昇天したら異世界にイッちゃった!!      ドラゴンスレイヤー 彼氏  「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」     「イキそうだね?」        彼氏が耳元で囁く 彼氏  「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」 「一緒にイこう」      彼の腰の動きが激しくなる 彼氏  「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」     「うっ!でる!!うぅ…はぁ…はぁ…」  彼と私が同時に絶頂に達する      すると      眩い光に包まれた      頭の中が真っ白な霧のようなものに包まれ      今までの想い出が走馬灯のように頭の中をフラッシュバックする      楽しかったこと      悲しかったこと      感動したこと        いつも隣りにいてくれる      大切な彼との想い出が…。      意識が遠のくのを感じながら……。      瞼を開けると      今まで見たことのないような澄んだ星空が見える      静寂の中に、虫の音が聞こえる      周りを見渡すと      どうやら広大な草原の中で横たわっているようだ      『ここはどこだろう?』      あの見慣れた部屋      いつも隣りに居てくれた彼の姿は何処にもない      少しづつ意識がハッキリしてくる      だが      此処が何処で      何故こんな場所で寝ていたのか      考えれば考えるほど認識が出来ない      ふと思う      もしかしたら、まだ夢の中なんじゃないだろうか?      そんな淡い期待もすぐに打ち砕かれるのだった ??? 「グォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」      突然!!      凄まじい叫び声が大地を揺るがした!!      反射的に身を起こす      いや、飛び起きたと言っていい      すぐさま周りを見渡す…      だが      近くにその叫び声の主らしき者は見当たらない      大声の主?      人や動物の類ではないなにか        そう      まるで恐竜!?      すると      突然激しい突風が全身に浴びせられた      目も開けていられない中      風が吹いてくる方角をなんとか見ようとする      その方角の空の彼方から      なにか得体の知れない黒い物体が微かに見えた      ものすごい勢いでこちらに向かって近づいてくる      それが近づいてくるにつれて      その黒い物体の異様な大きさに      今まで感じたことのない恐怖を覚える      動けない      身体中が震えて足がガクガクする      恐怖のあまり腰が砕けてその場に座り込んでしまう        ドラゴン!?      よく映画や小説の中で登場する架空の生き物      まさに、その姿はそう形容するに相応しい      叫び声を恐竜と感じたのはあながち間違っていなかったのだ      現実にいるはずのない空想上の生き物      しかし      五感、いや第六感までもそれが現実だと認識を背ざる負えないのだった ドラゴン「グオオオォォォーーーーーーーーーー!!!」      そのドラゴンは      頭上から突風と咆哮を放ちながら向かって来る      死を覚悟して瞼を硬く閉じた      その時だった ドラゴン「グギャアアアアアアーーーーーーーー!!!」      頭上で      耳の鼓膜が破れるのではないかと言う程の劈く叫び声が聞こえた        巻きあがるような突風のなか強引に瞼を開け      頭上に目をやると ドラゴン「グオオォォーーーーー!!」      上空でドラゴンが凄まじい叫びを放ちながら暴れているではないか      苦しそうに ドラゴン「グオオォォーーーーー!!」      一瞬      ドラゴンの頭に何かがいるのが見えた気がした      しばらく状況が掴めないまま呆然と座り込んでいると ドラゴン「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」      ひと際、ドラゴンの大きな叫び声が上がった      まるで断末魔のような      そして翼を閉じ、力なく真っ逆さまに落ちてくる      私のいる場所をめがけたかのように      身体に力が入らない      このままドラゴンに押しつぶされる場面が脳裏をよぎる      ドオオオォォォッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!      凄まじい音とともに私の身体が宙を舞うのを感じた      意識が遠のいていく……      しかし、今度は走馬灯のようなものは見えない…      誰かが顔を覗き込んで何かを叫んでいるのがうっすらと見える      だがその瞬間、意識がなくなった……。      耳元に      パチパチと何かが弾ける音が聞こえる      瞼を開け      徐々に意識が戻ってきた      満点の星空が見える      どうやら仰向けに横たわっているらしい      すぐそばで      パチパチと音のするほうへ顔を向けると      炎が舞っていた      焚火だ      その奥に人がいる      丸太らしきものの上に腰を下ろしているようだ      ひとり      男だ      おそらく中年の男性      中年でも      そこらへんにいるむさ苦しいおっさんではなく      俳優のようなハンサムな男      彼は私のいる世界ではあまり見たことのない恰好をしている      あまりというのは      普段しない恰好をイベントなどでする人々  例えば      アニメや映画の登場人物の恰好をする人がいる      俗にいう      コスプレイヤーといわれる人々だ      そういった格好をすることをコスプレというのだが      それでいうと彼は      ファンタジー小説や映画に登場する戦士のような恰好をしていた      ほぼ全身を覆っている鎧      彼のすぐ隣には剣が横たえてある      それは剣とは言い難いほど大きい      横幅がとてつもなく広く      例えるなら      出刃包丁を人の背丈程のサイズにした感じだ      実際俳優なんじゃないだろうか?      あのドラゴンも      映画かなにかの撮影用に用意されたものだったのではないか?      それにしては妙にリアルすぎる      そんなことを思いながら呆然と彼を眺めていると      彼と目が合う 戦士? 「よう、目が覚めたか」      そう声を掛けられ、うやうやしく頷いた 戦士? 「あんた、なんでそんな恰好でこんなとこにいるんだ?」      いぶかしげに彼が言う      ハッ!として自分の恰好を見てみる        私の身体には布が掛けられていた      しかし      私自身は何も身に着けていないことに気づく      一瞬で顔が火照るのを感じた      きっと顔全体、耳の先まで真っ赤になってるだろう      幸い      焚火の炎のおかげで彼は気づかないだろうが      冷静を装いながら 私   「わからない」      と答える      エッチの最中だったからだとはとても言えない      言えるわけがない      話題を逸らす為      布を被せてくれたお礼を言う 私   「ありがとう」 戦士? 「礼ならいい、気にするな」     「わからない…か、記憶がないってことか?」      彼の問いかけに対して      目が覚めたら、ここがどこで、なぜ自分がこんな場所にいるのかわからない      と正直に答えた      ここが外国または映画のロケ地      あるいは、夢の中であればいいと願いながら…。 戦士? 「ここはクリスティアーノ帝国の外れにあるポグバ草原だ、わかるか?」      だが      そのわずかな期待も彼の言葉で脆くも崩れ去ってしまう      あまりにも衝撃的で戸惑いが隠せない      私が知る限り、そんな国は知らない      自分のいた世界では……。      かといって      とても夢であるとは思えないほどの現実感      心のどこかでそんな気はしていたことが      確信に変わってしまった      ここが自分のいる世界とは別世界だということを……        信じられないし      信じたくはないが      これが現実……      なぜかわからないが      共通語なのがせめてもの救いだと思えた      これで言葉が通じなかったらと思うと背筋がゾッとする      戦士? 「わからないみたいだな……まぁ、これでも飲んで少し落ち着くといい」      そう言って彼は      コーヒーカップのようなものを手渡してくれた      中には透き通った赤茶色の液体が入っている      温めてあるのか湯気がたっている      爽やかな香りが鼻口をくすぐる      息を数回吹きかけて熱を冷まし      一口飲んでみると、紅茶のような味で意外にも美味しい      心がほっとする 戦士? 「うまいか?」      私は微笑みをたたえながら頷いた      少し気持ちが落ち着いてきて      思い切って彼に聞いてみることにした      自分の脳内で処理できないことを   戦士? 「ん?聞きたいこと?」     「なんだ?言ってみろ。俺がわかることなら答えてやる」     「日本?うむ…聞いたことないな」     「まぁ、俺がこの世界の全てを知っているわけではないからな、俺が知らないだけかもしれん」     「ひょっとして、そこがお前のいた国か?」 私   「そうです」      と答え      最も重要なことを聞いてみる      そう、ドラゴン      あの巨大生物だ      本当にもしそうだとしたら…… 戦士? 「巨大生物?…あのドラゴンのことか?」      !?      やはりそうだった      本当にドラゴンだったのだ      信じたくはないが信じざる負えない      それと戦っていた当人が言うのだから…。      あの時の恐怖が蘇ってきて体中が震える      別の世界!?      ドラゴンが存在すること      それは      明らかに自分のいた世界とは異なる      異世界!?      最近流行りの異世界に転生しちゃった的なことが      実際自分の身に起きてしまった      いや、転生まではしなかったのが不幸中の幸いかもしれない      もはやそこまで思考が追いついていない状態だ 戦士? 「大丈夫か?顔色が悪いぞ?どこか痛むか?」      何も知らない彼は優しく気遣ってくれるが      とんだ見当違いなのが悲しい      話してみよう      信じてもらえるかどうかは問題じゃない      この世界では自分が生きていける気がしないのだから      私がいた国や世界のこと      移動手段で使う乗り物や伝達方法などを簡略的に話してみた 戦士? 「なるほど……にわかには信じがたい話ではあるが、この状況で嘘を言うことの意味がないのも、それもまた事実」     「で、お前はこれからどうしたい?俺がお前にしてやれることはかなり限られると思うが…」      腹は決まっていた      このまま一人で見知らぬ地      いや、それどころか知らない世界を彷徨うより      命の恩人でもある彼に      なんとか元の世界に戻れる方法を見つける為の手助けをしてもらえるよう頼み込むしかない      例え元の世界に戻れないとしても      この世界を生きるには彼の助けが必要であることだけは確かだ      そのことを率直に彼に伝える 戦士? 「そうだな、まぁ俺としてもここにお前さんひとり置いて立ち去るのも必ず心残りになっちまうに違いないしな」     「いいだろう、できる限りの手助けはしてやる。だが元の世界に戻れるなんていうのは奇跡にも等しい話だ、だから過度な期待はしてくれるなよ」 私   「ええ、ありがとう」      頷くと同時に礼を言う      何の見返りもなく無償で無理な話を引き受けてくれるのだから      期待などしたら罰があたるのではないだろうか      むしろ      一笑に付すどころか      悪い人間なら      問答無用で犯されたり、売られたりしてもおかしくはない状況なのだから…      自分としては命の恩人に対して申し訳なく思う      冷静になってみれば、虫のいい話をしているなと思う        だが      実際この世界で自分が彼にしてあげられることなどないのではないだろうか?      そう思うと胸がキュッと締め付けられるのだった 戦士? 「ん?どうした?なぜ泣く?いや…わるい、お前の気持ちを考えたら泣くのも無理もないよなぁ」     「自分のいた世界とは全く異なる世界に来ちまったんだから」     「それどころかあんなバカでかい生き物を間近でみたんだ、この世界の奴らだって泣くに違いないさ」      彼は彼なりに励ましてくれているのだろう      そんな彼の優しさが逆にツライ      もちろん、彼の言う通りこれからのことを考えるとどうしようもなく不安になる      私だったらどうだろう?      自分のいる世界に知らない世界から迷い込んだ人を      こんなに親切にして助けてあげられるのだろうか?      そう思うと涙が止まらない……… 戦士? 「まぁ、今はあまり考えるな、明日に備えてゆっくり休むといい」     「こう見えても俺はそれなりに頼りになる、なんせあのドラゴンをたったひとりでぶちのめしちまうんだからなぁ、だろ?」      そう彼は言って      茶目っ気たっぷりな笑顔でウィンクしてみせた      緊張の糸が切れたのかすぐに深い眠りに落ちる      彼が見せてくれたその笑顔に      弱った心と身体を包み込まれるかのように………。      あれから半月ほど経っただろうか      未だに自分のいた世界に戻れる方法や手段を見つけられずにいた      そういった情報は皆無に等しかったのだ      それどころか      そういった話を真剣に聞いてくれる者は稀にしかいない      当たり前だと自分ですら思う      そんな話、自分のいた世界では創作物として存在はしていたが      こちらの世界にはそれすらもない      考えもしないし、それどころでもないだろう      こちらの世界にある創作物があるとすれば      遥か昔の実話を誇張したであろう伝記などや伝説      過去のことを描いたものはあれど、未来や他の世界のことを考えるどころか      今日、明日をどう生きるかに必死なのだから      そう思うと      自分のいた世界がいかに恵まれたぬるま湯のような生活だったか      身に染みて思い知らされるのだった      たしかに      自分のいた世界も、”ある意味の生きづらさ”はありはしたが      水や電気、ガスといった当たり前にある物でさえ      こちらでは手に入れるのに苦労する      それどころか      ガスや電気のような便利なものはないのだ      火を起こすのでさえも簡単なことではない      その代わりと言ってはなんだが、なんと魔法が存在する      まだこちらの世界に来て数回しか実際に目にしたことがないが      火を操れるものや治癒の能力を心得ている者もいた      ただし      そのような特殊能力を持つ者は、職業柄修行して習得した人々であり      一般的な人々では稀であると言っていいと彼が教えてくれた      自分のいた世界では昔話のようなことが      今いるこの世界なのだ      死と隣り合わせと言っても決して過言ではない      過酷な世界      それでも彼は      自分を見捨てたり      諦めさせたりするようなことは一度もなかった      それどころか      旅の途中は、できる限り寝泊り出来る宿を取れるように努めてくれた      彼の名前は”カリウス”と教えてくれた      カリウスとは旅の道中で色々な話をした      私が生きてきた世界のこと      彼が生きてきたこの世界のこと      彼は意外にも自分の話をすることを嫌がらず      聞いたことにはほとんど答えてくれた      彼の今の生業は主に賞金稼ぎ      とは言っても      ターゲットは罪を犯した極悪人か、人に危害を及ぼした凶悪なモンスターのみで      それ以外の依頼は極力請け負わないことにしているそうだ      幸い      あの時のドラゴンから狩猟できた牙や角、鱗などは貴重な為かなり高値で売れる      そのおかげで      彼とこうして各地を旅しながら      自分がいた世界へ戻る為の情報収集を地道にしていられる      その為      自分は幸運だと思うようにしている      異世界に来てしまったとはいえ      あの時彼に助けてもらえなければ、確実に死んでいたであろうし      彼じゃなければ      ここまで手助けをしてはくれなかったに違いないのだから…      『そう、彼がいてくれたからこそこうして生きていられる…彼がいてくれたから……。』      