恋は夜空をわたって STUDIO koemee「聴くanime」 特典『御簾納のうっかりメン限放送』                                    岬鷺宮 ◆登場キャラクター ヒロイン 御簾納 咲(みすの さき)・・・・・・ 花守 ゆみり ○夜、御簾納家。御簾納の部屋。 SE:ごそごそと、慌てて配信を始める音。 御簾納「わー、すみません! わたし、間違って有料メンバーの設定、ONにしてました。ごめんなさい、うっかりです。ほんとはそんなつもりなくて……。すぐ設定解除しますね」 御簾納「……あ。でも、せっかく入ってくれた皆さんに、お詫びとお礼を兼ねてちょっとだけお話しようかな。いつもの放送じゃ言えない、内緒の話を……。先輩を好きになったきっかけは、前に言いましたよね。今日は、それを自覚した時のことにしましょうか」 御簾納「一度だけの、特別な放送です。せっかくなんで、楽しみましょう!」 御簾納「あれは、先輩と出会って一ヶ月くらい。ちょうどゴールデンウィークが明けた頃ですね。暑い日が続いてて、もう真夏みたいで。わたしは、学校の自販機で売ってる冷たい紅茶を飲むのに、ハマったりしてました」 御簾納「でね、ある日図書委員にたくさん仕事が来たんです。その対応で先輩は学校の外、わたしは図書室で作業してたんですが、これが予想外に力仕事で……」 ○ゴールデンウィークごろ。夕方の図書室。 SE:校舎に響くチャイムの音。 御簾納「やっと終わった。もうダメ、疲れたあ……」 SE:カウンター内の椅子に座り込む音。 御簾納「でも、これで帰れる。……そうだ! 今日本屋に寄るんだった! ずっと待ってた、新作が出てるはず……!」 御簾納「……って、もうお店閉まってる時間じゃない! ええー、楽しみにしてたのに……」 御簾納「……うう、帰ろう」 SE:カウンター内の鞄を漁る音。何か紙片に触れる音。 御簾納「あれ、これ……先輩の書き置き?」 御簾納「『お疲れ、御簾納。今日手伝えなくてマジごめん。これ、差し入れだから飲んで下さい』」 SE:パックの紅茶を手に取る音。 御簾納「え……わたしの好きなお茶……」 ○夜、御簾納家。御簾納の部屋。 御簾納「そう。そのころ好きだった、例の紅茶が入ってたんです。時間経ったせいで、すごくぬるくなってたんですけど。でね、それを飲み終えて、パック見てたら急に……」 ○放課後の御簾納 SE:飲み終えてパックを置く音 御簾納「ええ……うわあ……。どうしよう……。好き、かも……」 ○夜、御簾納家。御簾納の部屋。 御簾納「……え、よくわからない? なんでそれで好きになったのか……?」 御簾納「(早口で)あのね、違うの。そもそも先輩そういうことするタイプじゃないの。差し入れとかプレゼントとか苦手っていうか、気を遣えないわけじゃないんだけどちょっと鈍いとこあるからあの人。でもだからこそ、あの紅茶で頑張ってくれたのを肌で感じたんだよ。だって、ぬるいんだよ? 普通分かるでしょう、見つける頃には冷たくなくなってるって。その辺は気は利かないんだけど、でもそれは彼が精一杯考えてくれた証拠で、そのぬるさがなんだろ、先輩の優しさそのものみたいに思えて、うっかりぐっときちゃったっていうか、なんか感動したっていうか……」 御簾納「(ふう、と一息つき)そんな感じで……うん。わたしは、気持ちを自覚しました」 御簾納「あーもう、恥ずかしい! これ、本当に内緒だからね! いつもの放送の方では、言わないようにしてください! 先輩も聴いてるし。それじゃあ、秘密の放送でした。ありがとうございました!」 終わり