終業式が終わり、春休みとなった。  鬱陶しい連中の巣窟たる学校から離れられるのは嬉しいが、その代わり、姫宮さんと会える時間も減ってしまった。各教科の課題も少ないので、無趣味な僕にとっては苦痛な時間が続いている。只々、ぼうっと春空を仰ぎ、心地良い風に吹かれて、約束の時間を待つ。  元々、空っぽの人間であったはずなのに。  ……余計な温もりを知ってしまったせいだ。  本心を言えば、朝から晩まで彼女を拘束したい。  まずはお目覚めのキスをしてもらい、栄養満点の朝食を作ってほしい。昼は二人きりで、欠伸をしながらまったりと過ごしたい。日が暮れたら、豪華なディナーを用意してもらいたい。一緒にお風呂に入ってイチャイチャしたい。火照ったままの身体で同じ布団に入り、寝衣越しに互いの性感帯を擽りあって、一つになりたい。  姫宮小春と──結ばれ、たい──。  僕は、僕の理想をカタチにする力を有している。  だが、それを実行したら、誰かが異変に気付く。  そうしたら瞬く間に崩壊が始まるだろう。  僕の手には何も残らず、また孤独に逆戻りだ。  そんなのは絶対に嫌だ。  だから、いつもと同じように週に三日だけ、ピアノのレッスンと偽らせて僕の家に来させている。聡明であろう姫宮家の家族にも、沢山の友人知人にも怪しまれない範囲内で、『姫宮小春』を貪り尽くす。前進もせず後退もせず、『偽物の今』を享受し続けるのである。 (…………)  そんな僕にも、一つ気がかりな点があった。  それは、姫宮さんとあの男の『関係』についてで──。  ────ピン、ポ──ン。  チャイムの音で、ハッと我に返る。  時計の針は、約束の時間を指していた。  小走りで玄関に向かい、すぐさま鍵を開ける。  いつもと同じ時間。  幻想的な光が降る夕暮れ時。  姫宮さんは、フリル付きの純白ワンピに身を包んでいた。  玄関に入り、清楚に一礼。桃色のラインが入ったスポーティなスニーカーを脱ぎ、きちんと揃える。短く息を吐いてから立ち上がって、高貴な微笑みを浮かべる。他の景色など無視して、僕だけを見詰めてくれる。その瞳には、やはり、催眠の証拠たるハートマークがきっちりと刻み込まれていて──歪んだ興奮と自己嫌悪が混ざり、性欲が漲っていく。 「いらっしゃい。姫宮さん」  小さな肩をぎゅっと掴み、耳元で囁く。 「今日も沢山ご奉仕してもらうからね」  『大好きなご主人様の逞しい声音』に。  姫宮さんは、ぞくぞく♡と背筋を震わせた。 「……んっ……♡ は、はい──……♡」  そして、彼女に紙袋を手渡した。  その中身を覗いた姫宮さんは、すぐに頬を赤らめる。  僕が用意した『新たな衣装』に羞恥を覚えたのだろう。   最高の反応だった。一秒でも早く着せてやりたい。  そう思いながら、彼女をお風呂場へと連行する──。    ◇   ◇   ◇  浴槽から湯気が漂っていた。それにより浴室全体が温められているお陰で、裸体であっても寒さは感じない。あえて換気扇が回されていないのも、その為である。  僕は湯船には浸からず、突っ立って待機していた。  眼下では、姫宮さんがいそいそとご奉仕の準備を進めている。まずは、それほど広くはない洗い場に、銀色のマットを敷いて──シャワーでお湯をかける。次に、風呂桶で浴槽の湯を掬ってから、ローションをぶりゅぶりゅと注ぎ、細い指先で素早く掻き混ぜる。くる。くるり。そうして完成した潤滑油を、マットへと垂らし、隅々まで塗り広げていく──。 「お待たせしました、ご主人様……♡」  マットを布団だとしたら、ちょうど枕の位置にタオルを置いて、そこに頭を乗せて寝そべるよう促してきた。