その彼が      あることについて尋ねると      話をはぐらかすか、そらしてしまう話題がひとつだけある      彼は以前は傭兵をしていたそうで      ときには、国に雇われて戦に参加することもあったそうだ      実は      彼自身からではないが、ある町の酒場で聞いた話では      彼の名は      戦場では知らぬ者がいないとまで言われており      雇った国の王直々に傭兵団長を任されるほどの戦果を上げ      その名を戦場に轟かせていたそうだ      そんな彼が傭兵を止めてまで賞金稼ぎに自らなった理由      その理由だけは決して話そうとしてはくれなかった…      とはいえ      誰でも話したくない過去のひとつやふたつはあるのだから      無理に聞き出そうとするのは気が引けた      それ以来      もうその話題に触れることはしなかった      彼自身から語ることがないかぎり…      そもそも自分の立場もわきまえなければいけない      気さくに話してくれるとはいえ命の恩人であり      この世界でたったひとりの、頼もしい唯一無二の仲間なのだから      彼はどう思っているかはわからない      でも自分は仲間だと思っている      そう思うことは      実におこがましいことかもしれないが…。      彼と一緒にいて      もうひとつ気がかりなことがある      宿に泊まるときは      自分が女性ということで、別々の部屋をとってくれるのだが      野宿をするとき      彼がうなされているときがある      ひどいときには、苦しそうにうわ言を言うときさえあるのだ カリウス「どうした?ぼーっとして」      彼は振り向いて唐突に問いかけてくる 私   「ううん、なんでもない」      首を横に振って笑顔で答える      もしかしたら、笑顔がぎこちなくみえるかもしれないと思いながら……。      そんなある日      高い木々に覆われた森の中で      野宿をしていたときである カリウス「うぅ・うう・うううぅぅぅ……」            カリウスが      いつもよりもさらにひどくうなされていた カリウス「はぁ、はぁはぁ、エメラルダ…、エメ…ラルダ…」            『エメラルダ?…誰のことだろう……』      彼のうわ言がはっきりと聞こえるのは、初めてのことだ      彼の愛する人の名前なのだろうか?      なぜだろう……ひどく気になってしまう自分がいる      『嫉妬…している?なぜ?       私には彼氏がいる……       誰よりも愛している彼が…       それなのに…………………』 カリウス「はぁはぁ、ううううぅぅぅ…うぁああああああああああ!!!!エメラルダ!!」      彼のうわ言がひと際激しくなってハッ!!と我にかえる      何をバカなことを考えてるんだ!!      彼がこんなに苦しんでいるというのに!!!      自分の世界に入ってしまっていた自分自身に対し、激しい怒りを覚えた      苦しむ彼に急いで声をかける      ちょっとやそっとの声では反応を示さない      激しく動く彼を抑えるのは簡単なことじゃなかった      彼の肩に全体重を乗せて押さえつけ、今度は大声で彼の名を呼ぶ!!      もう叫びに近かった      数回叫んだ頃、ようやく目を覚ました カリウス「はぁはぁはぁはぁ…ううぅ……エ、エメラルダ……」      そう彼は呟いたかと思うと      唐突に抱きしめられた      急な出来事に頭が一瞬混乱する      離れようとしてもがいてみるが、男性の力には敵うはずがない      それに… カリウス「すまない、エメラルダ…」      『泣いている……こんなに大きな体で、誰よりも強くて、誰よりも頼もしい彼が…泣いている』      もう、そんな彼を無理に引き剝がそうとはしなかった…      思えなかったし、そうはしたくなかった      例えエメラルダという女性のかわりだとしても…      苦しんでいる彼を拒むことは自分にはできない      それは決して同情や母性などではない      認めたくはなかったことだが      しかし今ならはっきりとわかる      『彼に恋心を抱いている自分がいることを…       もう、ずっと前から……彼に出会ったとき       そう、命を助けられたあのとき……       ドラゴンと戦う姿をみたとき…………。』      見えていたのだ      信じられないことだが、あの呆然とドラゴンを見ていた時      身体中が恐怖で震えていたはずなのに…      なぜか、恐怖心が解けて      冷静にその光景に魅入られていた自分がそこにはいた      そして      身体の奥の底が熱く燃え滾っていたのだから… 私   ”大丈夫      あなたには私がいる ”      そう彼の耳元に囁きながら、彼をそっと力強く抱きしめた………。            あれから数日が経った          彼はあの時のことが記憶に残っていないのか、さしていつもと変わらない態度で接してくる      もちろん      私も何事もなかったかのように振舞っている      彼が知ってしまえば、気まずくなるのは目に見えているだろうし      それがきっかけで関係が崩れてしまうのが恐かった…… カリウス「そろそろ晩飯でも食うか?」      彼がそう言って      片方の口角だけ上げてニヤッとする      彼は渋い外見に似合わずお茶目なところがある      あんなに夢にうなされていても、普段はそういったものを表情や態度には決して出したりはしない      ましてや、口に出して話すなんて真似は決してしない      一人で抱え込んでいるのだ            いや、そうするしかないのかもしれない      その辛さは計り知れないことだろう      あんな姿を目の当たりにした私でさえも、辛い気持ちになるのだから…      そう思いながら 私   「そうね」      と言って、彼に微笑み返す      私にしてあげられることは今はこれくらいしかない      何もしてあげられない      あの涙の理由を何も知らないのだから      彼の口から悲しみや苦しみを打ち明けられないかぎり…      果たして      そんな大切な何かを      彼が打ち明けてくれることがあるのだろうか?      異世界から来た私なんかに…… カリウス「あそこなんかどうだ?この大きな街の中じゃ目立たない小さな店だが、実は隠れた名店でな」 私   「名店なのに隠れてるってどうなの?」      と怪訝な表情を見せてみる      すると彼はククッと笑い カリウス「食ってみればわかるさ」      そう言ってウィンクする彼がなんだかいじらしい      屈強な戦士に対して思うことではないのだが…      そう思えてしまうのは、あのときの彼の涙のせいかもしれない            今私たちがいる街      この街は、今まで見てきた街とは比べ物にならないくらい大きい      なぜなら街は塀で囲まれており、門番をする兵士が数名立っていた      入るには手荷物検査やら身分証明やらが必要とされる      実際、自分ひとりでは入ることができたかさえ甚だ疑問である      そして      何より驚嘆したのが、街の中心部に建っているであろうお城がかなりの大きさだということ      今歩いている場所からはかなりの距離があるはずなのに、存在感が凄まじい      それだけ大きなお城なのだろう      簡単に街に入れないのが頷ける      彼から聞いた話では      この城はグリーリッシュ城      この街の名はフォーデンといい      ここら一帯はデブライネ王国の領土ということだ。      そんなことを考えている間に、お店の扉の前まで来ていた      カリウスが扉を開け、先にお店に入る      彼に続いて入ってみると…      この世界に来てからは入ったことがないような、お洒落なお店だった      今までは食堂や居酒屋のようなお店で      お客が沢山居て騒がしい感じのお店か      逆にお客が少なすぎて今にも潰れそうなボロい店、または屋台だった。      それらと比べると      お店は間接照明だけなんじゃないかと思うくらい薄暗いが      お店のデザインや装飾品の置き方などにはこだわりがある感じがするし、センスもいい      自分がいた世界で言うと、バーのようなお店だ      もちろん、ジャズのような音楽はかかっていないのだが      そのぶん静かなので      ひとりで飲んだり食事をするにはちょうどいい雰囲気ではある      お客も満席には程遠く両手で数えられる程度      お店の広さを考えると、少し寂しいような気がしないでもないが…      それでもお客の身なりを見る限り      騎士や装備の充実した戦士といった、それなりに稼ぎのありそうな客ばかりにみえるからには      儲けはあるのだろう      それを考えると、料理の値段がちょっと怖くてメニュー表を開くことができない      まぁ、開いたところでこっちの文字が読めるわけではないのだが      値段の表示から想像位はできそうな気がする         カウンター席ではなく      向かい合わせのテーブル席に、お互いテーブルを挟んで向かい合う形で      背もたれの着いた木製の椅子に座る      メイドのような衣装を着た、見るからに若そうなウェイトレスが注文を聞きに来た      頭に付けたカチューシャのような髪飾りがかわいい      そのウェイトレスが満面な笑顔で注文を聞く      カリウスは葡萄酒のようなお酒をひとビンとステーキのような料理を頼み、自分はグラタンのような料理を注文した。      お酒は注文してすぐに来た      料理が来るまでの間      お酒を飲みながら、この街で情報収集するための行動の仕方について意見を交わしあう カリウス「この街の大きさから考えれば、何か有力な情報を得られるかもしれん      だが慎重に行動しないといけない、大きな街には様々な人間がいる      それだけでなく      人種や種族も多種多様で、ときには宗教がらみのいざこざだってある      もちろん、この国を統治している王は秩序が乱れぬことがないように      警備を厳重にしているし、法を犯すものには重い刑罰を下す      秩序があるおかげで、この国は栄えているといっても過言ではないだろう      それでも、光があるところには必ず影ができるものさ…      お前のいた世界ではどうだった?」      彼の問いかけに対して深く頷く      彼の言ってることはもっともだと思う      私がいた世界でも      街が大きくなればなるほど様々な問題を抱えているものだ      貧富の差がそういう問題に関わっていることも少なくない……      彼に自分の考えを話していると      しばらくして      注文した料理が先ほどのウェイトレスによって運ばれる カリウス「ありがとう」      彼は表情を和らげて、ウェイトレスの女性のほうに視線を向けて礼を言う      彼女は微笑みながら軽く一礼して、カウンターへと戻って行った。 カリウス「さぁ、難しい話は終わりにして食事を楽しもうじゃないか」      先ほどまでの真剣な顔とは打って変わって、人懐っこい笑顔で彼が言う      その笑顔に釣られて自分も固い表情を解き、微笑を浮かべながら軽く頷き      運ばれてきたグラタンのような料理をひと口食べる      同時に衝撃を受ける 私   「美味しい!!」      思わず驚きの声を上げてしまう カリウス「だろ?俺のお気に入りの店なんだ」      そう言う彼と目が合うと、声を出してしまった恥ずかしさのあまり顔が紅潮するのがわかった      でもそれくらい美味しかったのだ!      この世界に来てから      いや      自分の世界にいたときでさえ、こんな美味しい物を食べたことがあっただろうか? カリウス「なのに、お客がお世辞にも入っているとは言い難い。不思議だろう?」      彼が言うことはもっともだ      こんなに美味しければ、もっと繁盛していてもおかしくはない。      いや、しないわけがない!! カリウス「答えは簡単さ、この店を教えたくないんだ、誰にもな…」     「雰囲気が良くて居心地がいい、しかもこんな美味い料理まで食える、秘密にしておきたくもなるだろ?」      そう言って彼は片方の目を瞑って見せた      たしかにわかる気がした      美味しいお店でも、皆に教えたくなる店と      そうではなく、秘密にしておきたい店がある      この店はまさに後者だと断言してもいいとさえ思える      だが      それだとお店的に当然不利益になるから、困るんじゃないだろうかと心配になる      それを率直に彼に聞いてみた      もちろん、お店の関係者に聞こえないように小声でだ カリウス「まぁな、だからマスターは店に自信があるんだろう、それなりの料金で料理を提供しているんだ」     「それに儲けるのが目的ではないそうだ」     「自分の理想的なお店をやること。その為の経営理念をしっかり持つことが大事なんだと、彼は言っていたよ」      なるほど、実際それを実行するのは決して容易いものではないとは思うが      明確な目標や目的があれば      それを実行し、成功することも不可能ではないということのいいお手本がこのお店なのだろう カリウス「さっ、飯が覚めないうちに食べちまおう!もちろん、ちゃんと味わうことを忘れずにな」           二人とも料理を食べ終え      お酒を嗜みながらたわいもない話をしていた… カリウス「すまんが、ちょっと行って来る」      そう言って彼は後方に向かって肩越しに親指を差す      その方向の奥の壁にはドアがある      どうやら、用を足しに行くようだ      私は頷く仕草だけして彼に答える      彼は席を立ち後方の奥のドアへと向かって行った      彼がいない間、何を考えるわけでもなく虚空を眺めながらお酒をちびちびと飲む 男?  「動くな」      突然背後から男だろうと思われる声音がする      声の距離から察するに、真後ろにいることは間違いないだろう      うなじの辺りに冷たい物が当てられている感覚がする      おそらく刃物           恐怖に体が震えて、声を発することさえ出来ない      全身から汗が噴き出てくる、冷や汗だ      明らかに空気が変わった。      その異様な空気は冷たく      殺気にも似た鋭さがヒリヒリと全身を駆け抜けて、今にも発狂しそうなほどだ      その空気は自分のいる空間だけなのか      周りを目だけでキョロキョロと見渡してみても      誰一人こちらの状況に気づいている者はいないようだ      喉どころか、口の中の唾液が全て失われていくのがわかる 男   「いいか、俺の言う通りにしろ。さもなくばお前の首は体とおさらばだ」      頷くしかなかった      カリウスが今この場にいない現状を考えれば、そうする以外他ないだろう      もし殺したければ、有無を言わさずそうしていたに違いない      こうすることには何か理由があり、目的があるのだろう…      必死に冷静になろうとする中で、瞬時にその考えに至った自分を褒めてあげたい      もし、下手に騒いだり抗おうものなら      命はなかったかもしれないのだから……      はやくカリウスが戻ってきてくれることや、誰かがこの状況に気づいてくれることを願う… 男   「立て」      彼に素直に従う      彼はその間に、支払いは自分のツケにするようにマスターに指示をする      マスターはこちらを一瞥すると、軽く片手を上げて答える      どうやらこの男はこの店の常連客らしい      男の振る舞いが自然なのだろう、状況の不自然さにマスターは特に違和感を感じることなく対応した 男   「この店を出る。