;1 ;モノローグです。軽めのエコーを ;試聴版では飛ばしてください 「子供が親に恋をする。珍しい話じゃないと思う。例えば男の子の最初の恋愛対象は母親、もしくは幼い頃お世話してくれた女の人……保育園の先生や親戚のお姉さんだったり。そういうのが多いって聞く。じゃあ、女の子は? 女の子だとそうじゃなくてみんな同年代が好きになるんだろうか? ……そんな事ない。女の子だって似たような物、優しくしてくれる人を好きになる」 「つまりまぁ、何が言いたいかっていうとあたしがパパを好きなのは何一つおかしくないと声を大にして言いたいのだ。実際、思い返せば小学校中学校の時の恋話では同級生よりも年上の大人の男っていう方が人気があったし、若くて独身の男の先生がモテてるのだって何度も見てる。つまり、年上、しっかりしてる、優しい、と三つ兼ね備えてるパパが大好きなのは当然なのだ」 「……まぁ、見た目はおじさんだ。それはあたしも認める。パパは特別カッコイイ訳じゃない。会社でエライ人って訳でもない。きっと周りから見れば冴えないおじさんなんだろう。でも、あたしの事を真剣に考えてくれて、優しくしてくれて、大概の事はしょうがない奴だ、と笑って許してくれる……もちろん、悪い事やわざと失敗したらすごく怒られる」 「友達はそうやって親に怒られるとウザイとか言う子もいる。気持ちはちょっと判る。学校の先生とかでも何でそれをしちゃいけないのか、っていうのを言わないでダメだからダメとしか言わない先生もいる。そういう先生はやっぱりウザイ、訳わかんないって嫌われる……うちのパパは違う。ちゃんとなんでダメで、どうしてやっちゃいけないの教えてくれる」 「たまにだけど、それが違うと思ったらあたしも自分の考えをぶちまける。そしたらパパは真剣に話を聞いてくれて、あたしの言う事を理解しようとしてくれる。実際、それでパパが折れた事だって何度もある。それをママは甘やかして、っていうけど違う。パパは真剣にあたしの話を聞いて、ちゃんと考えて、それなら良いよと納得してくれてるだけなのに」 「周囲からはファザコンだって言われる。そうだと自分でも思う。でも、パパは適当な言葉で良いよ良いよっていう訳じゃない、ちゃんとあたしを見てくれてる。そう思えるから、好きなのだ……と言っても、実の娘と父親。ママだって元気いっぱいだ。そうなれば特別な関係なんて無理だろうな、って思ってた……そう、パパが単身赴任が決まるまでは」 ;3秒程度間