◯キャラ設定 小鈴蘭子(こすずらんこ) 年齢:17歳 職業:高校2年生 趣味:ぼーっとすること。安眠音声を聞くこと。 性格:無愛想。少々毒舌。 悩み:『幸せになりたくない』 イメージフラワー:スズラン(花言葉は幸福の再来) 一人称:私 口調:基本的にデスマス調。主人公のことは「お兄さん」と呼ぶ。 補足:「もっと詳しい情報を知りたい、ですって? はぁ……お兄さん、相変わらず救いようがありませんね。とはいえ、お兄さんが私の気持ちを救ってくれたのは事実ですから少しくらいは教えてあげてもいいでしょう。ではまず、お兄さんが私の家で何故家事代行をすることになったについてですが、それは私が夢の国への家族旅行を断ったのが発端です。私は諸事情により……って、お兄さんはもうゆりちゃんのことを知っているのでしたね。私にとって千葉にある夢の国はゆりちゃんとの思い出の地なんです。ですから、あの素晴らしい記憶を上書きしないように金輪際ゆりちゃん以外と夢の国に行かないと心に決めていて、一泊二日の家族旅行を断ったんです。何も食べずとも一日くらい生きていけると説得はしたのですが、家事のできない私をお母さんがすごく心配してですね……結果としてお隣の変態ロリコンお兄さんに家事代行の依頼が出されてしまったというわけです。納得いきましたか? よろしい。他にも聞きたい……? た、体型について……? はぁ? お兄さんの目は節穴ですか? そんなもの目の前の私をみれば1発でわかるではありませんか。……私の口から聞きたい、と。全く、お兄さんは変態鬼畜ロリコンお兄さんですね。容姿を本人に説明させるだなんて。まあいいでしょう。そうですね……私の体型は、いうならば若さ溢れる健全な体型とでも表現しましょうか。私は世の女性たちが求める若さを全面に持ち合わせています。幼児体型……ですって? ぐぬぬ……うるさいですね。折角自分の体型をギリ詐称じゃないレベルで前向きに捉えていたというのにお兄さんと言ったら……デリカシーのかけらもありません。……まあお兄さんの言う通り、身長は6年生から全然変わりませんしロリロリしいといえばそうですね。自分で言ってて恥ずかしくなってきました……。他に質問はありますか? ……終わり? そんなことありませんよね? ほら、1番大切なことを聞き忘れていまよ、お兄さん。はぁ……全くしかたがないのでお兄さんの心の内に秘める疑問を私が明らかにして差し上げましょう。『草間百合子さんとの関係を教えてください?』でしょう? ええ、それでいいんです。全く、お兄さんも仕方がない人ですね。仕方がないので今回は特別に私とゆりちゃんの話をしてあげましょう。私がゆりちゃんと出会ったのは中学1年生の時です。小学校の頃から友人と呼べる人がいなかった私に初めて声をかけてくれたのがゆりちゃんだったんです。いやもうあのとき確信しましたね。ゆりちゃんは私の女神様だって。ゆりちゃんがバドミントン部に入るという話を小耳に挟んだ私は勢いでバドミントン部に入部。でも、残念なことに最初の頃はゆりちゃんと一緒に練習はできませんでした。うちのバドミントン部、練習相手とダブルスぺアを校内のシングルスのランキングで決めていたんですよ。上手になるために効率的といえばそうなのですけど、まるで乙女心というものを分かっていません。ともあれ、その校内ランキングを乗り越えて私はゆりちゃんの隣に立つことができたんです。因みにゆりちゃんが学内1位で私が2位でした。えっへん。そして私とゆりちゃんの仲は部活だけには留まりません。プライベートでは彼女と夢の国にも行きました。一緒にアトラクションを乗れたときにはこれが青春かと幸せで気が狂うかと思いました。それと……ゆりちゃんは生徒会長兼クラス代表兼部長だったのですけど、実は全部私が推薦したんです。三役揃ったところでうちの中学はゆりちゃん一強時代に突入し、達成感で熱を出してしまったのを覚えています。因みに、ここまで熱心に語るとまるで私とゆりちゃんが付き合っていたのではないかと思われそうですが、そんなことはありません。ゆりちゃんのことは性的に好きというわけではなく、あくまで友達として一生付き合いたいと思っているだけです。……ええ。そうですね。