本日は三学期の最終登校日。  高校二年生も終わり、いよいよ大学受験に向けた準備が本格化する。これからは、笑顔で手を取り合っていた同級生らが『敵』となるのだ。にも関わらず、未だに奴らは欺瞞だらけの仲良しごっこを続けている。相変わらず、真理が見えていない。 「────」  終業式の後。  他クラスと合同での、理科室の清掃に駆り出されていた。  ほうきで埃を集めながら、窓際へと視線をやる。 「────」  そこには、姫宮小春さんの姿があった。  濡れた雑巾で窓を拭いている。  が、背が低いせいで、上のほうまで届いていない。  周囲を気にする素振りをみせてから、ちょこん、と背伸びをしてみるものの徒労に終わる。小さな溜め息を吐く。理科室には他に何人も男子がいるのに、皆、自分事に夢中だ。姫宮さんが困っている事に気付いているのはきっと僕だけで……それなら、僕が動くしか……。 「あ、あの……僕……が……」  ほうきを握り締めて、声をかけ、た。  実に惰弱で、震えっぱなしの、ぼそぼそ声。  僕なりに、彼女を想っての行動だった。  下心のない純粋な優しさのつもりだった。  だが、僕の善意はあっさりと『拒絶』される──。 「…………っ」  分かりやすく目を背け、逃げていく。  僕から距離をとって俯いたかと思えば、恐る恐る顔を上げて、誰かを探し始めた。僕だけを視界に入れずに、あちこち見回す。少しして──姫宮さんの表情が明るくなった。 「あっ……りーくんっ……!」  彼女の声が──胸に鋭く突き刺さった。  僕を拒絶し、その代わりに助けを求めた相手。  ──鈴木陸斗。──りーくん。  ありったけの勇気を振り絞って踏み出した一歩が、挫かれた。全身から力が抜ける。たった一度の失敗。その小さな傷口が一気に広がり、膨大な憎悪や悔恨が噴き出す。気持ち悪い。どうして僕じゃないのか。心に暗雲が立ち込め、出口のない迷宮に幽閉されていく。  欲しい。欲しい。欲しい。  欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい──。  理科室の隅から──窓辺を睨む。  大きな窓から降る光に照らされる、二人。  姫宮小春と鈴木陸斗。  お姫様と──王子様。  ポケットに手を忍ばせる。  スマホの形を確かめ、指で画面を擦る。  「どうして僕じゃないのか────」  もう一度呟いてから、ぎ、と奥歯を噛んだ。   ◇   ◇   ◇  帰宅すると、まだ午後になったばかりだった。  すぐに玄関に鍵をかけ、僕だけの世界を作る。  鬱憤がたまるばかりであった学校生活とは一転。  目の前には、理想の光景が広がっていた。 「……あ♡ ……ご主人様っ♡」  姫宮さんは、例のメイド衣装を着て、廊下の雑巾がけに勤しんでいた。満面の笑みを浮かべ、ぺこりとお辞儀。バケツの水に雑巾を浸し、小さな手で絞って、隅まで丁寧に拭いていく。「すぐ終わりますから」美麗な黒髪を揺らし、申し訳なさそうに言う。焦る必要はないよと返すと、彼女は頬を真っ赤にしてから──羞恥に耐えきれず、そっぽを向いた。  ──『視線を逸らす』。  同じ行為でも、全く異なる意味を持つ。  僕への嫌悪か、敬慕か。  学校での出来事を思い出すと、せっかくの癒しの時間が穢れてしまいそうだったので、思考を停止させる。そして、僕は姫宮さんに近付き、雑巾を優しく奪い取った。きょとんとする彼女を他所に、残りの場所を拭いてしまう。  ……学校では、手伝ってあげられなかったから。  せめて『僕の世界』では、姫宮小春を『助けて』あげたい。 「……そ、その、ありがとうございます……♡  お忙しいのに、お手伝いしてくれるだなんて……♡  ご主人様は本当に優しいのですね……♡」  あぁ────そうだ────。  僕が──姫宮さんを助けるんだ──。  クソみたいな連中に囚われたお姫様を、救い出すんだ。  その為にこの『催眠アプリ』があるんじゃないか。  ”ピッ♡”とボタンを押し、”ぎィ──♡”と異音を鳴らす。 「ん゛っ──♡♡ ぁッ……♡♡ あ゛ぁ……♡♡」  ぐらり。姫宮さんの頭蓋が揺れた──。  救い出し、支配し、隷属させ、我がものとする。  文字通り『永久』に、僕の手の中に閉じ込めてやる。  その為に必要な『道具』を手渡して、強引に肩を組んだ。 「さあ……”これ”で教えた通りにするんだ。  じゃあ、行こうか。姫宮さん────」  そう言って、『庭』へと連れ出した。    ◇   ◇   ◇  僕の家には、小さな庭がある。  以前までは、母親が家庭菜園を楽しんでいた。けれど、海外出張に赴いてから結構な月日が経った影響もあり、そのほとんどが萎れている。雑草も伸び切っていた。幸い、周囲を塀で囲まれているので、ご近所に怪しまれる事もない。と、どうでもいい事情を振り返りつつも──僕は、股間を熱くさせていた。  目の前の、姫宮小春の痴態を眺めながら。 「んしょ……っと……♡」  廊下の窓際にて、メイド衣装を脱いでいく。  薄っぺらいそれらを畳み、端っこへと寄せる。  黒のソックスだけを残してほぼ全裸となった姫宮さんが、かあ、と頬を赤らめた。程良い膨らみの胸と、無防備な股間を、手で隠す。初心な仕草に、思わず胸が高鳴ってしまった。  学園のお姫様。姫宮小春の──裸。  去年の夏以降、何度も目にしているが、未だ慣れない。  つられて顔を赤くする僕を尻目に、粛々と準備を進めていく。  まず、安っぽい『犬耳カチューシャ』を頭に装着した。次は『犬の尻尾』をモチーフにしたアナルプラグ。唾液をつけた指先で尻穴を擦り、滑りを良くしてから、ぬっぷりと挿し込む──。 「んふぉ……♡ おっ……ほぅ……♡  んやっ……あ゛っ……♡ ん゛ぉ……♡」  ぬぷぬぷ。くっぽん。独特の形状をした先端が──あの姫宮小春の『アナル』に呑み込まれて──全ての準備が完了した。本物の犬の尻尾のように、垂れている──。 「ふっ……♡ ん゛ふ~……♡ っっ……♡」  艶々の前髪で瞳を隠し、下唇を噛んでいた。  お尻の穴で……快楽を得ているのだ。  僕は、努力が成就した事実に喜びを感じていた。  ──年明け頃から、アナルの開発を開始した。ネットで得た知識を使い、姫宮さんに様々な調教を施した。その過程は、どこか実験に近かった。失敗を糧に、成功へと近付けていく。そして、姫宮さんの積極的な協力のお陰もあり、こうして素晴らしい結果が実りつつある。  僕ら二人だけの『秘密』を作っていこうね。  小声で呟いてから、姫宮さんに首輪をつけて。  更に赤いリードを繋ぎ、庭へ出るように命じた。 「────っ……♡」  既に、同様のプレイを二回ほど実践している。  なので細かく指示せずとも、完璧な演技を披露してくれる。  姫宮さんは、ゆったりと身を屈めていき──。 「……わ、わん♡ わんわんっ♡」  四つん這いになり、おずおずと、犬の鳴き声を真似した。  鬱蒼と生い茂る雑草の上で、潤いある肌がぬらぬらと輝いていた。細い両肩。二の腕。お尻。太腿。そうした純白の中で、唯一、桜色の突起があった。姫宮さんの乳首だ。『マヌケな犬』である彼女は、野外でおっぱいが丸出しであろうが、気にしてはならない。とはいえ、誰かから見られてしまう危険性を考え、不安げに辺りを見回してしまっていた。  だから僕は、躾けの意味を込めてリードを引き──。  容赦なく、姫宮さんのお尻を引っ叩いてやった──。  ──べぢっ♡べっちんっ……♡ 「ん゛わぅっ!?♡ わ、わん♡ わぅッ……♡」  羞恥。背徳感。惨めさ。僕への忠誠心。  感情の濁流に翻弄されている様子の姫宮さんは、口元に歪な笑みを浮かべていた。もしかしたら、心の内側から『本物の姫宮小春』が覗いていて、『偽物のヒメミヤコハル』にやめるよう懇願しているのかもしれない。だとしたら、あぁ──堪らない。興奮が募っていく。 「姫宮さんは本当に可愛いね」  スマホを構え、画像ライブラリを立ち上げた。  