結菜「失礼します」 先生「あ、結菜(ゆな)ちゃん。お疲れ様」 結「お疲れ様です、今から保健委員の仕事… と言ってもお留守番くらいですが、入りますね」 先「うん! 結菜ちゃんが放課後居てくれるから残業しなくて助かるよー!」 先「いつも通り、擦り傷程度なら消毒治療。 体調不良は熱を測って場合によっては内線で呼んでね」 結「はい、先生は気にせず職員室での業務に行ってください」 先「ありがとー!結菜ちゃん本当に良い子だねー! あ、それからそこのベッドに貧血で倒れた子が来てるから、時々様子を見てあげて? 名前は名簿にあるから…それじゃよろしく!」 結「行ってらっしゃーい…。ふう、さて名簿は…っと。 …っ!?…ふーん♪」 結「失礼します。カーテン、開けますね」 結「はじめまして、先輩。保健委員の結菜です、体調はどうですか?」 結「…大丈夫、ではなさそうですね。 帰る途中で倒れたら大変なので、もう少し休んでください」 結「ほら、横になって…お布団掛けてあげますから」 結「どうしたんですか、そんな顔をして。もしかして、さっきまで寝てて眠くない… とかでしょうか?それとも、緊張されてますか?」 結「ふふ、うーん。そうですねー… 十分な休息を取っていただけないのは保健委員として見過ごせません」 結「緊張されてるならリラックスしてもらうのが一番。…ですので、こういうのはどうでしょう?」 結「…アルコールジェルです。 手の消毒に使う物でヒンヤリ、スーっとして気持ちが良いんですよ」 結「ほら、左手を出してください。 んん…っ、手のひらの上に二回プッシュしてっと、失礼しますね」 結「…ふふ、どうかしましたか?」 結「ああ、これですか?ハンドマッサージです。 程よい刺激で血行を良くしてリラックスできるように誘導します」 結「んん…ふぅ…」 結「んっ…はぁ…」 結「手を揉んだり擦ったり…もしかして初めてですか?」 結「ちょっと力が入ってますよ?ちゃんと脱力して目を閉じてください」 結「んっ…ふぅ…」 結「そう、ちゃんと休むのが今の先輩には必要ですからね」 結「ああ、そうだ…先輩、深呼吸をしてください」 結「自分の楽な感覚で吸って吐く、それだけで大丈夫です。 酸素を体中に送るような感覚って言えばわかりますか?」 結「吸って…吐いて…。 すぅーー…はぁーーー… ふふ、上手です」 結「んん…ふぅ」 結「はぁ…ん、ふぅ…ぁ」 結「それに手のマッサージの合わせ技で…血流を良くして、貧血の症状緩和に繋げます」 結「眩暈や倦怠感…疲れやすさも含めて、貧血の症状はマッサージで血管を広げて血中の酸素を隅々まで送ることで…ある程度ですが改善されます」 結「んぁ…はぁ」 結「ふぅ…んん」 結「手には細い血管が多いので想像以上の効果を発揮してくれますよ」 結「とはいっても、あくまである程度です。根本(こんぽん)は運動不足やビタミン不足、鉄分の不足による症状が基本ですから、生活の見直しから心掛けてください」 結「んん…っ、ぅん」 結「はぁ…ん…はぁ」 結「…よしっと。乾きやすいジェルなのでべたつきはないと思いますが、気になるなら… どうぞ、私のハンカチです」 結「それでは、逆の手をやります。ベッドの逆側に移動しますね」 結「顔色、すこし良くなったかも…嬉しいです」 結「え?あぁ…その、保健委員として役に立てて嬉しいってことです」 結「い、いいですから!早く手のひらを出してください」 結「んん…ふぅ」 結「はぁ…ん…ぅ、ん…」 結「んっ…ん、はぁ…」 結「スリスリ…すり、すり…揉み、揉み――」 里緒奈「失礼しまーす!あ、いたいた!」 結「ひゃぁ!?あの、保健室ではお静かに…」 里「あ、ごめんねー。