歩け」      男の指示通り店の出口へと向かう      男はぴったりと背後に着いたままだが、その動きには無駄がないのを肌と感覚で読み取れる      姿はわからないが      ガチャッ!ガチャッ!と鉄の音が響く、鎧か何かを身に着けているようだ。      身のこなしからして、かなりの手練れの戦士なのだろう      彼の支持通りに動いてはいるが      あいかわらず全身の穴という穴から汗が噴き出ている      緊張しているためか、ちゃんと見ていれば自分の動きがぎこちないのがわかるはずだが      このお店は明るいほうではない、むしろ薄暗いと言っていい      店の出入り口の扉に着くまで、誰も気に留めることがなかった      そもそも気づいたとしても      このような静かなお店に訪れるお客が、人のいざこざに首を突っ込もうなどとは思わないだろう      関わるということは、それだけ自分の身を危険に晒す確率を上げるからだ      誰が好き好んで命を懸けるだろう      正義感に溢れた熱血野郎か      よほどの愚か者か……。 カリウス「待て」      いた!!      熱血野郎でも      愚か者でも      そのどちらでもない           腕に確かな自信がある者      カリウスだ!!      彼の言葉で自分は足を止める      真後ろにいた彼はそれを感じていたのか、私にぶつかることもなく足を止めた カリウス「俺の連れをどこに連れていくつもりだ」      この異様な状況にも関わらず      少しも声を荒げることもなく、いたって普通に男に声をかけた      静かな店に、カリウスの低くて渋い声がよく通る      一瞬自分の状況を忘れて      カリウスの登場に胸が高鳴るのを感じた      それと同時に      おもわず涙が溢れそうになるのを必死で堪えた      カリウスとは逆方向を向いているので耐えることが出来た      彼の姿を目にしたら      きっと涙が溢れ出てしまっていただろう…… 男   「ほう、意外と早かったな」     「年寄りだからもっと時間が掛かると思ったんだが」      男はカリウスのほうを向くことなく答えているのがわかる      私の髪に息が吹きかかるのを感じるからだ      男のほうも、なぜかわからないが冷静だ      彼の思惑通りではなかったはずなのに…      それともこれも想定内だったということなのだろうか? カリウス「おいおい、ずいぶんなご挨拶だな?キエーザ」      キエーザ?      どういうことだろう?      カリウスの知り合いなのだろうか?      頭の中が混乱した      男はフンッと鼻を鳴らす キエーザ「アンタこそ、よく俺だとわかったな?カリウス」      正体がばれたのにも関わらず、この男もいたって冷静だ      しかし、冷静さを装っていてもわかる      殺気の鋭さだ!      先ほどまでとは明らかに空気が違う      身体中に突き刺さるような冷たさだ!      顔見知りであることは、まず間違いない      過去に因縁でもある関係なのだろうか?      男に対してのマスターの反応も、これで合点がいった カリウス「長い付き合いだ、後ろ姿だけでわかるさ。お前だって俺を見てすぐにわかったろ?」 キエーザ「ああ、アンタのそのむさ苦しい出で立ちを見れば嫌でもわかるさ」 カリウス「相変わらず口の悪さだけは一人前だなぁ、キエーザ」 キエーザ「アンタの自信家なところもな、カリウス」 カリウス「まぁ、とりあえず場所を変えないか?ここでやりあうわけにはいかんだろ?」 キエーザ「ああ、元からそのつもりだ。想定外なことが起きたがな、だが刻と場所は俺が指定する」      そのとき腹部に衝撃を感じた      思わず「ウッ!!」となる      それと同時に意識が朦朧とする カリウス「貴様!!何しやがる」      カリウスの叫ぶ声が微かに聞こえる キエーザ「すまない、悪く思うなよ」      男が私の耳元にそう囁く      それを最後に目の前が真っ暗になるのだった…。      ガタゴトガタゴトという音とともに、体がゆさゆさと揺れている      瞼を徐々に開ける…      まだ意識が朦朧としているのだろう      状況もわからなければ、此処が何処なのかもわからない……      ただ、なんとなく何かの乗り物に乗っている感じがする      意識がだんだんはっきりしてくると      同時にお腹に鈍い痛みを感じてきた…        揺れる振動で、キシキシと身体中も少し痛む      ”腕を動かせない      手首を何かで縛られているらしい”      幸い      口には何もされていない為、喋ることは出来そうだ      そんなことを考えていると      男に脅されていたときの記憶が蘇ってくる      カリウスとキエーザという男の会話の途中で      急にお腹に激痛が走ったことを思い出す      その瞬間      目の前が真っ暗になり      自分は死んでしまうのだと悟ったはずだ……      そこからの記憶が全くない      そんなことを考えていると キエーザ「起きたか?」       不意に誰かの声がした      声の聞こえたほうに目をやると      男がひとり座っていた      声の記憶からすると、私を刃物で脅した男だろう      ”キエーザ ”      彼はカリウスとは顔見知りらしい      どういう関係なのだろう?      気になる……      そのキエーザだが      見た目はカリウスより断然若く見える      目は切れ長の釣り目で鼻筋がスッと通っている      頬から顎までシュッとして、無駄な骨や肉がついていないスッキリした形だ      私のいた世界で俗に言うイケメンというやつだ      そんなことより      彼に聞かなければいけないことがある     キエーザ「なんだ?」      私の問い掛けに      彼はぶっきらぼうに答える キエーザ「目的?」      しばらく、彼は黙り込んだ        おそらく思案しているのだろう キエーザ「奴が傭兵だったことは知っているか?」      私は頷き      なぜ傭兵を辞めたのかは教えてくれなかったことを伝える キエーザ「そうか、奴は奴なりに罪悪感を感じているのだろう」 私   「罪悪感?」 キエーザ「そうだ、なぜなら…アイツが俺の愛する女を”殺したからだ”」      それを聞いた瞬間      脳天に雷が直撃するくらいの衝撃を全身を襲った!      『殺した?       あのカリウスが?』      信じられなかった      衝撃的過ぎて      頭の中も心の中も理性を保つのがやっとだった      どういうことだろう? キエーザ「どうやら本当に何も知らないらしいな…」     「いいだろう、教えてやる。少し長くなるがな」     「奴と俺はクライアントが同じだったことで、パーティを組むことになった。それまでも何回か顔を合わす程度の顔見知りではあったがな」 「そのときにパーティを組んだのは俺とカリウス、そのときのカリウスの仲間のふたりの4人だ」 「やつの仲間のうちのひとりが女で、名はエメラルダ。治癒の魔法を扱える神官だ」 「そのクライアントの依頼を完遂したあとも、成り行きで俺はそのまま同行することになった…」 「行動を共にするうちに、俺はエメラルダという女に惹かれていった」 「正直自分でも驚いたものだ、それまでは女にはまるで興味がなかったからな」      驚いたのは私のほうだ        彼なら放っておいても女性が寄って来るんじゃないかと思う      それくらい端正な顔立ちをしているし、背丈も結構ある      カリウスががっしりとした筋肉と例えるなら      彼は中肉だが無駄のない引き締まった筋肉だ      彼に 私   「女性にもてたんじゃない?」      と問う キエーザ「ああ、だが興味はわかなかった。鬱陶しいとさえ思ったくらいだ」     「俺がそのとき求めていたのは、強さだけだったからな」     「だが、エメラルダだけは違った。それだけ興味をもたせる魅力があった……そしてなにより美しかった」     「どんなときも微笑んでいたが、口数は少なくどこか儚げで…簡単に壊れてしまい…そうなガラス細工のような女だった」     「なぜカリウスのような男と行動しているのかが不思議だった」     「だが、行動を共にしたことでわかった。エメラルダがカリウスに抱いていた恋心をな」     「彼女がカリウスを見る目は特別だった。まるで女神のようにも、母性にも似た眼差しだ」     「俺は、そんな彼女の近くにいられるだけでいいと思っていた。彼女が幸せならばそれだけでいいとさえ思った…」     「彼女の微笑みはひとの心を癒す力をもっていたからな……俺のすさんだ心はエメラルダの笑顔によって徐々に薄れていった」      カリウスはエメラルダのことをどう思っていたのだろう?      やはり好きだったのではないだろうか?      気になる      キエーザに率直に聞いてみた キエーザ「さぁな、アイツがいつもエメラルダに気をかけていたことは確かだが…俺には親が子に注ぐ愛情のようなものに見えた」     「実際親子ほどの年の差だしな」     「だからだろうな、俺はカリウスに対して嫉妬心のようなものはなかった」     「今でも不思議な関係だったように思う……ふたりがどのようにして出会ったのか、そしてどういう関係なのか…」 私   「聞かなかったの?」      と問う キエーザ「聞いたさ、だが…カリウスははぐらかした。だからそれ以上は聞かなかった…誰にでも秘密や話したくないことはある」     「もちろん俺にもな」     「あるとき、カリウスともうひとりの仲間が話していてな…それを偶然聞いてしまったんだ」     「もうひとりの仲間の男の名はアイザック。高等魔法を扱える魔法使いだ」     「そいつは冷静沈着で、人間をよく観察している。そして人一倍寡黙な男だ」     「そんな男がしゃべっているなんてめずらしいからな、気になって耳を澄ませたんだ」      そう言って彼は、そのときの会話の内容を話しはじめた 回想 カリウス 「なんだ、話って。めずらしいじゃないかお前から話があるなんて、明日雪でも降るんじゃないか?」 アイザック「茶化すな」       カリウス 「フッ……悪い。真剣そうな話だと、ついな」 アイザック「お前の悪いとこだ」 カリウス 「ああ、で…話ってのはなんだ?」 アイザック「キエーザのことだ」 カリウス 「キエーザ?あいつがどうした?」 アイザック「エメラルダに気があるらしい」 カリウス 「そうか」 アイザック「なんだ、もしかしてお前…」 カリウス 「まぁな、アイツの視線を見ていればわかるさ、エメラルダに特別な感情を抱いているのは確かだ」 アイザック「いいのか?」 カリウス 「いいも何もないさ、女に興味がないアイツが興味をもってるんだ、いいことじゃないか?」 アイザック「そうじゃない、お前の気持ちはどうなんだと聞いている」 カリウス 「エメラルダは娘みたいなもんさ、それ以上でもそれ以下でもない」      「それに、キエーザも息子みたいなもんだしな、あいつは女を泣かすような真似をするような奴じゃないことは俺がよく知っている」 アイザック「たしかに、愛想はないが生真面目なのは俺も認める」 カリウス 「それ、アイツが聞いたらお前に言われたくないって怒るだろうな」 アイザック「そんなことはいい。お前がエメラルダを娘だと思っていても、彼女はそうは思っていない。お前もわかってるんじゃないか?」 カリウス 「ああ、だがエメラルダもわかっているさ、俺がそれに応えられないことを…」 アイザック「だといいがな」 キエーザ 「だが、事態はそう甘くはなかった」 私    「どういうこと?」       と話を促す キエーザ 「それからしばらく経ったあるときのことだ」      「カリウスが姿を消したんだ」 私    「姿を消した?…何故?」 キエーザ 「それだけじゃない、エメラルダはその日ひどく気落ちした面持ちだった」      「俺とアイザックは、前日にふたりの間で何かあったということをすぐに悟った」      「念のため周辺を探したが、消息は不明のまま…」      「それ以来、消息を追うため依頼を受けながらも時間があれば情報を探す毎日だった」      「エメラルダの為に……」      「それが俺にしてやれる唯一のことだからな」 私    「あなたは自分の気持ちを彼女に伝えなかったの?」       と聞いてみる キエーザ 「とてもそんなことが言えるような感じじゃなかった…あいつは今にも命を絶とうとするのではないかというほど憔悴していたからな」        「悪いことは重なるものだ」      「ある依頼の標的を追っていた時に思わぬモンスターと出くわしてしまった…ドラゴンだ」      「俺とエメラルダを逃がす為にアイザックは身を挺してドラゴンに立ちはだかった」      「命からがら逃げ延びた俺たちはアイザックを待ち続けた…だがそれっきり二度と会うことはなかった」      「それでも俺は必死に探したさ、カリウスをな」      「もう一度エメラルダの笑顔を取り戻すために」      「俺の力だけじゃカリウスを探すのは無理だと思い、この国の傭兵団に入ることにした」      「そこなら情報も多く得られるだろうし、仲間に手を借りることも出来ると思ってな」       そこでフッと自虐的な笑みを彼はして言った キエーザ 「以前なら考えられなかった。自分が強くなること以外興味がなかった俺が、仲間だの愛する人だのと言っているんだからな」      「それもこれも全部カリウスのせいだ、アイツがこんな俺をパーティに加えなけりゃ俺は今でも一匹狼を気取ってただろう…。」       そう言う彼の横顔は何かを懐かしむような、それでいてどこか悲しげな微笑みを湛えていた       彼は本当は優しい男なのではないだろうか…       彼が語るカリウスやエメラルダ、そしてアイザック       その憂いのある表情は             出会った仲間に対する想いの表れではないかと思う       果たして       キエーザ自身がそれに気づいているのだろうか? キエーザ 「そしてついにその時がきた」      「俺が腕を買われてこの国の傭兵団の第8師団の隊長を任されて、出陣したときだ」      「ついに奴と再会することになった」      「奇しくもカリウスはそのとき敵対する国家だったクリスティアーノ帝国の傭兵になっていた」      「クリスティアーノ帝国は好戦的な国で、この国に侵攻してきた侵略国だ」      「傭兵とはいえ、アイツが何故そのような国に手を貸したのかは定かではない」      「何かの恩義に対する義理立てなのか、それとも自らの意思でなのか…」      「いずれにしろ、立場が全く違う形で再会した」 回想      キエーザ 「やっと会えたな。一目でアンタだとわかった、ずいぶん探したぞ」 カリウス 「久しぶりだな。まさかこんな形で再会するとはな、まったく…皮肉なものだ」       そう言う彼の表情は苦し気に見えた       俺に対するものと、そしてもうひとり       俺のすぐ左斜め後方にいるエメラルダに対するもの       そのエメラルダは、何故か何も言わずことの成り行きを見守っている カリウス 「もう会うことはないだろうと思っていたんだがな」       邪魔をするものは全て切り伏せながら俺たちは会話を続けた      キエーザ 「今ならまだ間に合う…降伏しろ、俺達が戦う理由はない」 カリウス 「お前らしくないな、まるで牙を抜かれた狼のようだ」 キエーザ 「だまれ!!これはあんたの為に言ってるんじゃない!!アンタはエメラルダの気持ちを考えたことがあるのか!!」      「なぜ何も言わず姿を消した!!」 カリウス 「それを知ってどうする?」 キエーザ 「アンタは俺の為に姿を消した!!そうだろ!!」 カリウス 「なぜそう言い切れる?」 キエーザ 「アンタは、俺がエメラルダに好意を抱いているのを知っていたからだ!!!」 カリウス 「さあな」 キエーザ 「エメラルダの好意を受け入れることもできたはずだ!!俺が彼女に好意を抱いてさえいなければ!!」 カリウス 「それは違う!!」 キエーザ 「アンタはエメラルダを娘だと自分に言い聞かせて、自分の気持ちを誤魔化しているにすぎない!!」 カリウス 「知ったような口を…お前に何がわかるというのだ!!」 キエーザ 「アンタは俺やエメラルダの為にやったことかも知れない、だが見てみろ!!誰も幸せになっちゃいない!!」      「俺も、エメラルダも、アンタも!!…それにアイザックも…」 カリウス 「アイザック?」 キエーザ 「アイザックは死んだ…ドラゴンに殺られてな……」      「アンタがいれば彼が死ぬこともなかったはずだ!!!」 カリウス 「アイザックが…死んだ?あの、アイザックが……」 キエーザ 「もういいだろう、降伏するんだ。俺達が傷つけあう必要はないはずだ!!」 