私はゆりちゃんが大好きですが、だからこそ皮肉なことに彼女が私の悩みの原因でした。中学の頃の日々は私にとって大切な思い出だったんです。ゆりちゃんと離れ離れになった私は、自分の思い出を守るために『幸せ』を避けるようになりました。心の平穏を保ち、崩れかけた記憶の牙城の中心で、自分に封印をかけたんです。……少し話しすぎましたね。聞いてくれてありがとうございます。……手を握ってもらってもいいですか? 2年ぶりですから本当に心臓の音がうるさいくらいに緊張してるんです。お兄さんの手……大きいです。何々……手汗が凄い……? う、うるさいですね! 全く、お兄さんには呆れます。デリカシーのかけらもないんですから! ですが……お兄さんのおかげで少し落ち着きました。それでは先を急ぎましょう! いざ、ゆりちゃんの元に!」 ◯各章タイトル 1章 縁側での出会い  家族旅行に行くお隣さんから貴方は家事代行をお願いされます。貴方は二つ返事で家事代行を引き受けて家を訪れてみると、縁側に面した部屋で1人の少女と出会いました。空を眺め虚な目をしている儚げな少女は、貴方に気がつくと途端に冷ややかな目を向けてきます────無愛想でちっこくて、ちょっぴり毒舌な少女へのご奉仕の始まり。 2章 スライムパズルですか。上級者のテクニックを見せてあげましょう。  家事が終わり暇になった貴方は蘭子を遊びに誘います。嫌がっていた彼女ですが、途端にそれを許してくれました。違和感を感じつつも、貴方は生意気な小娘を大人の力でわからせるのでした。 3章 寝かしつけ?お兄さん、変態ですね。  蘭子がお風呂を出たのを見計らい、貴方は家事のご褒美として寝かしつけをお願いします。心の底から軽蔑されますが大人の誠意を見せつけると、彼女は呆れた顔で首を縦に振るのでした。 4章 蘭子のヒミツ  添い寝する幼女の気配を感じながら精神統一をしていると不意に彼女が独り言を呟きます。彼女のヒミツを知った貴方は彼女を抱きしめ慰めますが、事態はあらぬ方向へ……変人たちが交わる奇妙な物語の終結。 5章 縁側での再会  彼女を救い出す算段が立った貴方は、早速彼女の家へ侵入します。相も変わらず彼女は縁側で凍結中。しかし貴方が用意した最高のプレゼントに、彼女は重い腰を上げて一歩を踏み出すことを決心するのでした。「これからは私とイチャイチャするためにせいぜい精進することです」 ◯あとがき  小鈴蘭子とお隣の縁側を聞いてくださりありがとうございます。本作はこれまでの縁側シリーズと打って変わり少しギャグ路線の作品に仕上げましたがいかがでしたでしょうか? 前2作のようなシリアスでちょっぴり感動できる作品を期待していた人にはごめんなさい。ただ、そのようなシリアス大好きっ子たちは是非とも幻の6章を想像していただきたく思います。6章は彼女に再会できてハッピーエンドと言いたいところですが、本当にそうなのでしょうか? 百合子から見て、蘭子とは一体何者なのでしょうか? 果たして、彼女の青春は本物だったのでしょうか? おまけも込みで楽しんでいただければ幸いです。また、今作は表紙の絵についてですが、イラストを担当したsoramizukiさんがかなり作り込んでくれました。イラストの考察等もしていただけるとより本作品を楽しめるのかなと思います。お暇な方は是非。機会があればまた別の作品でお会いしましょう。それでは。 ◯おまけ 〜お兄さん独自調査編〜 『中学時代の蘭子ちゃんについて教えてくれますか?』 学友S.R 「蘭子ちゃん……? ああ、小鈴さんのことですね。ええっと、私は同じクラスじゃないので彼女のことはなんともですけど、クラス合同の体育で一緒だったことはありますよ。すごく物静かな子でしたね。授業のときは誰かと話しているところをみたことはなかったです。部活動は確かバド部に入ってて……生徒会長とペアだったんですか!? そうだったんですか。見かけによらず小鈴さんバドミントン上手だったんですね。そういえば小鈴さん、体育の時間は生徒会長といつも一緒にいましたよ。2人きり……? いえ、会長含めて4人くらいですかね。たぶん、みんなバド部の子たちだったんじゃないかと思います。ほら、大体クラスにいるときって部活の子たちとつるむじゃないですか。