あーしの連れを迎えに…って、ななな、なにしてるの!?」 結「なにって、その…保健委員のお仕事です。貧血で倒れた先輩の治療…を」 里「ふーん…そ、そうなんだ。マッサージ、かな?それ効くの?」 結「効果はあると思いますよ、先輩の顔色も良くなっていってますから…えーっと」 里「あ、里緒奈だよ。コイツの…あー、クラスメイト」 結「結菜です。保健委員で、先生に先輩の様子を見るように言われています」 里「ん、よろしく。それで、大丈夫なの? 盛大にぶっ倒れたって聞いたけど体、痛かったりしない?」 里「…そっか、良かった。結菜ちゃん、あーしにできる事とかある? こっちの手をマッサージしたりとかさ」 結「あ…そっちの手はもうやっちゃいましたから、やりすぎは良くないです。 私に任せてください」 里「う…でもあーしも何かしてあげたいし…そうだ!」 結「里緒奈先輩…?な、なにをしてるんですか?」 里「んん…はぁ…」 里「んっ…ぅん」 里「なにって、耳のマッサージ♪ こういうの好きな奴だからさ、結菜ちゃんは手のマッサージよろしくね」 結「…わかりました」 里「んん…っ」 里「んー…はぁ、んっ…ふぅ」 里「…それにしても、結菜ちゃんマッサージ上手だね」 結「え、そうですか?」 里「コイツの顔見てたらわかるよー、ほけーっとした蕩けた顔しちゃってさ …コツとかあるの?」 結「んっ…ふぅ」 結「あんまり強く揉まずに、筋肉をくーっと伸ばすような感じですね。 指は骨を感じやすいので優しく撫でるように…って感じです」 里「へぇー…慣れた手つき…家族にやってあげてるとか?」 結「う…まあ、そんな感じです。それよりも里緒奈先輩の手つきも慣れてますね」 里「んん…はぁ…」 里「んっ…ぅん、ふぅ…」 里「まあね♪ピアス弄るために耳触ったりとかしててさ、なんとなーく暇つぶしにマッサージしてたりとかしてたら慣れたんだよね。結菜ちゃんにも後でしてあげよっか?」 結「わ、私は遠慮しておきます…あんまり耳を触られるのは好きではないので」 里「んん…っ。ふぅ…はぁ」 里「んー…ふっ、ぅん…んん」 里「そう?残念ー、結菜ちゃん可愛いから触りたかったなー。はい、おしまい」 結「私はもうすこしだけ――」 里「ああぁあ!?」 結「なっ…!い、いきなりどうしたんですか!?」 里「教室に忘れ物!取りに戻らなきゃ!結菜ちゃん、そいつよろしくね!」 結「…行っちゃいました、忙しい人ですね」 結「…良い所もある…。まあそうですね、里緒奈先輩。悪い人ではなさそうでした」 結「それにしても、あんまり接点がなさそうなんですけど、先輩方はどういう関係なんですか?」 結「ただのクラスメイトが心配でお見舞いなんて、同性ならともかく普通来ますかね?」 結「…ふふ、冗談です。詮索はやめておきます」 結「んん…ふぅ」 結「んん…はぁ…んっ」 結「はい、ハンドマッサージ終了です」 結「ところで、里緒奈先輩が耳を触ってる時…すごく気持ち良さそうでしたね」 結「…やっぱりいつも通り、こういうのが好きなんだ♪」 結「んん…はぁ」 結「隠さなくてもいいですよ、こうやってシーツが擦れる音も…好きですよね?」 結「私知ってるんです。ASMR…生配信、ユウナ、ピンときません?」 結「…気づきました?いつも配信見に来てくれてありがとうございます。せ・ん・ぱ・い♪」 結「コメントくれますし、ファンレターで先輩の事は特定できちゃったんです。 世間って狭いですよね、私もリスナーが近くに住んでるとは思いませんでした…」 結「あの…連絡先とか教えてくれませんか?配信の前にメッセージ送りますから」 結「ふふ、嬉しいです。今日も絶対…ユウナの配信、見に来てくださいね?」