カリウス 「あまいな…過去はどうあれ、今の俺はお前の敵だぞ」 キエーザ 「くっ、聞く耳持たずか…ならば仕方ない。エメラルダには悪いが、お前にはここで死んでもらう」 カリウス 「そうだ。本気でかかってこい!じゃないとお前が死ぬことになる」 キエーザ 「ほざけ!!」       俺は怒りに身を任せて奴に斬りかかった       互いに剣を打ち合う       カリウスは流石だった       俺の剣をいとも容易く       弾き       かわし       受け止めた! カリウス 「腕を上げたな、だが!」       そう言うと奴の鋭い切っ先が俺の兜を弾き飛ばす       頬に裂傷を受ける程の鋭さだった      キエーザ 「くっ!!」 カリウス 「どうした、強くなるのがお前が求める唯一のことじゃなかったのか?」       カリウスはまるで俺をわざと怒らせようとしていた キエーザ 「だまれ!!」 カリウス 「お前の本気はこんなものか?そんなんじゃ何も勝ち取れやしないぞ?」 キエーザ 「だまれと言っている!!」 カリウス 「力づくで奪って見せろ!!強さを!!!エメラルダの心を!!!!」       怒りで俺は最早何も見えていなかった キエーザ 「だまれーーーーー!!!」       俺の一撃が、カリウスの太腿に突き刺さる!       奴は剣に刺された方の膝を地につけた       太腿に刺さった剣を抜く       キエーザ 「終わりだ」       こうも簡単に奴に地を突かせれるものなのか…             ”おかしい        何かがおかしい        それが何かわからない ”       そう頭をよぎりながらも          とどめを刺そうと剣を大きく振り上げる   カリウス 「それでいい…」       奴が微笑んだ気がしたときには剣を振り下ろしていた       その時だった!!       振り下ろした剣は思わぬ者の胸を貫いてしまう       全く予期していなかった、いや…予期できたのではないのか…       しばらく自分の剣に突かれた者を信じられないでいた…… カリウス 「エメラルダ!エメラルダーーーーーーーーーーー!!」       カリウスの声で我に返った       俺の剣が貫いたのはカリウスではなく、エメラルダだった……。 キエーザ 「ば、馬鹿な!!…なぜだ!!…何故こんなことに……」       慌てて剣を引き抜くと       傷口から血しぶきが舞い上がり       彼女の身体は力を失って仰向けに倒れていく             カリウスはエメラルダを後ろから抱きかかえ泣き叫んでいる       エメラルダが咳き込むと大量の血が吐き出された       それでも…       彼女は苦しみながらもカリウスを見つめ       何かを伝えようとしていた エメラルダ「貴方に……出会えて………私は…幸せでした……」       それが最後の言葉となった。                   別れの言葉が何だったのか俺にはわからない……       それっきり彼女は動くことはなかった…       もう二度と………       カリウスは泣きながら       エメラルダの名を叫び続けていた       何度も…何度も…………       俺はただ立ち尽くすことしかできなかった……       目から何かが零れ落ちる キエーザ 「俺が泣いている?」       しばらく、声を出せないでいた……       言葉が思いつかない……       きっと       彼の目に映る私の顔は憐みと困惑に満ちていたのだろう キエーザ 「そうだ。俺の剣によって、”エメラルダは死んだ”」      「アイツがあんな真似さえしなければ彼女が死ぬことはなかった!」 私    「あんなこと?」       と彼に問う キエーザ 「ああ、アイツは自ら俺に命を差し出す覚悟だった。だから奴はあのときに微笑んだんだ」      「奴に勝てるはずがないのは俺が一番よく知っている。例え天地がひっくり返ったとしてもな…」       自虐的にそう語る彼の顔は       苦渋に満ちていた……       少し間を置いて彼に聞いてみた       何故彼は降伏しなかったのだろうと       カリウスだって、かつての仲間と戦いたくはなかったはずだ       ましてやエメラルダがいたらなおさらだ キエーザ 「傭兵とはいえ、国に雇われてる以上は簡単に降伏はできないだろう」      「それに立場もある。おそらく奴の腕なら傭兵団長を任されていてもおかしくはない、俺ですら隊長だからな」      「まぁ、アイツの性格だ。雇い主を裏切るような真似はしたくないだろうさ、それが一番の理由だと思って間違いないだろう」      「俺の考えが甘かったと言わざる負えない、エメラルダを目にすれば心が揺らぐだろうとたかをくくっていたからな」      「なんにしろ、俺はその戦の後傭兵団から抜けた」      「ずっと悔やんだ。あのときどうすれば良かったのか…」      「結局、答えなどみつかりはしなかった」      「もうカリウスを憎むことで自らを納得させる他なかったのさ……」       話し終えると彼は目を伏せた       しばらく沈黙が続いた       彼はわかっているのだ       カリウスのせいではないことを       むしろ自責の念にかられているに違いない       彼の瞳には       今、何が映し出されているのだろう       過去の幻影だろうか?       それとも……。 キエーザ 「今度はお前の番だ」       不意にキエーザが私に話を振ってきた キエーザ 「俺は、お前が何者かを知っておく必要がある」       彼に頷いて       ある程度かいつまんで事の成り行きを話した         信じてもらえるとは思っていない       ただ、彼に嘘はつきたくなかった       彼が嘘偽りなく自らの話をしたのだから…             彼は私の話に静かに耳を傾けていた キエーザ 「なるほどな。にわかに信じ難い話ではあるが、あり得ない話ではないとも言える」 私    「どういうこと?」       と話を促す       すると驚くべきことを話し出した キエーザ 「俺も何度か聞いたことがある。此処とは違う世界から来たとかいう者の話を」       にわかに信じられなかった       いや       自分で言うのはなんだが、ちょっとだけ自分は特別なのだと思っていたのだ       『恥ずかしい!!』       おそらく顔が真っ赤になっているだろう       実際は顔だけでなく全身かもしれない       どっと汗が噴き出しているからだ       なるほど       どうりで彼は、私の話を冷静かつ真剣に聞いていたわけだ… キエーザ 「まさかお前がその当事者とはな。驚いたぞ」       そう言う彼の表情はとても驚いているようには見えない       しかし、その話は聞かなければいけない       有力な手掛かりになるかもしれないのだから キエーザ 「悪いな。俺も詳しくは知らない」       ショックで肩を落とす         まぁ、勝手に期待した自分が悪いのだが…。 キエーザ 「ただ、ここからもっと北のほうに行くとヴェルナー国の領土に入るんだが、       そこのルカク村という小さな村からその情報が流れてきたらしい」      「あくまで噂だがな」       いや、充分だ!       これほど重要な情報は今まで聞いたことがない       嬉しさのあまり、思わず叫んでしまったぐらいだ キエーザ 「おいおい、喜びすぎだ。あくまで噂だと言ったろ?」       彼の言う通りだ       舞い上がり過ぎた       ぬか喜びになるかもしれない キエーザ 「それに、今のお前の状況を直視するべきだと俺は思うがな」       たしかに       それでも、彼には礼を言おう キエーザ 「知ってることを教えてやったまでだ。気にするな」      「それにしても、噂のドラゴンスレイヤーはやはり奴だったか…」       馬車が止まる       キエーザ 「着いたぞ」      「悪いが声を出せぬよう口を塞ぐぞ」       そう言って彼は       口を紐状にした布で塞ぎ、後頭部で縛った      「余計なことを喋られたくはない」           「決着をつける為にな」       彼の表情が意を決心しているかのように見えるのは気のせいだろうか       嫌な予感がする       その予感が当たらなければいいのだが キエーザ 「降りろ」       先に馬車から降りた彼に促されるまま馬車を降りる       相変わらず手は縛られてはいるものの、足は拘束されていない為       なんとか自分で降りることが出来た キエーザ 「気の早い奴だ」       呆れたように彼は言う キエーザ 「見てみろ。もう来ていやがる」       そう言って彼は顎をクイッと一瞬動かす       辺り一面短い草の生えた草原の中       ひとりの大男が瞳を閉じ、腕を胸の前で組み仁王立ちしている       身動き一つせずに…       例えるなら待ち構えていると言ったところか       その姿が様になっている        ”カリウスだ ”            彼のいる所まで歩く       私はキエーザの左前を歩く格好だ       それを感じてか、カリウスはゆっくりと瞼を開ける カリウス 「待ちくたびれたぞ。キエーザ」       そう言って微笑む彼の表情は、いつもと変わらない       だが       彼から発せられる気迫のようなものは、彼の今の心情を物語っているかのようだ キエーザ 「そう焦るな、カリウス」       キエーザも決して物怖じしない      「久しぶりの再会だ、積もる話もあるだろう?」       彼の心を読み取れない       何を考えているのだろうか       言い知れぬ不安感が身体中を駆け巡る カリウス 「ああ、だが今ここで話に花を咲かせるつもりはない」       カリウスらしくないと思った…       いつどんなときも冷静な彼が       怒りに打ち震えているように見える キエーザ 「アンタらしくないな」 カリウス 「俺らしく…だと?」 キエーザ 「ああ、アンタはいつだって物事に対して常に冷静だった。癪に障るぐらいな」 カリウス 「そうみえたか?俺に言わせれば、お前こそそんなべらべら軽口をたたく奴じゃなかったと思うがな」 キエーザ 「フッ、お互い様ってやつか。まぁアンタが腹を立てるのも無理はない」      「ここが俺とアンタにとっての因縁の場所だからな」       そう彼が言うと       二人の表情が曇る       言い知れぬ深い悲しみのようなものを、ふたりは背負っているのだ       きっとここが彼女       エメラルダの最後を看取った場所…… キエーザ 「それとも、この娘を…人質にしているせいなのか……」       それに対しカリウスは何も答えなかった。       ただし、キエーザを見据える目は尋常ではなかった            その瞳の奥には、並々ならぬ感情が渦巻いているように見える       キエーザ 「本題に入ろう」 カリウス 「まて!その前にその娘を返してもらおうか」 キエーザ 「断る」       空気が張り詰めた         緊張感が走る カリウス 「どういうつもりだ?キエーザ」       カリウスの表情が一変し、険しくなる   キエーザ 「どういうつもりだと?言った通りだ。この女は返さない」       カリウスの眼光が鋭くなる カリウス 「何が望みだ」 キエーザ 「望み?しいて言うならあのときの決着をつけるってとこか。此処でなら邪魔は入らない、だろ?」 カリウス 「邪魔?まさか…エメラルダのことを言っているのか?」 キエーザ 「だとしたらどうする?」       キエーザは不敵な笑みを浮かべる カリウス 「貴様、あいつを愚弄しているのではあるまいな?」       カリウスが怒りに震えているように見える       空気がヒリヒリするのはそのせいなのかもしれない キエーザ 「愚弄?違うな、褒めているのさ」       キエーザは怯むどころかさらに輪をかけて挑発する カリウス 「なに?」 キエーザ 「愛する男の為に命を捧げたんだ、称賛に値するさ」 カリウス 「貴様!」       カリウスは背中に背負った大剣の柄を握る キエーザ 「おっと、まだだ」       彼はそう言うと       ナイフを私の首に突き付けた! キエーザ 「いいのか?この女が傷いても」       キエーザは本気で言っているのだろうか?       違う!!       彼には何か考えがあるに違いない       その考えがなんなのかまではわからない       だが、どうしても嫌な予感が頭から離れない カリウス 「くっ、舐めた真似を」       カリウスは柄を握ったまま吐き捨てる    キエーザ 「言ったろ?決着をつけると」   カリウス 「どういう意味だ?俺と決闘するんじゃないのか?」       カリウスは怪訝な顔をした       私もそんな顔をしていたと思う       キエーザが意図していることをまだわからないでいる キエーザ 「ああ、そのつもりだ。だがその前に、アンタにはいくつか聞いておかなければいけないことがあってな」      「アンタ、あの戦のあと傭兵を辞めたんだってな?」      「聞いた話じゃ、賞金稼ぎをしているそうじゃないか?」       カリウスは黙ったままだ   キエーザ 「しかも、噂じゃあ罪を犯した者か人に危害を加えた魔物以外は狙わないらしいな?」 カリウス 「だったらなんだ?」 キエーザ 「それがアンタにとっての罪滅ぼしってやつか?」 カリウス 「そんなつもりは毛頭ない。お前のほうこそ、傭兵を辞めた理由はなんだ?」      「自分自身に対する戒めか?」       キエーザは驚きの表情を隠せなかった キエーザ 「まさか辞めたのを知っていたとはな」      「なら、話は早い」       そう言うとキエーザは表情を切り替えた             真剣だ キエーザ 「なぜあのとき、わざと俺に止めを刺されようとした?」       カリウスは少し思案しているように見えた カリウス 「何のことだ?言っている意味がわからんな」 キエーザ 「とぼけるな。俺が止めを刺そうと剣を振り上げたとき、アンタは言ったんだ」      「それでいいってな…」       カリウスは何も言わず黙っている キエーザ 「そして、目を閉じたんだ。微笑みながらな…まるで死を望んでいるかのようにだ」 カリウス 「考えすぎだ? お前は潜在意識の中で自分の都合のいいように記憶を置き換えているだけさ」 キエーザ 「記憶を置き換えてるだと?もしそうなら、どれだけよかったか」      「アンタにわかるか!あの瞬間が目に焼き付いて離れない俺の気持ちが!!」      「思い返したさ…何度も、何度も何度も何度も何度も何度も!!!」      「何度思い返しても答えはいつも同じ。当たり前だ、それが事実だからだ」      「だが、真実を知らない」      「アンタがなぜあんな真似をしたのか!他にもっといい方法があったはずだ!アンタならそれがわかったはずだ!!」       キエーザの握りしめた両手の拳から血が流れ出していた       行き場のない怒りが握った拳の強さの表れかもしれない カリウス 「俺もお前と同じさ、あの瞬間がときおり悪夢となって蘇ってきやがる」      「その度に俺は、自責の念にかられる。なぜあの選択をしてしまったのか…」      「俺があんなことをしなければ…エメラルダは死なずに済んだはずだってな……」       彼の口元から血が流れていた       それだけ強く唇を嚙み締めているのだろう       ふたりとも苦しんでいるのだ       過去に心をずっと囚われたまま………。         カリウス 「俺はあのとき、お前たちを見て動揺した。正確な判断ができなくなっていたことは確かだ…」      「エメラルダが死んだのは俺のせいだ。お前が責任を感じる必要はない」       カリウスがキエーザに対し憐れんでいるかのような眼差しを向ける キエーザ 「アンタは雇い主を裏切るような真似はしない、それに大義を重んじる、それが選択肢を狭めたんじゃないのか?」 カリウス 「さぁな……仮にそうだとしても、エメラルダが死んだ理由にしたくはない。それじゃああまりにも残酷じゃないか……」 キエーザ 「残酷?そうさ、アンタは残酷なんだよ」 カリウス 「どういうことだ?」 キエーザ 「わからないのか?アンタともあろうものがとんだお笑い草だ」      「アンタがもし、あのまま俺に殺されていたらどうなっていたと思う?」       そう言うとキエーザは       右の腰に下げた剣を抜きながらカリウスのほうへ歩を進める キエーザ 「俺はエメラルダに一生恨まれただろうってことさ!!」       