私も部活の友達がいたときは一緒に体操とかしてましたし。……質問はこれで終わりですか? いえいえ! こちらこそ力になれて嬉しいです! それでは!」 学友K.Y 「お兄さん、蘭子の知り合いですか? 私のこと…………彼女にバラすつもりですか? ……本当にやめてください。お願いです。もう……懲り懲りなんですよ。あの子に付き纏われるのは。いつもボソボソ何言ってるか分かんないし……気色悪い。もし私に何かあったらそのときはお兄さんのこと警察に突き出します。覚悟しておいてください」 母 「中学時代の蘭子? うーん、そうね。今より少し明るかった……かしら? 蘭子って物静かに見えて結構喋るしはっきりものを言うじゃない? 中学の頃も今と同じようによく喋る子だったのだけど、今よりもっと楽しそうに話していたわね。同じ部活にすっごく仲良しな子ができたみたいでね、その子の話ばかりしてたわ! バレンタインのとき『お母さんチョコの作り方教えて!』って迫る蘭子は可愛かったわね〜。そうだお兄さん、蘭子から聞いたわよ! お兄さんもお菓子作りをするんでしょう? 今度よければ一緒にお茶でもしましょう! 蘭子がお兄さんのお菓子がすごく美味しかったって言うものだから私も食べたくなっちゃったのよ〜。はい、決定。これからもご近所同士、蘭子と仲良くしてあげてね」 ◯クレジット 【声優】 小鈴蘭子役 七井えま 様 【イラスト】 soramizuki 様 【ロゴ・シナリオ】 長雪ぺちか ******************** 制作サークル ぺちかーと 〇各章の台本 1章 縁側での出会い  家族旅行に行くお隣さんから貴方は家事代行をお願いされます。貴方は二つ返事で家事代行を引き受けて家を訪れてみると、縁側に面した部屋で1人の少女と出会いました。空を眺め虚な目をしている儚げな少女は、貴方に気がつくと途端に冷ややかな目を向けてきます────無愛想でちっこくて、ちょっぴり毒舌な少女へのご奉仕の始まり。 こんにちは。話はお母さんから聞いています。 お兄さんが今日から2日間、私のお世話をしてくれるんですよね。 ……ど、どうしたんですか。私の身体を舐め回すように見て……いやらしいですよ。 か、可愛い子のお世話ができて嬉しい……? このっ……やっぱり変態さんでしたか。 すぐにお母さんに連絡します。ついでに警察にも。お隣に住んでる変態お兄さんが家に勝手に上がり込んでますー……って、土下座はやめてください。情けないですよ。 全く、大人の威厳というものはないんですか。 まあ、いいです。とにかく、二日間よろしくお願いします。 自慢ではありませんが私は家事が一切できませんので、用があるときはお兄さんを呼びます。 私が壁をドンと叩いたら来るんです。いいですね? 試しに練習してみましょうか。 ドン……お腹が空きました。何かお菓子を持ってきてください。 ……えっ、もう用意していた?どれだけ用意周到なんですか。 ええっと、これは初めてみるお菓子ですね……手作り? お兄さんお菓子を作れるんですか? まさか……変なもの入れてないですよね。 変なものってそれは……髪の毛とか血とか……色々です。 バレンタインチョコに変なものを混ぜる人もいるではないですか。 ちなみに私はしたことがあります。友チョコですが。 うるさいですね……私は変態なんかじゃありません。 変態なのはお兄さんだけで十分です。 ……まあいいでしょう。 何かが入っていたら入っていたで、悪い話ではありません。 いただきまーす…… あっ、これ……美味しい。すごく美味しいです。 中からガナッシュが溢れ出てきて、こんなに美味しいフォンダンショコラは初めて食べましたよ。 背伸びせずにあまーいチョコだけを使っているのが高ポイントです。 なんですかお兄さん、本当に上手じゃないですか! そんなに気に入ったならまた作る? いえ、それは大丈夫です。 このお菓子は危険です。あまりに美味しすぎます。 あまり、美味しすぎるものを作らないでください。 こんなものを毎日出されてしまっては、辛くなるではないですか。 それでは、お兄さんは早く部屋……というか縁側から出て行ってください。 冷蔵庫の中身は好きに使ってください。 釘を刺しておきますが、変なことをしたら通報しますからね。 