風俗嬢さながらの丁重な作法に、思わず見惚れてしまう。  『新たな衣装』を着たその姿も、非常に扇情的。   極端に布面積が小さな水着、俗に言うマイクロビキニ。その黒の布地は、乳首を隠すだけで精一杯だ。少しでも誰かに悪戯をされてしまえば、すぐに桜色の突起が露わになるだろう。そこが見えているのといないのでは、年齢区分が変わる禁断領域。ビキニパンツについても同様で、割れ目のみを覆っている状態。まあるい丘や鼠径部は丸見えで、下手な全裸よりも断然卑猥だった。下品な表現を用いるのであれば、ドスケベ専用の黒マイクロビキニ。それを、真面目で実直な優等生、姫宮小春が着ているという事実に、心臓が高鳴る。  肉欲に唆され、呼吸が乱れてしまう。  そのまま僕は、うつ伏せで横たわった。  すると、すぐに姫宮さんが身体を重ねてきた。  いつの間にか、彼女の肢体もローションに塗れていたらしい。  むっちゅ♡と粘ついた水音と共に、一ミリの隙間もなく密着された。ただ覆い被さられているだけなのに、何たる幸福感だろうか。姫宮小春の柔肌に絡みつかれ、優しい体温に浸蝕されていく。忽ち、陰茎が勃起してしまう──。 「んっ……♡ はぁ……♡ んしょ……♡  ふふ♡ 私の身体をスポンジ代わりにして……♡  ご主人様を綺麗にさせて頂きますので……っ……♡   痒いところなどがあれば仰ってくださいね……♡  あ……♡ えっと、その……♡ 胸が当たってしまっていると思うのですが……♡ どうか、ご容赦くださいませ……♡ ご主人様っ……♡♡」   胸の接触は不本意であるとでも言いたげだが、その実は真逆。寧ろ、『ローション塗れのぬるぬるおっぱい』を密着させる事を軸に、マットプレイを展開している。  普段はブレザーで隠されている姫宮小春の乳房。  手の平に収まる程良い膨らみと弾力。そして乳首。それらを存分に用いて、僕の肉体の疲労を癒してくれていた。同年代の女子と比べても小柄な姫宮さんが、一生懸命に身体を動かして、儚く繊細な身体を擦り付けてくれている。  ぬるぬるっ♡ぬっちゅぅぅ♡みちゅっ♡たぷちゅ♡  ぬっちゅ♡ぬっちゅ♡む゛っ、ちゅぅぅっ……♡♡  生まれも育ちも違う。  能力や性格にも歴然たる差がある。  本来、交わってはいけないはずの、僕と姫宮さんの肌。  『運命の相手』の対極、御伽噺なら同じ物語にいてはならぬ存在。白馬に乗った王子様と幸せに結ばれるべきお姫様を──狡猾な浮浪者が盗んでしまっている。許されざる状況だからこそ、背徳感が得られる。このままじゃいけない。けど、このままでいたい。この歳になっても幼稚な子供のまま、一切成長できていない僕は、マットの上で寝返りをうち、仰向けとなった。そして、陰茎へのぬるぬるご奉仕を要求する。 「お身体を洗っているだけなのに、おっきくしちゃったんですね……♡ ご主人様のえっち……♡ 仕方ありませんので、こちらにもお胸を擦り付けてあげますね……?♡」  僕の両脚の間に入り込み、陰茎に乳肉を当ててきた。  もちっ♡とした柔らかな感触に、甘い快楽が広がる。  姫宮さんが肩を左右に揺する。すると、胸の谷間へと竿が呑み込まれた。雑誌で見かけるグラビアアイドルのような豊満さはない。だが、年頃の少女としては十分なボリューム。  目を閉じ歯を食い縛るが、鋭い快楽に翻弄される。  すべる。こすられる。締め付けられる。  ソープ嬢に堕ちた元お姫様による、ぬめぬめパイズリ。手コキやフェラに比べるとまだ未熟であるが、それでも僕を想って懸命に尽くそうとする姿勢に、精液がぐつぐつと煮立つ。 