その瞬間一気に距離を詰めてカリウスに斬りかかる            金属が激しくぶつかり合う音がする       カリウスはキエーザのそのするどい一閃を大剣で受け止めたのだ       その彼の表情は明らかに動揺している キエーザ 「アンタはエメラルダのことをまるでわかっちゃいない」      「アンタがいなくなってから彼女は生気を失っていたんだよ、生きる屍のようにな!!」       キエーザの繰り出す剣をカリウスは全て受け止めてはいたが       いつもの精細さがないのは明らかだった キエーザ 「アンタがしようとしたことがいかに残酷なことかわかるか!!」      「俺にとっても、エメラルダにとってもだ!!」      「どうした!反撃してこい!!」       キエーザの剣の激しさが増していく       心がざわめく       嫌な予感が当たらなければいいが       叫びたくても口が塞がれていて声が出せない       彼らのほうへと駆ける       だが手首を拘束されていて上手く走れない       間に合うことを祈りながらひたすら走った キエーザ 「アンタはまた同じことを繰り返すつもりか!!」       そのとき放った一撃がカリウスの頬をかすめる キエーザ 「うおおおおおお!!」       止めを刺そうと彼は剣を大きく振りかざした!!       私は無我夢中で走った!!       このままでは最悪の事態になってしまう!!! キエーザ 「がはぁああ!!」       間に合わなかった!!!       カリウスの大剣がキエーザの腹部を直撃したのだ!!       キエーザの身体が宙を舞う       高く、遠くへと吹っ飛ぶ!!!       それほどの衝撃を身体にまともに受けたということだ!!!       私は反転しキエーザのところへと駆けていた!!       反射的に体が動いていた カリウス 「キエーザ!!」       後方でカリウスの叫び声がする       おそらく彼もキエーザのもとに駆けてきているのだろう             キエーザのもとにたどり着くと       必死に声をかける!!! キエーザ 「はぁはぁはぁはぁ」       まだ息がある!!       血は流れていない       おそらく打撃によって骨や内臓にかなりの損傷を受けたのだ!!!       もはや呼吸さえ困難といった状態だ!!       虫の息       まさにその例えが等しい…… キエーザ 「お前か…俺のことはいい……あいつのところに行って…がはぁあ!!」       彼の言葉で咄嗟に振り返る カリウス 「俺なら大丈夫だ」       すでにすぐ後ろに立っていた       切り傷が数か所あるみたいだが、大事には至らないのだろう カリウス 「キエーザ、なぜ避けようとしなかった」       そう、彼の言う通りキエーザはわざと避けなかったのは明白だった       心のどこかでわかっていた気がする            こうなってしまうことを……。 キエーザ 「償いさ…。」       カリウス 「償いだと?何をバカなことを!!」 キエーザ 「俺がアンタ達と出会わなければ……こんなことにはならなかった………幸せでいられたはずだ……」 カリウス 「何言ってやがる、俺もエメラルダもそんなこと一度たりとも思っちゃいない!あの無愛想なアイザックだってな!」 キエーザ 「ほんと…に…そう…か…」   カリウス 「ああ、そうだ!だからお前が責任を感じなくていいんだ」       その言葉を聞いてほっとしたのかキエーザの目から涙が一気に溢れだした キエーザ 「はぁはぁ…恨まないのか?」 カリウス 「バカ野郎!これっぽっちも恨んじゃいない!!むしろ感謝している、お前と出会えて良かったってな」 キエーザ 「俺も…アンタ達と……一緒に旅が出来て……幸せだった……」        「ぁぁああ…ああ…真っ暗で……何も見えない………傍にいるのか?」 カリウス 「ああ、傍にいる。俺もお嬢ちゃんもな、だから安心しろ」  キエーザ 「はぁはぁ…そうか……嬢ちゃん…怖い思いさせて…悪かったな…アンタには感謝している……ありがとな」 私    「私こそ、あなたには感謝している」       と答える キエーザ 「はぁはぁ…カリウス…この街で再会できたのは……偶然じゃない」 カリウス 「もう喋らなくていい…ゆっくり休め」 キエーザ 「ドラゴンを倒した奴が……街に向かっていると…聞いたんだ」      「はぁはぁはぁはぁ…そんなことが出来るイカれた野郎は…アンタしかいないと思った…はぁはぁ」       彼は苦悶に堪えながら微笑んだ       カリウス 「ああ、イカレ野郎さ…それがお前の親父だ」       そう答えた彼の優しい微笑みは我が子を愛する父親そのものだ             キエーザ 「はぁはぁはぁはぁ…アイザックの…仇をとってくれて……はぁはぁ…ありがとう」      「はぁはぁはぁはぁ…ドラゴンスレイヤーカリウス………。」       彼はそう言うと安心したのだろう       光を失った瞳を閉じ         静かに息を引き取った       その表情には憎しみも悲しみも消え、安らかな笑みを浮かべていた……       今ならはっきり言える       カリウス、キエーザ、エメラルダ       彼らは本当の親子以上の絆で結ばれていたのだと………。       カリウス 「キエーザ、エメラルダ、お前たちを愛してる」      「そしてアイザック、ふたりを守ってくれてありがとう」      「こんなことになって…すまない」             そう言って彼は空を見上げる       カリウスの目から一筋の涙が零れ落ちた            その日の夜            今はフォーデンの街の宿の一室にいる       ひとりで…。       この日、街は人で溢れていた       ちょうど三年前のこの日       このデブライネ王国とクリスティアーノ帝国との休戦協定が結ばれたという       グアルディオラの戦いと呼ばれた戦のあった日       そして       エメラルダの命が散った日         命日だったのだ       そしてまた       ひとつの命がこの日散っていった……       キエーザ       彼はこうなることを望んでいたのだろうか?       今となってはわからない       そうやって美談にしてしまいがちなのは       人の悲しい性なのかもしれない………。       今日は休戦協定が結ばれた日を祝う       祝宴の祭り【プレミア祭】       この日は街中がより一層賑やかになり       屋台や的屋といった出店がたくさん開かれる       この部屋にも       その賑わう様子が、壁を隔てて声となり音となって聞こえてくる       私たちも、普段であればきっと       そのお祭りに参加していただろう       だが       今の疲労と心情では       とても参加するような気分にはなれないでいた……。 数時間前            帰って来て宿に戻ってすぐ カリウス 「疲れたろ、ゆっくり休むといい」       そう言ってカリウスは出かけた       ひとりになりたかったのだろう       あんなことがあれば       誰だって気持ちの整理をつける時間が欲しいだろうと思う…       傍に居れなくて少し寂しい気もした       だが       心身ともに疲れていたのか       いつの間にか眠ってしまっていた       起きたときには日が落ちていた       カリウスはまだ帰って来てはいなかった       部屋の窓を開けて       外の祭りの様子を何を考えるでもなく眺めていた       この宿は二階建てで       この部屋は二階にあり       近辺の様子を見るには最適だが       さすがに祭り全体を眺めるには適してはいなかった       それでも       すぐ近くで祭りの賑やかさを肌に感じれるから、これはこれでいいものだ       出店で売られている色々な食べ物の匂いを嗅いでいると       お腹が空いてきた       帰って来てからまだ何も食べていなかったのだ…       いや       正確には何も食べる気が起きなかった……       しかし       気持ちが沈んでいても       人はお腹が空けば、食欲が否が応でも増すもので       そんな自分がちょっと悲しくさえ思う……。       バタン!!と       ドアが勢い良く開いて身体がビクッ!!と大きく震える       ドアのほうへ振り向くと       ”カリウス”だった。       ひとめで酔っ払っているのが見てとれた       しかも尋常じゃないくらいに       こんな彼を見たのは初めてと言っていい       ちなみに       お祭りのおかげで部屋をひとつしか取れなかった       いや       この場合、取れただけでも幸運とみるべきだろう       その為       彼がこの部屋に入ってきたのは、ごく自然なことなのだ         彼はよろよろと地に足がつかないような形で歩く       慌てて駆け寄り解放しようとするが、なんせ大男でしかも筋肉の塊と言っていい       私ひとりで動かすことなど不可能だ       その為       彼に肩をかすような形で       ふたりしてふらふらと、木製でできたセミダブルほどのベッドへ連れていき       ベッドに着いた時には       ふたりして倒れ込んでしまう       彼が私に覆いかぶさるようにだ       その為       一瞬息が詰まり、危うく死んでしまうんじゃないかと思った程だ       幸い       ベッドにかけられた羽毛でできたであろう掛け布団がクッション代わりとなったおかげで       なんとか助かった       かなりの量を飲んだのだろう       お酒の匂いが一瞬で部屋中を満たしてしまった       なんとか彼を押しのけて、ベッドから這い出ることができ       彼に水を飲ませてあげようと       竹でできた水筒のようなものを荷物から取り出して、飲ませようとするのだが       なかなかうまくいかない       仕方なく       口に水を含んで、彼に口移しで飲ませる       数回それを繰り返すと       彼は意識がハッキリしてきたようだった       こんなになるまで飲むなんて       余程辛いのを堪えていたに違いない       息子とも言えるべき存在を失ったのだ       それも自分の手によって……。 カリウス 「すまんな」       彼は仰向けに寝たままの状態で       両目を右手の甲で隠しながら謝る       それに対して 私    「気にしないで」       と答え       また窓際に立って夜空を眺める       満点の星空が気持ちを落ち着かせてくれる 私    「夜風が気持ちいわね」       と独り言ちると カリウス 「ああ、いい風だ」       少し酔いから冷めてきたのか、彼が相槌を打ってくれる       ふたりともしばらくの間、何も話さなかった       お祭りの音色と       人々の賑わう声と       優しく吹き通る風が心地いい       沈黙が続く…       ふと思う       今日は初めて       カリウスと同じ部屋で寝るのだ…   野外では近い場所で寝てはいたが       それとはまた事情が異なると言っていい       心なしか胸の鼓動が早くなるのを感じる       先ほどまでお腹が空いていたのが嘘のようだ       今はもうそれどころではなかった       何を期待しているのだろう       あんなことがあったばかりなのに……       そんな不埒な自分を恥ずかしく思う       彼がそんなことするはずがないのに………       そう思うと       急に寂しさと悲しみの入り混じった感情が身体中を覆う       まるで       お祭りの後の帰り道にも似た感覚のように       すると       背後から突然抱きしめられた       思いもよらないことで       頭の中が混乱する       カリウスの筋肉質で太い腕が       自分の両肩の上部からまわされて       ちょうど胸の上あたりで交互に組まれた状態だ       ギュッ!と抱きしめた腕に包み込まれることで       安心感のようなものが生まれる       あの寂しさと悲しみを       一瞬で忘れさせてくれた       それと同時に       鼓動が激しくなる       彼に聞こえてしまうのではないかと思うと       急に恥ずかしさが込み上げてきて       顔と耳が紅潮していくのがわかる       彼は、出かけるときに装備を外していたこともあって       直に彼の分厚い胸を背中に感じると       つい彼の肉体美を想像してしまい       さらに身体中から汗が噴き出てくる         彼の汗とお酒の入り混じった匂いに       自分から噴き出た汗の匂いが重なり       なんとも形容し難い香りが鼻腔をくすぐり       否が応でも興奮してしまう       それを彼に気取られないように       必死に抑え込もうとするが       身体のほうはそれに反比例するかのように疼いている       もしかしたら、濡れてしまっているかもしれない       そんなことを考えていると・・・       花火が舞い上がった       ちょうど       空けたままの窓からも見える       次々に打ち上げられるカラフルな花火が       様々な模様を描いて美しい カリウス 「綺麗だ」       彼が優しい声音で耳元に呟く       それに同調して、私も 私    「綺麗ね」       と答える       すると彼はクスッと笑い カリウス 「花火よりもお前のほうが綺麗さ」       どうやら       私に向けた言葉だったらしい       気恥ずかしさはあったが       凄く嬉しかった 私    「バカ」       と言って       その気持ちを隠すかのように       誤魔化す       最後に打ち上げ花火を見たのはいつ頃だっただろう       自分がいた世界では       近年細菌による流行病のおかげで       花火大会のような人が密集する催しが激減してしまっていた       皮肉なものだ       こうしてこっちの世界に来たことによって       再び打ち上げ花火を見ることが出来たのだから       しかもカリウスに抱きしめられながら……       自分の気持ちが今はっきりとわかった       カリウスのことが好きなのだと       好きになってはいけないと       自分の気持ちに歯止めをかけてきた       でも       もう抑えることが出来ない       ”それくらい彼のことが好きなのだから”       彼はそっと腕を解き       両肩に優しく手を載せ       私をゆっくり自分のほうへと向かせる       恥ずかしくて       彼の顔が直視できない…       彷徨う瞳の中に       時折、彼の顔が映る       彼が私に向ける視線を感じて       身体がもぞもぞするような感覚に囚われる…       きっと顔が真っ赤に染まっているに違いない       顔が火照っていくのがわかる…       耳全体が熱い       緊張のせいか       口の中の水分が失われていく…       身体も震えている…       心臓の鼓動が高鳴り       脈が速くなる…       ふいに目が合い       咄嗟に逸らす…       心臓が張り裂けそうなほど       鼓動が激しくなる…       恥ずかしすぎて       上唇と下唇を強く結ぶ…      カリウス 「恥ずかしいか?大丈夫」       そう彼が囁くと       私を優しく       包み込むように抱きしめた       まるで       ガラス細工を壊してしまわないように……       彼の鋼のような筋肉と温もりを全身に感じる…       まさに       ”男を感じる”       とはこのことだと思う       心臓の高鳴りが       さらに増していく…… カリウス 「深呼吸して」       深く息を吸うと       彼の汗とお酒の匂いの混ざった香りが       鼻と肺の奥へと流れていく…       それはとてつもなく甘美で       脳に刺激を与えて       目を眩ませた…       ドーパミンをくすぐられる感覚に陥る       その匂いが       安定剤のように       私の心を落ち着かせていく……       すると       彼の鼓動を感じることができた…       彼の落ち着いた速度の鼓動が       私の意識を取り戻していく……… カリウス 「落ち着いたか?」       