よろしくお願いします、お兄さん。 2章 スライムパズルですか。上級者のテクニックを見せてあげましょう。  家事が終わり暇になった貴方は蘭子を遊びに誘います。嫌がっていた彼女ですが、途端にそれを許してくれました。違和感を感じつつも、貴方は生意気な小娘を大人の力でわからせるのでした。 (コンコン) はい。開けていいですよ。 なんですか? くだらない用でしたら帰ってもらいますよ。 なになに……一緒に遊びたい? ご丁寧にゲーム機まで持ってきて……お引き取りください。 私はお兄さんと違ってそんなに暇ではないんです。 ……それにしては、ぼーっとしてる? これは暇なんかではありません。 私は今、空を見上げてぼーっとするので忙しいんです。 特に、縁側でこうするのは非常に心が落ち着きます。 縁側ってなんだか時間の流れがゆっくりじゃないですか。 まるで時間が止まったような感覚になって、ぼーっとするのには最適なんです。 むー、それを暇だとでもいいだげな顔ですね。 お兄さんは瞑想や座禅を知らないんですか? 全く、義務教育からやりなおしてください。 具体的には中学校の社会の……って、ちょっと!土下座なんてしないでください!やすいプライドですね…… はぁ……お兄さん。まったく、いい歳して女子高生とゲームしたいだなんて、とんだ変態です。 変態すぎて可哀想です。可哀想なので、仕方なく相手をしてあげます。 私の寛大な心に感謝するんですね。 ……本当は遊びたかった? 何を言っているんですか? そんなわけありませんよ。 私は心からお兄さんと遊ぶことが嫌だと、女神様に誓えます。 ……ええ、神様じゃないですよ。女神様です。 私には信仰する女神様がいるんです。まあ本当の神様ではないですけど。 お兄さんにも1人や2人いるでしょう?そういう神様が。 ……とにかくです! 嫌々、仕方なく、可哀想なので、今日は私がお兄さんと一緒に遊んで差し上げましょう。 それで、なんのゲームを持ってきたんですか? ほうほう……スライムのパズルゲームですか。 これならやったことがあります。 スマホのゲームでありますよね。 ええ、それです。スライムクエスト。 私、中学時代は結構そのゲームで遊んでいたんです。 全体的にデフォルメされたようなイラストで、すっごく可愛いですよね。 ちなみに、私はオッドアイの男の子が好きでした。何だか天然で可愛いんです。 お兄さんはどのキャラクターが好きですか? ほう……黄色いマスコットつれてる彼女ですか。 あの子も可愛いですよね。変態さんのくせにいい趣味をお持ちのようです。 ふっふっふ……お兄さんのスライム愛は認めましょう。 しかしながら、お兄さん。 選ぶゲームを誤りましたね。 実は私、何を隠そうこのゲームが大の得意なんです。 それに、中学の頃では学年で一番ランクが高かったんですよ。 おっと……どうしたんですか、私が経験者だと知って怖気付きましたか? くっくっく……今更焦ったところでもう遅いです。 さあさ、お兄さん。ゲームをテレビに接続してください。 上級者のテクニックで、お兄さんを完膚なきまで叩きのめしてあげましょう。 * うぅ……負けてしまいました。 ひ、卑怯です!こんなの私の知ってるスライムパズルじゃありません! な、なんですって……? ……寧ろこっちが元になったゲームなんですか? そ、そんなわけ……ちょっと調べます。 何々……ほうほう……むむむ…… はぁ……どうやらお兄さんの言っていることは正しいみたいです。 私の遊んでいたゲームは元はテレビゲームで……ってネット百科事典に載っていました。 ぐぬぬ……悔しいです……悔しいです…… でも! 勘違いしないでください。 今回は初めてするゲームで慌ててしまっただけです。 次は私が勝ちますからね? 覚えておいてください。 ……また遊んでくれるって……知りません。 もう……知りませんってば…… まあ……そこまで悪くはなかったです。 ……だから……お兄さんと遊ぶのは、そこまで悪くなかったと言っているんです。 な、な、な……何ですかその目は? 勘違いしないでください。 お兄さんが面白かったんじゃないですからね?このゲームが面白かったんです。 全く、全く、変態勘違いお兄さんはサーガーに大いに感謝することです。 