「たぷたぷ……♡ むっちゅ~っ……♡  ふふ♡ 私のおっぱい、気持ち良いですか?♡  ほら♡ 柔らか~いぱい肉が……♡ むにむに~って、雄々しいちんぽに纏わりついてますよ……♡ そんなに大きくないですけど、きちんと挟めますから……♡♡」  王様のように寝そべる僕は、まさに夢見心地だった。  目を閉じれば、学校での姫宮小春の姿が浮かんでくる。  穢れとは無縁な清楚の権化。高嶺の花でありながら、分け隔てない対応で人気を集める、庶民派のお姫様。艶めいた黒髪が靡けば甘い風が舞い、何か言葉を発すればその優しい声音に皆が酔いしれる。将来はきっと、秀でた能力を持った、眉目秀麗な男と結婚するのだろう。そんな漠然とした予感を抱かせるほどに、姫宮小春の容姿は完璧に整っているのだ。  むっにゅ♡むにゅたぷ♡むにゅち♡にゅっる♡  むっちゅ……♡むっぢゅっ♡たぱっ♡たぱっ♡  あの姫宮さんによる、甲斐甲斐しいパイズリご奉仕。  ローションを介した密着が齎すのは、驚異的な一体感。  心の奥底まで、溶け合っている感覚があった。  肉体と精神、両方の充足感。  そのせいで、一瞬、気が緩んでしまった。  ずっと気になっていた事。  姫宮さんに尋ねたいと思っていた事。  胸に残留していた疑問を、口にしてしまう。 「……なあ、姫宮さん……っ。  前に言ってた、彼氏の鈴木陸斗、とは……。  もう──……肉体関係を、持った、のか……」  そんなの、訊くべきでないのに。  知らないほうが、幸せに決まってるのに。  後悔する。自己嫌悪が膨らむ。頭が熱くなる。  流石の『催眠アプリ』でも、時間は戻せない。  絶対的なご主人様たる、僕からの質問だ。  当然、姫宮さんは、従順に答えてくれる──。 「……っ……。隠し事は、いけませんよね……♡」  姫宮さんが──ぬっ♡ちゃあ♡と身を引いた。  ぱんぱんの陰茎と乳肉の間で、粘液の糸が結ばれる。  そして、どこからともなく小さな袋を取り出した。  …………コンドーム、だ。  封をぺりっと破り、緑色のゴムを摘まむ。  それを口に咥えて、身を屈めていき──。  ──くぽぽぽぽぽっ……♡ぶっ♡ぽっ♡  陰茎をしゃぶりながらの、コンドーム装着。  その後すぐに、こてん、と横になった。  先程まで僕がいた場所に寝そべっている。  一呼吸、間をおいて。  彼女──黒のマイクロビキニ姿の姫宮小春が──かぱっ、とM字に開脚した。続けざまに、ビキニパンツをズラし、膣口を露出する。愛蜜でべっとりと濡れた陰唇が、くっぱくっぱと開閉していた。朱色の淫肉が重なり、離れ、重なり、離れ──を繰り返し、膣全体を湿らせながら『ご主人様のちんぽ』を待ち侘びている。あからさまな、ハメ媚びであった。 「……去年の12月24日、クリスマスイブに二人で夜景を見に行きました。その帰りの電車で、まだ二人で一緒にいたいね、って話になって……。途中の駅で降りて、あてもなく道を彷徨っていたら……そ、そういう事をするホテルが目についたんです。二人共、いけない事だって分かってたんですけど……結局、入っちゃって……気が付いた時には身体が熱くなってました……。彼も……同じ、だったみたいで……だから、そ、の……♡」  僕は、自身の股間を見下ろした。  愛おしい人との性行為とは違う──『性処理』。  それを明確に区別する為の──『コンドーム』。  嫉妬のせいで苛立つ陰茎を、膣口に当てる。  挿入間際。また不要な質問をしてしまった。  僕と同じように、彼にもゴムをつけたのか、と。 「そ、れは…………っ……♡」  ──は……?