画面に映し出されているのは、姫宮さんの写真だ。  教室の隅から盗撮した時のもので、少しブレている。 『今度のピアノの発表会、りーくんも誘おうと思ってて──』  嫌な台詞を思い出した瞬間に、スマホの画面を消した。  すぐ舌打ちをして、そこにある『現実』を見下ろす。  催眠性処理牝犬メイドの──姫宮さんを──。 「わん……♡ わんわんっ……♡♡」  やがて僕はズボンを下ろし──陰茎を扱き始めた。  常に最善の選択肢を意識してきた。姫宮小春の心を射止める努力を積み重ねてきた。それなのに、どうしてか嫌われるばかり。僕の心は、強くはない。失敗の度にヒビが入る。冷たい言葉を浴びせられたら容易く崩壊する。そんな糞みたいな現実に歯向かうには、この手段しか残されていなかった。僕の最も嫌う欺瞞であったとしても、姫宮さんの優しい声を、顔を、心を、一瞬でもこの手で掴めるのならば──それこそが『正解』なのである。 「あぁ……姫宮さんエッロ……。  優等生なお姫様の無様な姿、マジ興奮する……」  陰茎から伝わる快楽に、熱い吐息を漏らす。  しゅこしゅこ♡と上下に扱くほどに、雄の欲求が昂る。  姫宮小春を支配したい気持ちが、抑えきれなくなる。  禁忌だと分かっているのに、止められ、ない──。 「おい……今すぐ、そこで”おしっこ”をしろ……。  嫌がるなよ……? 僕の命令だぞっ……?」  命令、という言葉に、姫宮さんは反応した。 「……うっあ゛ぁ……♡ は、ぃ……♡」  矮躯を更に縮こまらせ、鈍い動きで頷く。  催眠中であるというのに嫌悪感を拭いきれないらしい。  姫宮小春の本来の意識が、強く拒絶しているのだろう。  だが関係ない。ご主人様の命令は『絶対』だ。  催眠牝犬は、嫌々ながらも四足歩行をやめた。M字に開いた両脚だけでバランスを保ち、両手を胸の横に掲げる。所謂、ちんちんポーズ。姫宮さんの顔は、白煙が立ち上っていても不思議ではない程、真っ赤だった。更には、不安で緩んだ口元から涎が垂れていた。 「もう一度言うぞ。……”おしっこ”をしろ」  ダメ押しに、そう命じると──。 「う゛っひゅ……♡ 畏まり、まひた……♡♡」  途端に表情が苦悶に満ち、眉間に皺が寄った。  全身が小刻みに痙攣して、がっちりと強張る。  けれど下半身だけは随分と大胆に弛緩しており──。  不安定な自身の状況に、「っ??♡」と疑問を呈した瞬間。  姫宮さんの股間から──ぷっしゅ♡と尿が飛び散り──。 「ふ、っぎゅ??♡ う゛ゅ、う゛う゛ぅ~ッ♡♡」  ──ぷしっ♡ぷしっ♡ぷっ、しゃぁぁぁ……♡ 「ん゛ぁぁっ♡ や゛ぁ♡ 見ない、で……ぇ♡」  ──しゃぁぁぁぁぁ……♡ぷっしゃぁぁぁ……♡ 「う゛ぉっ……んほぉ♡ ほぁぁぁ~~……♡♡」  ──ぷしゃぁぁ……♡ぷ……しっ♡ぷしっ♡  脱力感たっぷりの声音が、緩やかに響き──。  溢れ出した淡黄色の尿が、庭の雑草を濡らした。  姫宮さんは、指を揃えた犬の手で、羞恥に染まった顔を覆い隠していた。歯を食い縛り、懸命に排尿を止めようと試みていたが、結局は全て出し切ってしまった。最後は、ある種の達成感を得たのか、恍惚としていた。涙で潤んだ瞳でこちらを見詰め、力なく小首を傾げる。これだけ惨めな姿を晒しても尚、真っ先に、ご主人様たる僕からの評価が気になる従順な奴隷メイド。もちっとした膨らみの胸の先端では、紅色の乳首がピンッと勃起していた。  ────ぐイッ……♡  僕はリードを引っ張った。  すると彼女は再び四つん這いになる。  とてとて。四足歩行で近付いてくる。  犬耳、そして犬の尾を揺らしながら──。 「へっ♡ へっ♡ へっ……♡」  遠慮がちに舌を出しながらの、乱れた気息。  水分を欲している時の犬のような息遣いだ。  その、桃色に輝く双眸が釘付けになっているのは。  ──僕の陰茎。『ご主人様のおちんぽ』だ。  