私は小さく頷く       カリウスが抱く力を緩め       腕を私の腰に回すと       彼と正面から向かい合う格好になった       俯いて、まだ目は下げたままの私を見ると カリウス 「俺のほうを向いてごらん、ゆっくりでいいから」       私は一呼吸してから       ゆっくりと       視線を上げていく…       彼の露になった上半身は       まさに彫刻のような肉体美だ       こんな間近で直視したことはなかったから       凝視してしまう       名残惜しむ気持ちを抑えて       再び視線を上げていく…       ゆっくり       ゆっくりと…       六つにくっきりと割れた腹筋       分厚い胸筋       盛り上がった幅広い肩       頑丈そうな太い首       微笑を湛えた彼の凛々しい顔       そして       彼と目が合う…       エメラルドグリーンの瞳が       月明りで       今はディープグリーンと化している……       落ち着いていた鼓動が       再び激しさを増していく…       それでも今度は目を逸らさず       彼の瞳をじっと見つめる…       相変わらず       顔は紅潮したままではあるが       今はきっと       薄紅色へと変色していることだろう…             恥じらう少女から       恋する乙女へと移り変わるように………       しばらく       そのままじっと瞳を見つめあう…       私の瞳が涙で潤んでいく…… カリウス 「好きだ、愛してる」       彼の言葉に反応するように       左目の涙が零れ落ち       頬を伝っていく       彼の右手が       私の左頬に       優しく触れる       そのまま       親指で私の涙をすくい取り       瞳をみつめたまま       彼がゆっくりと顔を近づける            彼と私の唇が       優しく触れ合う…       彼の柔らかい唇が触れた瞬間       身体中に電流が走るのを感じた…       火照った身体が       さらに熱を帯びる…       私の中が熱く煮えたぎり       潤いが増していく…       彼が目を閉じる       それに呼応するように私もゆっくり目を閉じた…       唇が触れたまま       彼の両腕が       私の腰の後ろへまわされ       優しく抱き寄せられる       私も       彼の腰に腕をまわす       小鳥がついばむように       優しい口づけを繰り返す       気持ちの高まりがさらに増していく       もう我慢が出来ない…       私を滅茶苦茶にしてほしい……       何も考えられなくなるくらいに       その以心が       伝心したのか       彼の舌が       私の唇の間をこじ開けて舌に絡みついてくる       私も彼の舌に絡ませあうように舌を動かす       感覚を研ぎ澄ませ       全てを注ぎ込むように       互いに唇を貪りあう       唇を舐めあい       唇を優しく嚙み合い       舌を絡ませあい       舌を吸いあう       彼の全てを受け入れ       私の全てを与えるかのように       優しく       ときに激しく       互いの存在を確かめ合う       感情の赴くままに       彼に全てを委ねよう       彼に全てを捧げよう       そして       私は彼の全てを受け止めよう       彼の全てを愛し、受け入れよう             彼の唇が離れると       私の唇との間に       一筋の唾液が糸となって橋を架ける       カリウスと目が合うと       彼は微笑み       片方の腕を肩に回したかと思うと       もう片方の腕を       私の両膝の裏を抱え込むようにしてすくい上げる       一瞬驚いたが       一連の動きのスムーズさに胸がキュンとする       ”お姫様抱っこ”されたのだ 私    「恥ずかしいってば」       とつい口に出してしまう       本当に恥ずかしくて       顔を再び赤らめる       おそらく       耳の先まで真っ赤だろう       顔から湯気が出そうだ       実際、出ているかもしれない             でも       それ以上に嬉しかった       憧れのお姫様抱っこを       大好きな彼にしてもらえるなんて       幸せ過ぎる!! カリウス 「嫌か?」       嫌なわけないじゃない       嬉しいに決まってる       そう思いながらも 私    「意地悪」       と言って       恥ずかしさのあまり顔を背ける カリウス 「お前、可愛いとこあるじゃないか」       彼が耳元で囁く       顔から火を噴きそうなくらい恥ずかしくなり       おもわず 私    「ばか」       と言ってしまう カリウス 「誉め言葉と受け取っておくよ」       そう言って彼は私をベッドへと運び       そっと降ろしてくれる       私を降ろしきると       優しく口づけをしてくれる       そして       少し乱れた私の髪の毛を整えるのと同時に頭を優しく撫でる       何も言わず       ただ見つめながら…       それがとても心地よかった            父親にあやしてもらってるような、そんな感覚       安心感を与えてくれる       『もっと、キスがしたい!!』       その気持ちが通じたのか         彼がキスをしてくれる       甘くて深いキスを       濃くて激しいキス       脳が溶ろけるようなキス       キスをしながら       彼の右手が私の左胸を服の上から優しく撫でる       おもわず吐息が漏れる       『気持ちいい!』       久しぶりに男に触られたのと       大好きな彼に触られたのとが相まって       敏感になっているらしい       少し触られただけでも反応してしまう       そういえば       生理を終えたばかりなのも拍車をかけているのかもしれない       彼が興奮しているのが息遣いでわかる       私も興奮が抑えきれずに息遣いが徐々に激しく、そして荒くなる       ふたりの息が混ざり合い甘美なものへと変えていく       部屋中を私たちの体臭が充満していく       その匂いでふたりの興奮度がさらに増し       互いに相手を求める       彼はキスをしながら私の服のボタンを丁寧に外していく       最後のボタンを外し終えると唇を離し     カリウス「お前の全てを俺に見せてくれ」            耳元で彼が囁く       服をゆっくりと脱がしていくにつれて       私の肌が露になっていく…       この世界にはブラジャーというものは存在せず       その為、乳房と乳首がすぐに顔を覗かせる       さすがに恥ずかしくなり       咄嗟に両腕を胸の前で交差させて乳房を隠す       またもや       顔が紅潮していき横に顔を背ける       彼は強引に腕を外そうとはしない       そのかわりに       そのまま私を抱きしめ カリウス 「すごく綺麗だ」       そっと耳元で囁く       艶のあるその声が       魔法のように全身に染み込んで       私の緊張と恥ずかしさを和らいでいき       私の中の潤いが増していく…       その魔法のおかげで       彼に抱かれたまま組んだ腕をゆっくり解いていく       すると彼は       少しだけ腕の力を強めてギュッと抱き寄せる         彼の身体と私の身体を隔てるものはもう何もない       密着しているのだ       お互いの火照った身体が合わさることで       さらに温度を上昇させていく       こっちの世界に来てから人肌が恋しくなるときが度々あった       そんな密かな願いを       最愛の彼が叶えてくれた       ”この温もりは決して忘れない       ずっとこのままでいたい”       彼の心臓の音が       私の心臓の音と重なり合い       ハーモニーを奏でる       目を閉じ、その響きに耳を澄ませると       心が満たされ癒されていく……      カリウス 「さぁ、お前の綺麗な身体を俺にみせてくれ」       彼がそう言って       抱いていた腕をゆっくり解いていく       私は顔を背けたままだが       もう腕で乳房を隠すようなことはしなかった       窓から差し込む明かりで照らされた私の身体は       彼の瞳にどう映るのだろう…… カリウス 「なんて美しいんだ」        彼がそう呟き カリウス 「こんな美しいものは見たことがない、まるで女神だ」       彼が耳元で言った最大級の誉め言葉       正直、すごく恥ずかしい!       でもそれ以上に嬉しかった!!       正面を向き       彼の瞳をまっすぐ見つめる       見つめ合うひととき       何も話さなくても幸せな時間       『時が、このまま止まればいいのに…』       魔法使いにかけられた呪いの魔法を解くかのように       彼がそっと口づけをする       優しいくちづけ       そのくちづけで時が動き出す       再び動いたふたりの時間はもう止まらなかった       激しく熱いキス       競い合うかのように唇を奪い合う       絡み合う舌は蛇の交尾のごとくいやらしい       唾液はまさに蛇から出た毒       混ざりあったその毒が全身に回り       思考を麻痺させる             唇を貪りあいながら       彼がベッドに私の上半身を押し倒す             そのまま彼の両手が私の乳房を優しく、ときに激しく揉みしだく カリウス 「すごく柔らかくて、気持ちがいい」       そう彼が耳元で囁く       揉みしだく手が激しさだけに変わる カリウス 「乳首が勃起しているぞ、気持ちいいか?」       彼の片方の手が、硬くなった私の乳首を指で少し強めに摘まむ       その瞬間       電流を流されたように私の身体はビクッ!!と弾かれたように背を仰け反らす       たまらず呻く カリウス 「敏感だな」       そう彼は耳元に囁き、唇で口を塞がれてしまう       行き場のない吐息のかわりに鼻息が荒くなる       彼が、乳首を摘まんだ指を優しく転がすように動かす       もう片方の手は強弱をつけながら胸を揉みしだく       口は唇と舌で犯されながら……       気持ちよすぎて身体をよじらせるが       その呪縛からは逃れられない       徐々に乳首を弄る指の力が強まる       気持ちよさから逃れようと必死に体をよじろうとするが       彼は決して逃がさない!!       当たり前のことだが       力の差がありすぎるのだ!       ”私の股間が疼く”       カリウス 「こういうのはどうだ」       彼が乳首を弾く!       身体が跳ね上がる!!       彼が押さえつける力をわざと緩めたのだ       あまりの刺激におしっこをちびったような感覚がした カリウス 「いい感じっぷりじゃないか」       意地悪く彼が耳元で囁いた       思考が正常であれば       穴に入りたくなっただろうが       今は思考が異常だ!       その言葉だけで興奮度が増し       陰部を刺激する!       アソコはもう愛液が溢れ出ているかもしれない       その反応を楽しむように乳首を弾く!       その度に身体が       ビクッ!ビクッ!と反応してしまう カリウス 「かわいい反応しやがる」             彼はそう耳元に囁き       優しい口づけをする       そして       私の乳首を勢いよく吸う!       あまりの強い刺激に       叫びに近い喘ぎ声を上げてしまう!!       小窓は開いたままだ!       お祭りで賑わってるとはいえ       聞こえてしまうかもしれない……       必死に声を堪える!       そんなことはおかまいなしに       乳首を舐め回すカリウス!       片手は私のもうひとつの乳首をこねくり回す!       弾いたり!!         引っ張ったり!!       押し込んだり!!       捻ったり!!       強く摘まんだり!!       ありとあらゆる方法で勃起した乳首を弄ぶ       喘ぎ声が漏れてしまうのを防ぐために       自分の人差し指を口に咥える       それでも       声にならない声が隙間から吐息と混ざり合いながら漏れる カリウス 「もっと気持ちよくしてやろう」        彼の囁き声が耳に微かに聞こえる…       頭が朦朧としてはっきりと聞き取れなかった……       だが、次の瞬間理解した       彼の空いたほうの手が下腹部へと下りていき       陰部       ”私の一番敏感な場所 ”       クリトリスに触れたのだ       ビクッ!!!       それまでの電流とは比べ物にならないほどの刺激が       快感となって脳から全身へと伝わる!       身体が激しく痙攣しはじめる       まだ触れただけなのに カリウス 「ここが気持ちいいんだろ?」       彼が問い掛ける       私は口に指を咥えたまま力なく頷く…       潤んだ瞳で彼を見つめ       訴えかける       ”もっと触ってほしいと       もっと弄くりまわしてほしい”       と       しかし       そんな私を見て カリウス 「教えてくれ、お前のいた世界ではここをなんていうんだ?」       意地悪なことを言う       知っているくせに       イヤイヤと首を振って       拒否の意思表示をする カリウス 「そうか、ならもうやめようか?」       彼は心にもないことを言って私を焦らす       私はまたも、イヤイヤと首を振る       さっきよりも大きく振る       今度のは      「やめないで!!」という意思表示だ カリウス 「わかった、じゃあちゃんと教えてくれ…何て言うんだ?」            いざ言うとなるとなかなか恥ずかしい       私は目を逸らして       消え入りそうな声で答える カリウス 「んん?聞こえないなぁ……そんなんじゃ続けられないぞ?」       困ったかのように言う彼の表情は       実に楽しげだ       彼は虐めるのが好きらしい       新たな一面を見れた気がして       それさえもなぜだか嬉しい…       だが、嬉しがってる場合ではなかった       もう身体は我慢できないほどに疼いている!       今度はハッキリと答える 私    「クリトリス」 カリウス 「よし、いい子だ」       彼は片目を瞑って見せながら       頭を撫でる カリウス 「ご褒美だ」       そう言うと彼は陰部に顔を押し付け       クリトリスにむしゃぶりついてきた!!          まさかそう来るとは思わなかった! 私    「洗ってないから汚いよ」       と訴えるも、彼は聞く耳をもたない       必死に足を閉じようとしても       彼の頭を挟む形になるだけで       彼はかまわず私の敏感なところを攻め立てる       ”クリトリス”を       舌で優しく転がしたり       口に含んで吸ったりする       たまらずに喘ぎ声を上げる!       もう口を塞ぐどころじゃなかった       口に指で塞ごうものなら       指を嚙みちぎってしまいかねないだろう       両肘を布団の上に着けて踏ん張るので精一杯だった       外に声が漏れてもかまわない!       理性など吹き飛び欲望が勝る!       すでにもうイキそうだった!       両腿が彼の頭を挟む力を増していく!       