に台本をちゃんと理解して演じてくれるのはシナリオライターの喜びです。フリートークを聴いた時には、涙腺が緩みかけました。皆様にも、繭ちゃんの言外の甘えを感じていただけましたらシナリオ担当としても嬉しいです!  イラストは、aio様。  初めはDLsiteの男性向け売り場でデカダンスなイラストを描ける方を探していたのですが、どうも違うなーっと。どこかでピッタリなイラストを見た気がするんだけどなー、あっ、女性向けの方が耽美な感じだし女性向け売り場では? と女性向け売り場を開いてみたところ、ひと目で「コレだ!」となりました。  未成年だけど大人びていて、でも押さえつけられて行き場を失っていた子どもの無邪気な甘えや残酷さが表情や仕草から感じられるような、そんなアンビバレントなイラストを描いていただけました。  あと、作品を象徴するアイテムとして鈴蘭の花を描いていただきました。散り落ちる花が印象的で、とても繊細な表現ですね。  男性向けのR18のイラストといえば、「デカい!」、「肌色!」というのが定番でしょうが、そういう直接的なのでは表現できない、隠微なエロスがデカダンスのエロスではないでしょうか。そんなエロスを感じていただけましたら幸いです。  ロゴは、ながまき様。  文字のデザインだけで退廃的な雰囲気が伝わってきて、コレが専門家かという凄みを感じさせられました。  特に「繭」の字は滴り落ちるようだったり、「虫」の部分が歪んでいたりはみ出していたりと、ストーリーやキャラクター性も表現されているように感じます。  目に付くというマーケティングの要素が強いロゴではなく、鑑賞に耐えるような芸術性の高いロゴを描いていただけたと思っております。そんなデカダンスが表現されたロゴを、今一度じっくりと鑑賞していただけましたら幸いです。