学園生徒全員から憧憬の眼差しを浴び、学業に芸術に多彩な才能を発揮する、麗しき黒髪の美少女。小柄で可憐な、清楚の象徴たるお姫様。姫宮小春。僕らの学園でその名を知らぬ者はいない優等生──が、瞳をギラついた桃色に輝かせ──『おちんぽ』を求めている。  僕を敬愛し、僕のちんぽに媚びている──。 「わ、わん……♡ わんっわんっ……♡  ご主人様のおちんぽ♡ 舐めたい、わんっ♡」  浅ましい欲望を告白する姫宮さん。  僕はあえて、手の平を突き出してこう言った。 「……………………待て」  人間とは異なり、本能のままにしか生きられない獣。牝犬。されど命令に反すれば、食糧すら貰えないから、懸命に従属する。柔肌を強張らせ、口元を歪め、苦悶の声を漏らす。 「ん゛ぐっ……くぅ……♡♡」  学園カースト最底辺。定期試験の結果も散々で、委員会や部活動で目立っている訳でもない。主体性に欠けた無能な陰キャ。僕自身ですらそうした自覚があるのだから、客観的な評価は更に酷いはず。それなのに、あの姫宮小春をオモチャ扱いしているのだ。誰からも愛される美少女に──安価な牝犬コスプレをさせ──ちんぽ相手に「待て」をさせている──。  これは革命だ。玉座はもうそこに見えている。  無論、全ては『催眠アプリ』のお陰だ。  偽りを真実に変え、世界を塗り替える力。  痛みを克服し、理想を手に入れる力。  僕は腰に手を当て、仁王立ちとなっていた。  眼下。姫宮さんは、無様に媚び続けていた──。 「へっ……♡ へっ……♡ へっ……♡  んれぇぁ……♡ んれるれるれるれぇる……♡」  ちろちろちろっ♡と舌先を小刻みに振り乱す。  陰茎ではなく、『空気』を舐っているのだ。  『エアちんぽ舐め』とでも呼称すべきだろうか。兎に角、陰茎と自分の隙間にある空間をひたすらに舐め、唾液を飛ばしている。時間が経過するにつれて、その勢いは増す。待機指示に対する可愛らしい反抗姿勢に、いよいよ僕も我慢の限界を迎えてしまった。 「…………しゃぶれ」  手短に。端的に。命令を下す。  ポケットの中。スマホの画面を触る。  力を込めて『催眠アプリ』を起動させる。 「しゃぶれ。しゃぶれ。しゃぶれっ。  この、ドスケベな牝犬がっ……」  ”ぎぃ──ィイイ──ん──ッ……♡♡”  独特の異音が鳴り響く。空間に染み渡っていく。  その最中から、姫宮さんは動き出していた。  犬のお座りのポーズのまま、僕の陰茎に「ぢゅぽっ♡」としゃぶりつき、根元まで咥え込む。遠慮の感じられないフェラチオだった。僕に教え込まれた性知識、技術を以て、的確なご奉仕をする事のみに専念している。故に、清楚な表情を保てなくなっており、鼻の下を伸ばした『ひょっとこ顔』で、熱烈な前後運動を伴うちんぽしゃぶりに夢中になっていた。  ──ぶぢゅぅぅっ♡ぢゅぅぅ♡っぽっ♡ぢゅっぽ♡  ──ん゛ぶちゅぅぅぅ~っ……♡ぢゅぅっぱっ♡♡  ──ぢゅっぽ♡ぢゅっぽ♡ぢゅっぽ♡ぢゅっぽっ♡ 「ん゛ふぅ~~♡ ん゛ふぅ~~♡ ん゛ぶもぉ……♡」  細長い舌を絡めつつ、頬肉を窄めて吸引してくれる。  望み通りの口淫をする姫宮さんに……感激していた。  僕は、一度に何重もの快楽を欲する。丁寧な下準備を経て、順番に味わう──そんな大人の楽しみ方は面倒なだけ。どうせなら最初から全力でシてほしいし、さっさと絶頂の景色を眺めたい。遠回しで鬱陶しいやり取りなど不要だ。黙って僕に跪いていればいい。僕の命令のままに、その高貴な身体を捧げてくれればいい。あぁ──ヤバい──もう、イク──。 「ぶぢゅぅぅぅぅ……っっぽっ……♡♡」  射精の予兆に気付いた姫宮さんが、フェラを中断した。  艶やかな唇から、涎塗れの陰茎がぷりんとあふれ出る。  焦らしプレイではない。当然だ。愛する主人への冒涜に当たるから。催眠中の姫宮小春の行動原理は、一貫している。他の何よりも、僕へのご奉仕を優先するという思考──。  ちゅっこ♡ちゅっこ♡ちゅっこ……♡♡  過度な愛欲を滲ませる姫宮さんが──。  