『気持ちよすぎる!!        もうダメ!!        イッちゃう!!』       一瞬頭が真っ白になる!!       意識と無意識の狭間の中で息を整えようとする       しかし彼がそれを阻止した!       彼が私の唇にむしゃぶりついてきたからだ!!       私の股間の匂いと味が口内を支配する!       汗と愛液と尿とが混ざり合った独特の味と匂い       はじめはそのキツイ味に顔をしかめるが       やがて癖になってくる       淫靡な味と匂いが       私の中の欲望を呼び覚ます起爆剤となり       狂ったように彼の顔を両手で挟み込み       唇にむしゃぶり返す!       彼もそれに応えるように胸を鷲掴む!       爪が食い込むくらいだったが、それがむしろ私の中を喜ばせた       もう片方の手は股間を弄り       クリトリスを指の腹の部分で優しく弄る       一度イッたその部分はより敏感で       すぐに快楽へと私を誘う       口と胸とマンコ       その三転責めの快感から逃れる術は最早ない!!       溺れゆくのみだ!!       再び快楽に誘われ       天国への扉へと導かれる!!       ああ、来る!!       波が押し寄せてくる!!       快楽の波が!!!       『イクッ!!イクッ!!!』       またも一瞬頭の中が真っ白になり       身体が大きく跳ね上がろうとする       それを彼の力で押し戻され       行き場のない波動が身体をブルッ!!と震わせる             頭の中にもやがかかった       そのもやが晴れる前に           カリウス 「気持ちよかったろ?さぁ、力を抜いて」 私    「ええ」       それだけ答え、彼の言う通り全身の力を抜く       すると何かがズブズブとマンコに入ってきた       彼の指、中指だ!       ゆっくりと第一関節まで入っていく カリウス 「すごく濡れてるじゃないか、溢れてやがる」       彼の一言で       失いかけていた理性が呼び戻される       恥ずかしくて彼の視線から目を逸らす カリウス 「いやらしいやつだ、ほら、見てみろ」       彼はマンコから指を抜き       私の目の前で       くっつけた親指と中指をゆっくり開く       愛液が何本もの糸を引く様は本当にいやらしかった 私    「もう、やだ」       恥ずかしすぎて       彼の手を私の目の前から手でのける カリウス 「ついお前の恥ずかしがる姿を見たくてな」      「かわいかったぞ」            耳元で囁かれると       余計に恥ずかしさが増した       彼の中指が再びマンコに飲み込まれていく       多量の愛液のおかげで簡単に入って行った       今度は指の根本までだ カリウス 「痛くないか?」       私は小さく頷く       彼のさりげない気遣いが嬉しい カリウス 「よし、ゆっくり動かすからな」       私の中で       彼の中指がゆっくりと動く       いやらしい音が聞こえ       彼の太くて長い指が       子宮にも感じさせる       彼の指の動きに合わせるかのように       喘ぎ声が漏れる       濡れているおかげですぐに馴染んできた カリウス 「少し激しく動かすぞ」       彼の指の動きが少しづつ激しくなる       それに連動して       びちゃびちゃといやらしい音が鳴り響く       徐々に快感が増していくにつれて       喘ぎ声も激しくなる カリウス 「だいぶ馴染んできたな、指を増やそうか」       彼の太い指が二本       私の秘部の中にゆっくり入っていく       艶やかな吐息が出る       全部入るとさすがにキツイが       それも直に馴染むだろう         動かすたびに       イヤらしい音と匂いが部屋中に充満する       それを全身に染み込ませる       気持ちよすぎる       自慰なんかよりよっぽど気持ちいい       宿で別々の部屋を取るとき       実は密かに自慰に更けることがたまにあった       カリウスを思いながらしてたなんて       誰にも言えない       やはり       本人に直接触られるのは       気持ちいいどころか       幸せな気分に浸れる       彼の二本の指が       様々な動きを織り交ぜながら私のマンコを掻き回す カリウス 「見つけた」       彼が耳元で囁き       そして、私の中の一番敏感な場所を探し当てると       そこを必要以上に責める       私の喘ぎ声が部屋中に響き渡る       きっと外にまで丸聞こえだろう       カリウス 「もっと気持ちよくさせてやろう」       彼がそう耳元に囁くと       もう片方の手でクリトリスを弄る       一瞬だった!!       快感が津波となって押し寄せる!!       その瞬間!!       弾かれたように身体が仰け反り       マンコから愛液がほとばしる!!!       絶叫       こんな声が出せるのかと       自分でも驚く程の       しばらく方針状態が続いた       全身がビクッ!ビクッ!と痙攣している       気持ちよすぎた       天にも昇るとはこのことかとさえ思えた       『もう、我慢できない!        欲しい!        貴方が欲しい!        貴方のモノが欲しい!!』       呼吸がまだ乱れたままだが       ベッドからよろよろと起き上がり       本能!!              いや       欲望の赴くままに       彼の履いている物を脱がしにかかる カリウス 「おいおい、そう慌てるな」       彼は驚嘆の声を上げると       その言葉とは裏腹に       脱がしやすいように仁王立ちする       私はもう無我夢中でそれを脱がすと         目の前に弾かれたように勢いよくイチモツが飛び出てきた!!       そのいきり立った物は想像以上に大きかった!!       それはとても長くて太く       グロテスクなほどに赤黒い       そしてなにより堅そうだ!!!       おもわずゴクリと生唾を飲み込んでいた カリウス 「驚いたか?」       彼の声でハッとする              目を見開きちんぽを凝視したまま       しばらく静止してしまっていたようだ カリウス 「舐めてくれるか?」       彼の言葉が言い終える前にはもうちんぽにしゃぶりついていた       ちんぽは汗と尿が混ざり合った異様な匂いを放って       鼻をツンッ!と突く       淫らな匂いが脳を刺激してくる       ちんぽから浮き出てドクドクと脈打つ血管に沿って       レロレロと舐め回し       裏筋に沿って舌を上下に這わす       驚くことにちんぽがさらに硬さを増していく       カリの部分をチロチロと丹念に舐めると       ビクンッ!!ビクンッ!!       と何度も跳ね上がる       天に向かってそそり立つ彼のイチモツは       まさに名剣エクスカリバー!!       それがこれから自分を突き刺すのかと想像すると       恐怖にも勝る好奇心で鼓動が激しくなる!       知らず知らず       口元に涎が垂れてくる       それを舌なめずりをして舐めとり       口の中を潤わすと       口を大きく開けて       異彩を放ったちんぽをパクっと咥え込む       デカい!!!       大きすぎて       カリの部分を咥えるのがやっとだった       必死にしゃぶるが       すぐ喉の奥を突き苦しくなる       それでも首を前後に揺さぶるのはやめなかった!!       彼を気持ちよくさせてあげたい一心で       ひたすらしゃぶる!!       見上げて彼を見ると       案の定       彼は気持ちいいのか       恍惚とした表情を浮かべて、口がだらしなく半開きになっていた            最大限にまで膨張してギンギンになったちんぽがいやらしくテカる       カリウス 「さぁ、横になって」             彼が耳元で囁き       私が寝やすいように背中に手を添える       その手に支えられながらベッドに横たわる       そして       私の足を広げて       膝を折り曲げながら起こしていく       M字に開かれると       恥ずかしさのあまり       顔を横に背けてしまう私       彼が指に唾をつけて       自分の物に塗りつけるのを目の端で確認する       彼が顔を私の耳元に近づけて囁いた カリウス 「ちゃんと見ていてくれよ」       恥ずかしさを堪えて       彼の言う通りにする       自分の広げた股の間と彼のちんぽを交互に見る       彼がそれを確認すると            私のマンコの入り口に沿って       上下にちんぽを擦り付ける       彼と私の唾液にまみれたちんぽに       私から分泌される愛液が絡みつくように混じり合う       私の動悸が激しくなり       ドキドキどころか       心臓はバクバクと破裂しそうだった       もうすぐアレが入ってくるのだ       緊張感が増してきて       逆に好奇心を上回る カリウス 「入れるぞ」       彼の言葉で覚悟を決める カリウス 「力を抜いて」       全神経を       マンコに集中している為か       ゆっくりと       徐々に割れ目をこじ開けてくるのがわかる       メキメキと音が聞こえてくるかのように       愛液でかなり入れやすくなっているはずだが       それでもキツイ!!       ついつい力を入れてしまいそうになるのを       深呼吸して耐える       痛くないのがせめてもの救いだと言えるかもしれない カリウス 「大丈夫か?痛かったら言ってくれよ」       彼はそう言ってくれたが       もし言ってしまえば止めてしまいかねない       『それは嫌だ!!        痛くてもいい!!        耐えて見せる!!        だから止めないで!!!』       彼の瞳をじっと見つめて       コクリと頷く カリウス 「わかった、続けよう」       彼は察してくれた       以心伝心       意思の疎通ができたことが       なによりも嬉しかった       再び彼のモノが入ってくる       肉壁がメリメリと悲鳴をあげる       それでも私は       悲鳴を決してあげない       涙が目に溜まって視界がぼやける カリウス 「全部入ったぞ」      「よく頑張ったな」       彼は耳元でそう囁き       そっとおでこにくちづけをしてくれる       そのまま優しく抱きしめて       頭を撫でてくれる       彼のぬくもりと愛情に包み込まれた       その瞬間       瞳に溜まった涙が       雫となって零れ落ちた 私    「ありがとう」            彼の耳元に静かに囁く カリウス 「俺のほうこそ…ありがとう」       『カリウスも        私と同じ気持ちなんだ』       そう想うと       胸が熱くこみ上げる       もう       我慢が出来なくなり       たがが外れたように       涙が溢れ出た カリウス 「お前の中、すごく熱い」       ふたりのモノが       お互いの身体に馴染むまで       抱き合いながらキスを交わした       甘くて激しいキス       繋がっていてもわかる       アソコの潤いが増していくのを……       カリウス 「動くぞ」       彼は耳元にそう囁くと       覆いかぶさったまま       ゆっくり腰を動かし始める       私の愛液が潤滑油となって       少しづつ滑りが良くなっていく       ちんぽが出し入れされる度に       にちゃにちゃといやらしい音を奏でる カリウス 「気持ちいい」       彼が       誰に言うでもなく独り言ちる       私も気持ちよくなってきていた       全身で彼のモノを独占しているのだ       身体だけではなく       心も満たされていく       私の吐息を感じたのか       徐々に腰の動きが速まるのを感じる       彼のモノは思った以上に大きいのか       ズンッ!ズンッ!と       子宮を突き上げてくる!       その度に喘ぐ私を見て       彼が興奮してさらに腰を大きく振る       カリの部分まで抜き       根元まで突き刺す動きを繰り返す       快感が全身を駆け抜けていく       その快楽に身を委ねる カリウス 「激しくするぞ」       彼が       腰の動きをさらに激しくしていく       彼の杭が撃ち込まれる音が部屋中高らかに響き       びちゃびちゃと粘着質な愛液の飛び散る音が奏で       それと共に彼の呼吸音も激しくなり       私の高らかな喘ぎ声が重なり       オーケストラと化す             快感が波のようにせり上がってくる       『イキそう!!!        ああ…波に飲み込まれていく……        このまま溺れてしまえ!!        意識が飛びそうになるのを感じる!!        なんて気持ちいいんだろう        きっと貴方だから        そう、貴方と交わっているから!!        だからこんなにも感じるの!!        好き!!!        大好き!!!!!』       身体が弧を描くように仰け反る!!       目の前をキラキラとまばゆい光が包み込む       その光が解けると       星空が見える       そして       月が見える       とても大きい!!       身体が反転する       驚くことに       目の前には地球が広がっていた       月よりも遥かに大きい!!!            宇宙       そう、私は宇宙空間を漂っていた………                         カリウス 「大丈夫か?」       声が聞こえてくる       カリウスの声       瞼を       ゆっくり開ける       カリウス 「大丈夫か?」      「イったようだな」       意識がハッキリしてくると       彼の顔が目と鼻の先にあることに驚いた              『さっきのは何だったんだろう        夢?        だめだ、何を見ていたのかを思い出せない……』 カリウス 「どうした?まだ終わりじゃないぞ」       彼は微笑みながら片目を瞑る       そう言うと       私をその体勢のまま抱き抱えて       座った状態で起き上がる       対面座位       足を前方に出した状態で座った男性の股間の上にまたがり”向かい合う形” カリウス 「この体位なら、お前の美しさを間近で感じることが出来る」       その言葉に反応して       つい照れてしまう       顔が桜色に染まる       それがバレないように       咄嗟に顔を背ける カリウス 「照れてるのか?かわいいやつだ」       『バレバレだった!!        恥ずかしい!!        彼とこんな至近距離で向かい合うだけでも恥ずかしいのに…。』 カリウス 「おいで」       彼が私の背中に手をまわして       グッと引き寄せた       優しく抱きしめる       それだけでドキドキしてしまう カリウス 「こうしていると安らぐ」       耳元でそう囁くカリウス       私だってそう       安らぎ       癒され       安心する       男性のたくましさだけでなく       父性さえも感じさせてくれる       恋や愛を超越したもの       親愛       そして、最愛 カリウス 「お前が欲しい、愛してる」       心を通い合わせている       神通力       人知を超えた力が       私たちを導いてくれている 私    「私も貴方が欲しい!愛してる!!」       と答える       私たちは、どちらともなく唇にむしゃぶりつく       彼が私の臀部を両手で抱えて前後に動かす       彼のモノが私の奥に突き刺さる!!       