答えろよ。答えろって。  嫉妬に燃えながら、姫宮さんの太腿を握り潰す。  そのまま更に横に広げ、強引に挿入しようとした瞬間。  ぐ。ぐっ。ぐぐぐっ。ぐ~~~っ……ぐ~~っ。  彼女の両脚から、妙な『力み』が感じられた。  冷や汗が垂れる。  慌てて、彼女の瞳の色を確認すると──。 (ちっ。くそっ。またかよっ──)  淫靡なピンクから、無機質な黒へと変わっていく。  花が萎れていくような……虚無感があった。 「……はっ……はっ……は……っ……。  お願い……も……ぅ……ヤメ、て…………」  このまま放置していれば。  すぐに本来の意識を取り戻してしまう。  そうなる前に──と、スマホを掴んだ。  ローションで濡れた指で、画面に触れる。  『催眠アプリ』を────唸らせる。 「僕の言う事を聞けっ! 力を抜けっ!」  ”ぎぃぃイぃい──ン♡ぎィィィ────ンッ♡” 「ん゛っ♡ あ゛ッ♡ あ゛ぁぁあ゛っ……♡  い゛っや♡ や゛めってっ♡ れいぷ♡ や゛っ♡♡  お願ッ……い゛っ……♡たしゅけっ、てぇ……!?♡」 「はぁっ……? レイプじゃねぇよっ……!  僕と姫宮さんのラブラブSEXだろうがっ……!」  ”ぎィ──────ンッ♡♡ぎぎッ♡ぎぎィ──♡♡” 「う゛っ……♡ お゛っ♡ お゛おぉぉ~っ……?♡」 「ほらさっさと股開けっ! まんこヤらせろっ!  あの男とのショボいセックスについて教えろっ!  僕のちんぽで……上書きしてやるからっ……!」  ”ぎっ♡ぎっ♡ぎッぎッぎッ♡ぎぎィ──ンン♡♡♡! 「ッ゛ぁ♡ ッ゛っっ!♡ ん゛ひゅ♡ うっきゅ♡」  ぎィ──────ン────……♡♡♡♡♡ 「あぇ……ふぇぁぁ……♡♡あ゛ぁぁぁ……♡♡」 「は──ッ、は──ッ、は……はははッ……♪」  姫宮さんは、完全に脱力していた。  無気力な両脚をぐいっと広げ、再度、亀頭を宛がう。  念の為、彼女の顔を見る。  瞳は、ぎらぎらの、ピンク色だった。  あぁ────これなら大丈夫────。  僕は、ニヤリと嗤い、腰に力を込めた。  血管の浮き出た竿を、彼女のナカに捻じ込む。  少しずつ、少しずつ。最後は、一気に──。  ぬぷぷぷぷぷ~っ……♡み゛っ♡ぢゅん゛っ♡♡  僕の腰が、姫宮さんと、ぴったりとくっついた。  薄い膜を通じて、膣肉の蠕動が伝わってくる。  生温かい粒々が絡みついてくる。締め付けてくる。  姫宮小春と一体化している事実に、恍惚とする。 「おっ……ほ……。姫宮さんの中、やっぱりすっげっ……。こんなに可愛くて、優しくて、黒髪も綺麗で……お肌もぷにっぷにで真っ白な、美少女、なのに……っ。おまんこまで、クッソ最高の名器だなんて……っ。う、ぁ……ヤバ……うねうねって動きすぎ……っ」  心を抑える余裕がなくなり、思った事がそのまま口に出てしまう。まあ問題ない。理想の世界においては、僕の我儘はすべて受容される。拒絶や嫌悪は絶対に発生しない。誰にも邪魔されずに、また競争の必要もなく、時間をかけて姫宮さんを味わえるのだ。  腰を軽く引き、ゆっくりと押し出す。  彼女の内側を耕し、ほぐしていく。  天然のローションで濡れた膣内は、優しい温もりに包まれていた。それでいて、締まりも良くて非常に窮屈。僕なんかにはもったいない極上名器だ。ならば、誰が適格者なのか。そう考えた矢先、無視していたはずの黒い感情がぶわっと漏れ出し、全身が汗ばむ。  それでもめげずに、僕は腰を振った。  ……ぱんっ♡ぱんっ♡ぱんっ♡ぱんっ♡  黒髪がふわりと浮く。堕ちた瞳が煌く。  そんな、深い催眠状態にある姫宮さんが──。  