ダメ。まだ待って。もう少し引き付けてからだよ。 あのモンスターはね。あなたの事、取るに足らないと思ってる。 すぐに倒せるって見くびってる。 でも、それが狙い。 弱そうに見える事。それが今のあなたの武器なの。 だって本当は違うんだから。 絶対に目的を果たしたいなら『私何もわかってません』って態度で、油断させて。 それから焦らずに相手をよく見る事。 そして、相手が隙を見せたら……。 一撃食らわせてあげるの。 よし。今。撃って。 もう一発。 仕留めて! やったね! 先生として誇らしいよ。 もう。まだそんな事言ってるの? これはあなたの力。あなたが倒したんだよ。 本当によく頑張ったね。 ふう。じゃあ解体始めようか。 とはいっても、こいつの肉は食べられたものじゃないから。 高値で売れる毛皮と爪は回収して。 他のパーツは持てる分だけ持って、終わりにしよう。 じゃあ、お姉さんはそこでちょっと休むね。終わったら教えて。 ううん? 元気だよ。 ただ、緊張の糸が切れたっていうか……。 本当に、平気平気! そうだ。この前のお誘い、どうするか決めた? いい話じゃない。あんな強い人が仲間になってくれるなんて。 どうして? 一人で頑張るのも、そろそろ限界でしょう。 あなたも強くなったし『足を引っ張るかも』なんて心配する事ない。 これからのためにも、誰かと組んだ方がいいよ。 でも、こんなチャンスもうないかもしれないよ。 あ、終わった? うん! すごく綺麗に処理できたね。えらいえらい。 じゃあ、街に戻ろうか。 そうだ。頑張った勇者ちゃんにはご褒美をあげなくちゃね。 何がいい? 装備でもマジックアイテムでも、何でも用意するから。 うん? どうかした? へっ⁉ あ、あ。急に何を言うの? だから他の仲間は作らないし、それを言うために今日頑張ったって事? それは、その。 二か月前のあの日、あなたを助けたのが私だからそう思うだけだよ。 あなたはまだ世界を全然知らなくて。仲間も私だけで。 つまり今一番近くにいるのが私だから、特別に見えるだけだよ。 それにあなた、私の事何も知らないでしょう。 もし私が悪の手先だったら、どうするつもり? あのね。簡単に言わないで。それでもよくなんかないよ? 私『ちゃんと相手をよく見てから行動しろ』って今教えたよね? もう。全然人の言う事聞かないんだから。 わかったよ。あなたの気持ちはわかった。 好きって言ってもらえて嬉しい。 でも私は……。 そう……よかった。 へっ⁉ それは言った。ご褒美あげるって。でも、そんなの……。 何それ……。 これ、機械人形の身体だよ。 本当の私はずっと遠くにいるから、あんま意味ないよ。 いいの? それでも。 キス、したいの? 勇者ちゃんはバカだね。 でも。 ちゅっ。 ちゅっ……ちゅ。 あたしもバカだね……。 ちゅっ。 好きだよ……。あたしも、あなたが大好き。