その度に快感が身体中を突き抜ける       この感覚がやめられない!       気持ちよすぎて       自ら腰を前後に振る!       自分の気持ちいいところに       彼のモノを擦り付けるように       激しく!         さらに激しく!!       もっと激しく!!!       精子を搾り取るくらいに激しく腰を振る!!       腰の動きに合わせて       にちゃにちゃと愛液まみれの二人の股間の間に、何本もの糸を引く カリウス 「はああ、気持ちよすぎてすぐに出ちまいそうだ」       彼も限界が近いようだ       苦しそうに声を漏らす       カリウスのその苦しそうな顔を見て       ゾクゾクした       私は自分の上唇をひと舐めすると       精子を搾り取る勢いで激しく腰を振る         ぐちゃぐちゃといやらしい音が興奮を掻き立てる カリウス 「ううぅ!イキそうだ!!」       彼のモノが私の中で膨張していくのがわかる       『私の中に出して!!!』       心の声で叫ぶ カリウス 「はぁああ!!」       その瞬間       彼のモノがさらに膨張して暴発する       どぴゅどぴゅと彼の精子が私の子宮に向かってブチまかれる       ちんぽがドクドクと脈打つのを感じる      カリウス 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」             イッた直後の彼の恍惚とした表情が       たまらなく愛おしい       彼にそっと寄りかかり       キスをする       そして彼を優しく抱きしめた 私    「ありがとう」       私は彼の耳元にそう囁いた       心からのありがとうを       しばらく抱き合ったまま       その時間を楽しんだ                   私は唐突に彼をベッドに押し倒した       カリウス 「おい、急にどうした?」       彼が戸惑いの声を漏らす       カリウスの驚いた顔を見て       私はほくそ笑む       私は腕を後ろに回し手をつき       腰を後ろにずらす       すると       マンコから縮みかけたちんぽが零れ落ちる       ちんぽは愛液と精液にまみれて卑猥な異物と化していた       私が股間に力を入れると       マンコの穴から白い液体がドロドロと流れ出てきた       カリウスの精子だ       銀杏のような臭い匂いが鼻を突く       おかしなことに       慣れてくるとその臭さが癖になり脳を刺激する            彼をじっと見つめて       瞳の奥に訴えかける       『私はまだ満足してないんだから』              と          そしておもむろに私は       精子とマン汁にまみれた縮みかけたくっさいちんぽを口に含んだ       そして       狂ったように首を前後に振る       髪を乱しながら カリウス 「ふふ、どうやらまだ満足していないらしいな、まぁ好きにしな」       彼はそう言うと       頭の後ろで手を組んで寝そべる       私はかまわずにちんぽをしゃぶりまくる!!       じゅぽじゅぽと淫靡な音を奏でながら       すぐに彼のモノが口の中で膨らみ       咥えた口の中を支配する       彼のデカく硬くなったちんぽを口から抜くと       ちんぽは天を突き刺すようにそそり立つ!!       口に溜まった唾液をすくうように両手に垂らし       ちんぽにまんべんなく塗りたくる       私は彼の股間の上にまたがり       片膝をつく       いきり立つちんぽに狙いを定めて       腰を下ろしていく       マンコに到達したちんぽを片手で優しく掴み       マンコの入口に擦り付けて馴染ませる       一呼吸してから       ちんぽをマンコの穴にあて       ゆっくりと腰を沈めていく       彼のちんぽが私のマンコを押し広げて       私の中にズブズブと入ってくる!       目を瞑り       彼のモノを全身に感じながら咥え込んでいく!         根元まで入り       子宮をググっと押し上げてくる!       とても深い吐息       この瞬間が       私を至福な気持ちにしてくれる       瞼をゆっくり開ける       彼の気持ちよさそうな表情が       たまらなく愛おしくさせる       股間に意識を集中して力み       彼のちんぽを締め付ける カリウス 「くっ、ちょっ、ちょっとまて」       彼が苦悶の表情で訴える       締め付ける力を緩めてあげる カリウス 「ふうぅ、ちったぁ手加減してくれ」       やれやれといった表情を顔に浮かべる彼に対し       私は悪戯っぽくウィンクしてチロッと舌を出し       腰を前後に動かしはじめた       自分の気持ちいいところに彼のちんぽが当たるように       クイッ!クイッ!と擦りつける       片手を彼のおへその下辺りに置き       もう片方の手は自分の後方のベッドに着けて少し身体を反らしながら……       こうすると       腰が動かしやすくなり       腰への負担も減少する       しかも       彼の陰毛が       私のクリトリスに触れて刺激を与えてくれる       夢中で腰を振る!       前後左右だけでなく       弧を描くように動いたりもした       快感が増すにつれて       私の腰の動きも激しくなる!       彼は一切動かない状態を保ってくれている為       自由に動けた       ただし!       彼も気持ちいいのかビクッ!ビクッ!と痙攣したような動きが随所にあった       だが       それが自分の動きに支障を与えることはなく       むしろその反応が楽しかった       その反応が見たいが為に       彼が気持ちよさそうな腰の動きにしてみたりもしたくらいだ       それにしても気持ちがいい!       ときおり       あまりの気持ちよさに舌なめずりをした       私は両足をМ字に立てて前傾姿勢をとり       そのままベッドに手を着く       ”彼を真上から見下ろす格好だ”       その格好のまま       彼の股間に自分の股間を打ち付けるように腰を振る!!       最初はゆっくりと打ち付ける       ちんぽのカリが見えるくらいまで腰を浮かせ       一気に根元まで打ち付ける!!       いい音がする       打ち付けた時に生じる       子宮への刺激が気持ちいい       喘いでしまうくらいに……      カリウス 「すごくいやらしいな」       彼は股間が打ち合う様をまじまじと見てそう呟く       彼からは       マンコにちんぽが出し入れされるのが丸見えなのだ       その動きを堪能すると       徐々に腰の動きを小刻みにした       パンっ!!パンッ!!パンッ!!パンッ!!       爆竹が弾け飛ぶような音が       リズミカルに繰り返されていく       身体中を快感が突き抜けていく!       その度にピクピクと痙攣する!       『彼に動いてほしい!』       欲求が止まらなくなってきていた       『お願い!動いて!!        下から激しく突いて!!!』       真上から彼の瞳を見つめる カリウス 「さぁて、そろそろ頃合いか」       私の願いが届いたのか       彼が膝を立てる カリウス 「今度は俺が気持ちよくしてやろう」       私がM字の前傾姿勢を保った状態のまま       彼が私の腰を両手で支えるように       優しく掴む カリウス 「いくぞ」            彼が下から突く!!       彼のモノが根元まで勢いよく突かれる!       自分で突くのとはまた違った快感が全身を駆け抜ける!!       爽快な音を立てる度に       身体が瞬間的に浮く!       徐々に打ち付ける速度が増していく!       その気持ちよさに開いた口から涎が垂れる       それが奇しくもカリウスの口元へと落ちていく!!       口元に落ちたその粘った液を彼がペロッと舐めとり       私を抱え込むようにして抱き寄せる!       私も彼の首の後ろに腕を回して       彼に密着する       密着した彼の身体から感じる体温が       気持ちを盛り上げていく カリウス 「愛してる、一緒に気持ちよくなろう」            彼が腰を打ち付ける速度を上げていく         小刻みだが激しい!!       軽快な音とともに彼の呼吸が荒くなっていく       それと比例して私の喘ぐ声も荒くなり重なり合う       『イキそう!!』       私の中が敏感になっていく       この感覚が好きだ       天にも昇る気持ちとはこういうことを言うのだろう!       このまま天に召されてもいいとさえ思ってしまうほどに!! カリウス 「イクッ!!!」       イクッ!!!       その瞬間!!       子宮の奥に彼の精液が勢いよく注ぎ込まれ       脳が溶けそうなくらいの快感が全身を襲う!!       ビクンッ!!       身体に大きな衝撃が走り       彼の首にギュっとしがみつく!!       目の前が一瞬眩い光に包まれる!           だが       さっきのように”何か”を見ることはなかった       ドクンドクンと彼のちんぽが脈打つのが       敏感になっているアソコに心地のいい刺激を与える       はぁーと深く息を吐き       乱れた呼吸を沈めていく       彼の息が胸元をくすぐる             ふたりの心と身体がひとつに繋がったままイッた後の余韻に浸る       充分にそれを堪能した後            彼の顔が見えるところまで身体を下のほうへずらすと       アソコからちんぽがぬけるのを感じた       彼の瞳と私の瞳が絡み合い       そっと唇を重ねあう       優しいキス       ゆっくりと唇を離し       互いに微笑み合う       打ち上げ花火が上がり       大きく咲いた花火の明かりが私たちを照らす       言葉を交わさずとも心が通じ合い       再び唇が触れ合う       もう止まらなかった       優しいキスから       深いキスへ       そして私は       彼の身体に優しく口づけをする         愛情を込めて       髪       耳       頬       首       肩       胸       乳首       腹筋       おへそ       太腿の付け根       そして       再び大きくなった彼のアソコ       ちんぽには       いっぱい口づけをしてあげる         印       私を快楽の世界へと導いてくれる       感謝の証として カリウス 「さてと」       そう彼は言うと       上半身を起こし       両手で私の頬を挟むように優しく触れる       私の正面に顔を近づけて カリウス 「もう1ラウンドだ」       そう微笑んでウィンクした             そして耳元で囁く カリウス 「後ろから激しく突いてやる」       そう言うと       私を四つん這いになるように導く       この格好は正直恥ずかしい!       恥ずかしい反面なぜか興奮する       人も所詮は獣       本能が呼び起こされるのだろう       私のマンコに       彼のちんぽが擦り付けられる       彼のモノは       すぐに溢れでた愛液で潤わされていく       鼓動が激しくなる!       ドキドキワクワクが止まらない! カリウス 「覚悟はいいか?」             有無を言わさず       ズブズブと彼のちんぽが私の中をこじ開けてきた       ちんぽがマンコに挿入されるひととき       貫かれる感覚が癖になる       ゾワゾワするのだ       マゾ気質が私の中に少なからずあるらしい       臀部に股間が打ち付けられる爽快な音がすでに響いていた       彼にしては多少強引な感じだった       それが逆に興奮を掻き立てた       『最高に気持ちいい!!』       後ろから突かれる気持ちよさは       通常とは違う       ちんぽの当たる箇所も違えば       挿入角度も違う       彼も出し入れがし易いのだろう         奥へ奥へとちんぽを突き刺し       股間を臀部に打ち付ける!       子宮を突く刺激が倍増していく       快感が脳天を突き抜ける!       『ダメだ!!        思考が停止していく        気持ちよすぎる!!』         涎が垂れだす       彼の腰の動きが激しさを増していく!       意識が朦朧としてきた       全身が性感帯になっていく感覚       もう、すでに何度もイッていた       身体が痙攣するのもおかまいなしに       ひたすら腰を打ち付け       ちんぽを突き刺す!!       生まれたての小鹿のように       足がガクガクと震えている       たまらず上半身をベッドに突っ伏す       両手でシーツを強く掴んで       快感に耐えようとする       それでも彼は止まらない!!       愛液で濡れそぼったアソコを犯し続ける       さらに強く!!       さらに激しく!!       情熱的に犯す!!             私は声にならない声を絞り出す!!       私が壊れていく!!       理性が吹き飛び       性欲に溺れていく!!       深い海の底に沈むような       宇宙の果てを彷徨うような       奈落の底に落とされるような感覚       突然       一際、大きな波に飲み込まれようとしていた       身体の穴という穴から自分の中の物が全て吐き出されそう!!       解き放たれる!!       昇天するのだ!!! カリウス 「愛してる!お前の全てを!!」       『私も!私も貴方の全てを愛してる!!』       『もう戻れなくてもいい!        いや、戻りたくない!!        彼と一緒にいられればいい!!          彼の傍にずっといたい!!!』       その瞬間       眩い光に包まれた!!       頭の中が真っ白になり       意識が遠くなっていく       カリウスとのかけがえのない時間が       頭の中をフラッシュバックする       『嫌ッ!!戻りたくない!!!』              『カリウス!!!!』       瞼をゆっくり開ける       天井が見える       上半身を起こして周りを見渡す       小説や漫画でいっぱいの棚       大きなくまのぬいぐるみが置かれた二人掛けのソファー       テーブルにはゲーム機とお菓子       飲みかけのペットボトルが散乱している       ピンクと白を基調にしている見慣れた部屋       いつもの寝心地のいいベッドの上       隣には彼氏が微かに寝息を立てて幸せそうに寝ている       すごくリアルな夢を見ていた気がする       とても長い夢       どんな夢だったのか思い出せない       空いたままの小窓から星空が見える       なんだか…すごく懐かしい……       何故か涙が一粒、筋となって頬を伝う       『あれ、私……泣いてる?』       そう思った瞬間       涙が溢れだす       その涙は       いつまで、いつまでも       とめどなく溢れるのだった………。 カリウス 「消えた!?」       突然の出来事に       オレは戸惑いを隠せなかった       だが       すぐに理解した       彼女はきっと       元の世界へと旅立ったということを       オレは溢れ出そうになる感情を必死に抑え込み       彼女が無事に元の世界へ辿り着けることを願い       祈り続けた… カリウス 「君に、幸あらんことを」                           fin