『イブの思い出』を、語り直していく──。 「デート中はずっとりーくんがリードしてくれて……美味しいご飯を食べて、二人で楽しくお喋りをして……っ♡ 夜景を見ながら、プレゼント交換をしました……っ♡ ホテルに着いてからも、りーくんは落ち着いてて……♡ 緊張する私に、そっとキスをしてくれたんです……♡ あとは……その日のためにお母さんと選んだ洋服の上から……胸、をっ……揉まれて……抱き締められて……♡ ん゛っ♡ あ゛ぁ……♡ 顔を合わせて、照れちゃうね、って笑いあいました……♡ そ、れで……そ、の……え、っ……と……っ♡」  絵に描いたような、恋人同士のイブの一時。  僕が願う理想を、『あの男』に奪われたような気分。  ばりばり。脆い皮が剥け、心が剥き出しになっていく。  ぢくぢく。鈍い痛みが走り、内側から崩壊してしまう。  嫌だ。聞きたくない。壊れたくない。  しかし僕は、姫宮さんの口を塞げなかった。  寧ろ、そのヌメヌメの肉体にしがみついて──。  彼女の唇に、そっ、と耳を寄せてしまった──。 「りーくんと……初めてのエッチ、しちゃいました……♡♡」  息が、詰まり、胸が、張り裂け、頭が、沸騰した。  最も恐れていた情報に、吃驚し、精神が壊れていく。  姫宮さんの肩を掴んだ。睨んだ。クソ。クソが。どうして僕じゃなくてアイツなんだよ。何でだよ。答えろよ。涎をボタボタと垂らしながら、叫ぶ。僕の幼稚な腰使いによって、軽やかに弾む小さな胸。更なる発育の兆しを感じさせ、色気をまとい始めていたのも、たぶん、アイツと結ばれたからだ。姫宮さんの処女だって、本当は僕が奪っているのに。でも、『本物』は、真に愛おしい人との『性行為』は、陳腐な『性処理』を上回る。勝てない。勝てない。やだ。やだやだ。僕のものにしたい。僕だけのものにしたい。僕の、僕の僕の僕の──! 「んっ♡ やぁっ♡ ご主人様、どうしたんですか♡  もしかして……りーくんに嫉妬されているんですか?♡  ふふっ……♡ ご安心ください……♡ 例えりーくんとの恋が実り、結婚に至ったとしても、ご主人様への敬慕が薄れる事はありません……♡ 一生この身を尽くしてご奉仕させて頂きます……♡ なので、そんな悲しいお顔をされないでください……♡  ──っ♡ あ゛ぁっ♡ ひゃっ♡ あ゛んっ♡  えと……はい……♡ りーくんは、私の旦那様になる訳ですから……♡ 毎晩、愛情を込めたご飯も作りますし、一緒にお風呂にも入ると思います……♡ 当然、夫婦の営みも行います……♡ 『性処理』とは違う……子作りセックス……♡ りーくんのおっきな生ちんぽをおまんこに入れてもらって……筋肉質な逞しい腰でぱんぱんしてもらって……♡ お腹の奥に隠した、女の子の秘密の場所……『子宮』に……♡ 精液を注いでもらうんです♡♡♡」  透明な声音で紡がれる未来図が、僕の思考に染みてくる。  僕の意思に反して、勝手に脳がそのイメージを作り出す。  ──パンッ♡パンッ♡パンッ♡パンッ♡♡  姫宮小春が──鈴木陸斗に抱かれている。  純朴な瞳をまっすぐに向け、乙女な表情で喘いでいる。帰宅部の僕とは段違いに男らしい腰が振り落とされ、ぱちゅん、と肉音が鳴る。二人はキスをして、互いの背中に両手を絡め、むぎゅっと抱擁する。一心同体。本物の王子様とお姫様の──繁殖を目的とした交尾。あぁ。僕の心臓に、嫉妬のイバラが食い込む──。 「キ、キスだっ……キスするぞっ……早くっ」  もはや、何を言っても虚しいだけだった。  僕の命令に応じる姫宮さんを見ても、敗北感は拭えない。  