濡れた竿を掴み、丹精を込めて扱いていく。  ぱんぱんに膨らんだ亀頭の先に用意されているのは──犬用の餌入れ。そこをめがけて子種汁を注いでくださいと言わんばかりの、優しい手淫。牛の乳搾りを彷彿とさせる穏やかさ。にも関わらず、性感帯への指圧による刺激も完璧であって、快楽が蓄積されていき──。 「わんわん♡ ご主人様のザーメン欲しいわん……♡  まぬけな性処理メス犬メイドの姫宮小春に……♡  貴重な”ご飯”をお恵みください……っ♡ わんっ♡♡」  凄絶な絶頂感に首を絞められ、許容量を、超える。  霞みがかった視界で捉えた姫宮さんは、この上なく無様だった。瞳を爛々と輝かせ、もちっとした臀部を左右に振る。犬の尻尾の飾りも揺れていた。その先では、開発途中のケツ穴にプラグが挿入されていると考えると、禍々しい優越感がどっぷどっぷと噴き出す。  もう無理だ。止められない。  イク。イク。イクイクイク。  陰茎から脳までピンク色の電流が迸る。  唇が、頬が、腹筋が。  勢いよく引き攣り、そして。  ──どぴゅどぴゅどっぴゅっ♡びゅぼっ♡びゅぶっ♡  ──びゅーっ♡びゅーっ♡ぶっ、びゅぅぅぅぅ……♡  僕は、白濁色の雄汁を餌の容器にぶちこんでいった。  膨張と収縮を繰り返し、その度に精液を吐き出す。十秒もかからずに貯蔵分を出し尽くし、その結果、餌入れはたっぷりと満たされた。絡みつくような粘っこさ。異様な淫臭。女性に比べて征服欲が強く、野心的で、執着心のある男性の、肉欲の塊。その、あまりにも下劣な外観に臆する事なく、姫宮さんは四つん這いとなり──「べっ……♡」と舌を出した。  両手を使わず、ただ黙々と、頭を垂れて汁を啜る。  四足歩行の下等種族、催眠牝犬奴隷メイドとして。 「んべぁ……♡ はむ……♡ んれぇ~るれる……♡  んぢゅっぱ♡ ぢゅぞぞぞ……♡ ぶちゅぅぅ……♡」  舌先でザー汁を絡め取って、口内へと運ぶ。  自身の唾液を練り込んでから、ゆったりと嚥下する。  容器に注がれた精液の量が少なくなると、舌では上手く掬えないので、束ねた唇をそっと近付けてから、豪快に吸引していた。極太のうどんを啜る時に似た、やや下品な音を響かせながら。そして──当然ながらお残しは許されないので、隅々にまで舌を這わせる。がっつきすぎたせいで、餌入れがズルズルと雑草の上を滑ってしまい──姫宮さんは情けなくそれを追いかけて──もう一度と顔を突っ込み、『僕の精液』を残さず舐め取っていった。 「んぶぇぁ……♡ ぢゅる……♡ んれるれるれる♡」  それから、達成感に溢れた顔を上げた。 「…………け、っぷぁ……♡♡」  彼女は、満足気にお腹を摩っていた。  足元で引っ繰り返った餌入れは、透明な粘液に塗れていた。姫宮さんの涎だ。生臭い精液がその姿を消し、代わりに、雄を誘う甘香放つ『姫宮小春の涎』だらけになったのだ。これを学校にいる連中に売り捌いたら、かなり儲けられるかもしれない。……なんて、下らなすぎる事ばかりを考えながら、未だ尚、庭で『お座り』を続ける姫宮さんに、唾を吐く。 「……今日も最高に可愛かったよ、姫宮さん。  そろそろ、アナル調教も最後までやっちゃおうか。  なあ──? 嬉しいだろ──?」  姫宮さんは……ヒメミヤコハルは……。  こきゅっ♡と生唾を飲み、迷わずに首肯した。 「はい……♡ もちろんです♡ ご主人様──♡」  何もかもが思うが儘。  拒否せずに従ってくれる。  他の要素を切り捨て、僕だけを尊重してくれる。  学校で僕を避けている姫宮小春とは違う──。  幼稚な願望が凝縮されたヒメミヤコハル──。  もし。僕が今よりも頭が悪かったら。  偽りの幸せで、本気で満足できていたのかもしれない。  でも。生憎、僕はそんなに馬鹿じゃない。  だからこそ辛い。満たされない。  とはいえ、本物を手にする方法が分からないから。  永遠に──『催眠アプリ』を手放せないのだ。 第2話 END