【ハイスペ僕っ娘ヤンデレ社長令嬢】 (突然腕を組んで) よっ! お疲れ様~ (腕を振り払われる) うわっ びっくりした~ そんなに焦って振り払わなくてもいいじゃんか~ ちょっと腕組んだだけなんですけど~? まあ、それはそれとして、今日も一緒に帰ろうか あっ、ちょっと、さっさと歩き始めるなよ~ え?「ひとりで帰る」って? おいおい、冷たいなぁ 何か悩み事でもあるのかい? 大抵のことはこの僕に任せておけば解決さ! え? 「じゃあ俺に近づくな」って? それは無理な相談だな! いくら僕が大抵のことを上手くこなせる人間だからといっても何でも出来る訳じゃないからねぇ 僕がきみに近づかないようにする、なんて地球上最高クラスの難問はさすがにどうしようもない まったく~、そんな無茶なこと言うなんてふざけてるのかい? 潔く諦めて僕の彼氏になったら悩みはなくなるんじゃないかな~? おや、今度はだんまり? おーい、さすがに反応してくれないと寂しいぞー 僕みたいな美女を無視してるとバチが当たりますよー はあ、まったく… ここ一週間は毎日きみのもとに来てるのにこんな仕打ちなんて… (嘘泣きで)しくしく… あ、ちょっと心配したでしょ なんかきみってチョロそうだよね あっ、ごめんごめん 冗談だから急に歩くスピード上げないでよ~ ま、きみは泣いてる人を簡単に見捨てられないくらいには親切だからねぇ そんなところも好きだけど、僕としてはちょっとだけ心配かな~ そこで! 今この声を聞いてるあなただけのお得なキャンペーン! なんと! 大企業の社長令嬢かつ秀才のこの僕が実質無料で手に入るチャンス! 僕が近くに居るだけで誰かに騙される心配もなくなり、彼女も出来て、資産も増え幸せになること間違いなし! あ、ちなみに彼女ってのは、もちろん僕のことね でも、お高いんでしょう?と思ったあなた! 安心してください! なんと! 僕の彼氏になると言うだけで、無料になっちゃうんです! さらに!もし、いま僕を彼女にしてくれたら… (スマホの通知音が鳴る) (小声で)ん?ああ…そうか… 番組の途中ですが、只今速報が入りました ほら、さっきまでの茶番とは違って、きみにとっては超朗報なんだから、ちゃんと聞いて あの女、捕まったってさ お、さすがに反応したね ん? あの女って言うのはもちろん、浮気した挙げ句きみのことを振ったくせに、ストーカーになってたあの女のこと ん?そりゃあもちろん知ってたよ ま、僕の情報網を甘く見ない方がいいってことだね え?逮捕された理由? あー、なんか、暴行の現行犯だって話だよ 怖いよねぇ ああ、幸い被害者は黒服の屈強な男だったらしくてさ 特に怪我とかはなかったみたいだよ 不幸中の幸いだね でも、もうあの女がきみの周りに現れることはないから安心していいよ なんでも被害者が権力者の関係者だったらしくてさ 相当な代償がありそうなんだって ま、自業自得だね ん?「情報が早い」って? そりゃまあ、この僕にかかればこんなもんさ 惚れ直したかい? え?暴行の理由? 気になるの? んー、さあ、分かんないけど… 好きな男が女と腕を組んでる写真を見せられて発狂した…とか…かな? ま、理由なんてどうでもいいでしょ とにかくこれで、きみの悩みの種だったストーカーはいなくなった訳だ だからさ、僕たち付き合おうよ は?ここで「お前のことは好きじゃない」とか言うわけ? さすがに僕のこと舐めすぎ きみのことはよく調べたって言ったよね? つまり、きみの好みも、嫌いなものも、どんなときにどんな表情をするのかなんてとっくに分かってるの だから、きみが本当はどんな気持ちかなんて僕からしたら一目瞭然なわけ ねえ、本当は僕のこと好きなんでしょ? 見た目も性格も、きみのタイプなはずだけど? ん?たまたまな訳ないでしょ もちろんきみのために外面も内面も変えたんだよ 前に会ったときはこんな感じじゃなかったでしょ? 僕は人形だったんだ 心なんてなかった きみと出会った一ヶ月前のあの日までは 僕の両親が大企業の経営者ってことはもう言ったよね 両親は二人で会社を立ち上げて全国に名前が知れ渡るまで大きくしたんだってさ、すごいよね それは素直にすごいと思ってるよ、本当に でも、少なくとも僕にとっていい親ではなかった 両親は二人ともが元々貧乏な家庭で育ってね 必死に勉強して相当な苦労をして会社を大きくしたらしい だから、僕にはそんな苦労をさせないためにと、物心ついたときから勉強や習い事をたくさんさせられた 将来この会社を継がせるためだ、お前のためだってね 幼い僕は、仕事ばかりで構ってくれない両親に褒めて貰おうと必死だった 言われるがままに色々なことを習って、苦手なことも、興味のないことも必死にやった その結果、二人が望んだ能力は全て身に付けたと自負してるよ でも、二人は構ってくれなかった そればかりか、幼い頃から習い事と、勉強漬けだったから友達なんて出来たこともなかった 能力はあるから誰かを頼る必要はなかったけど、僕という人間は空っぽで、どうしようもなく孤独だった それが突然嫌になって、一ヶ月前のあの日、家を出た 突発的だった 家を出てから、夜を越すには寒い格好だと気づいて、とりあえずコートを買って、フードで顔を隠しながら歩いた フードで視界は狭かったし、ふらふらと歩いていたから、何度か転んで汚れてた そんなときだったんだ、きみが声をかけて来たのは 初めてだった、誰かに手を差し伸べられたのは それに、きみは優しい言葉をかけてくれて… 一瞬で好きになった 運命だと思った だから、すぐに家に帰って、きみのことを調べて、きみの好みになるように努力した 幸い、努力が得意だし、空っぽな僕だ きみの好みの人間になるのは簡単だった きみ、僕っ娘が好きなんだろ? あと、友達みたいに冗談を言い合える仲も好き…でしょ? もっと好みなタイプがあるというなら、そんな人間になるよ 仮にきみが働かなくても、僕はきみを養っていける 僕は努力が得意だ、きみを幸せにする努力は絶対に怠らない それに、きみも運命だと思わない? あの日出会ったこと 確かにきみは比較的親切なほうだ でも、顔も見えない薄汚れた人間を助けるほどお人好しでもないだろ? それでもきみはあの日、薄汚れた顔も見えない僕に声をかけた これを運命と呼ばずしてなんと呼ぶんだ きみの悩みの種だったあの女はもう居ないんだ あとは、僕の愛を受け入れるだけで、幸せな人生が待ってる さあ、早く受け入れて、僕の愛を、僕のすべてを