目に見えてる景色、何もかもが『偽物』だから。 「はい……♡♡ ご主人様ぁ……♡♡」  それでも僕は『催眠』をやめられない。  だって、どうしたって、本物には手が届かないから。  ……何回同じ事を考えれば気が済むんだよ。  壊れたように嗤ってから、彼女の唇に吸い付いた。  ぶっちゅ♡ぢゅぶるる゛ぅ♡む゛ぢゅっぱっ♡  ぬちゅれるれろれろぉ♡ぶっ、ちゅぅぅっぽ♡  甘ったるい涎を吸い上げて、息継ぎをする。  鬱々とした感情に、絶頂感が混ざり込む。  僕は身体を仰け反らせ、腰を深く密着させた。  『りーくん』より、少しでも奥を犯してやる。  最後の瞬間。霞む目で姫宮さんを眺める。  ご主人様を慈しむ、余裕の滲んだ可憐な笑顔──。 「どうぞ……♡ イってください……♡♡  姫宮小春のメイドまんこに、精液出して……?♡♡」  そんなの、我慢できるはずもなくて──。 「あっあッ……あッ……ヤバ、射精るっ……。  姫宮さんっ、でるよっ、でちゃう、よ……!  うぅ、ぁ──姫宮さんッ、ごめッ、うッあ──」  嫉妬が焦燥感を生み、射精の勢いを増幅させる。  言語化不可能なあらゆる感情が、根こそぎ搾り尽くされる。命すら簒奪されるのではないか。下らない危機感を覚えながら、精液を吐き出していった。凄まじい鼓動。刹那の頭痛。なるべく姫宮さんとくっつきながら、奥の奥めがけて、子種汁をぶちこんでいく……。  ──ぶっぴょ……どっぷ……どぴゅ、びゅ……っ♡♡  発情の熱すら失われた身体は、空虚そのもの。  僕は項垂れながら陰茎を引き抜き、ゴムを外した。 「は──ッ……は──ッ……は──ッ……」  精液溜まりが、ボテッと膨らんでいた。  それを姫宮さんの口元に近付け、傾ける。 「飲め……よ…………」 「はぅ……♡は、はい──……♡」  拒否せずに、濁った精液を舌で受け止めてくれる。  最後の一滴を啜ったら口を閉じ、ごぽごぽと泡立てる。  間もなくして、喉をこきゅっ♡と鳴らした。  再び口を開けば、そこにあるのは彼女の唾液のみ──。 「…………く、……そ」  何もかもが思い通り。  言い換えれば、ただの奴隷人形。  『お前はいつまで子供でいるつもりか』  そんな風に、神様にすら蔑まれている。  学校にいる愚かな奴らだけじゃない。  世界そのものが、僕の、敵、なんだ。 「少々お待ちくださいね……♡」  姫宮小春の甘美な声が、浴室に響く──。  いそいそとマットのお片づけを始めていた。  ローションを丁寧に洗い流し、壁に立てかける。  僕が滑らぬよう、床にもシャワーをかける。  湿気のせいか、いつもより艶がある黒髪。  細部まで整った、美麗な顔立ち。  長い睫毛。ぱっちりとした瞳。柔らかい唇。  華奢でありながらも肉付いた、純白の肢体。  姫宮さんが────僕を振り返る。  欺瞞だらけの、エガオ、だった。  からっぽの心が、改めて嘆く。  どうしても、姫宮小春の好意がほしい。  恋愛感情を抱かれたい。愛されたい。  春休みが終われば、高校3年生の始業式がある。  クラス替えもあるが、同じクラスになれるだろうか。  このままでいいのか。幸せだと思うべきなのか。  『本物』のためには、他に、何が必要なのか。  僕は────どうすれば────いいのか。  悩むばかりで、答えは一向に見つからない。 「──────ご主人様……?♡」  ……だから。……とりあえず。  姫宮さんを抱き締め、首筋にキスをした。  いつか、『道』が見つかると信じて──。 『僕だけの性処理メイド:姫宮小春との催眠性活は終わらない。Endless×Fake』 <了>