本当です。ええ、本当に。 ちゃんと本社の方角を調べて、寝るときは足を向けないようにするんですよ? というわけで、今日のところはもう閉店です。 ガラガラガラ〜 寂しい? お兄さん……言ってて恥ずかしくないですか? もういいじゃないですか。楽しい思いはたくさんしましたよ。 今日はもう十分です。 これ以上のお楽しみは、精神衛生上よくありません。 ちゃんと楽しんでくれた……って……はぁ…… そんなに私をからかって楽しいですか? むっ……すごく楽しそうな顔してる。 ほらほら、早く部屋から出て行ってください。 そう。それでいいんです。 それと……えっとですね…… ええっと……ゲームは別にここに置いておいてもいいですよ。 べっ、別に……深い意味はありません。 お兄さんには全く関係のない話です。 ただちょっと瞑想をするのにも飽きてきたので、ゲームをするのもいいかと思ったんです。 ダメです。お兄さんとは一緒にやりません。 一緒にやったらお兄さんがもっと上手になってしまうじゃないですか。 ……今のは嘘です。聞かなかったことにしてください。 私は何も変なことを言っていませんし、お兄さんは何も聞いていない。いいですね? じゃあ、そういうことですから。 また後で会いましょう。 3章 寝かしつけ?お兄さん、変態ですね。  蘭子がお風呂を出たのを見計らい、貴方は家事のご褒美として寝かしつけをお願いします。心の底から軽蔑されますが大人の誠意を見せつけると、彼女は呆れた顔で首を縦に振るのでした。 ふぅ……今日もとてもいい湯でした。 あっ、お兄さん。どうして私の部屋にいるんです?通報してほしいのですか? それはさておき、私はもうお風呂に入ったので、次はお風呂入っていいですよ。 ……ん? お兄さん……枕なんて持ってどうしたんですか? ね、寝かしつけ? 隣で一緒に寝てほしい? はぁ……お兄さんもついにそこまで来てしまいましたか。 そんなこと、私が本当にすると思ってるんですか? はぁ……はいはい、土下座、土下座。お兄さんは本当に土下座が好きですね。 履歴書の事故PR欄に『土下座』とでも書くつもりですか? はぁ……。 お風呂にしますか?ご飯にしますか?それとも警察にしますか? 新婚ごっこならこれで満足してください。分かったらさっさと部屋を出て…… ふむふむ……お風呂を沸かしたのも、ご飯を作ったのもお兄さんですって……? うっ、うるさいですね…… 馬鹿なことを言ってないで早く風呂にでも入ってください。 そもそもお風呂に入らず寝るつもりだったなんて本当に有り得ません。 お兄さんがそんな不潔な人間だとは思わ…………クンクン あれっ? お兄さんいい匂いがしますね。石鹸の匂いがします。 何々……もうとっくに風呂に入った……? ご飯を食べて私が部屋でゴロゴロしていた間に? さ……最悪です。お兄さんには配慮というものがないんですか? 年頃の女の子は家族のお風呂時間を気にするものなんです。これは常識ですよ。 そうでなくとも……普通、他人のお家で家主に何も告げずお風呂に入りますか?否、入りません。 とはいえ、近所の女子高生に寝かしつけを頼むよりはまだ常識的ですが。 お引き取りください。部屋からも、ついでに命までもお引き取りになってください。 はぁ……そんな駄々をこねないでくださいよ。 全く、仕方ないですね。 どうしようもなく気持ち悪いので、今日だけは特別にお兄さんを寝かしつけしてあげます。 私の部屋で寝られるのは流石に嫌すぎるので、縁側にでも行きましょうか。 さて、寝かしつけとは言いますが、実際のところ何をして欲しいんですか? ふむふむ……子守り歌……ですか。 お兄さんにしては普通の提案ですね。 いえ、普通とは一体何なのでしょうか?もう私も分からなくなって来ました。 まあ、いいでしょう。それでは…… ちゃんと聞いてくださいね。 ♪〜眠れ眠れ母の胸に ♪〜ねむれねむれ母の手に ♪〜心よき歌声に ♪〜むすばずや楽し夢 な、なんですか。すっごく気持ち悪い顔してますよ。 声が可愛い……? なっ、何をいっているんですか。 私なんて全然そんな……ちょっと! 私のことをママと呼ばないでください。 はぁ、全く…… 女子高生にバブバブ言っちゃうだなんて、本当に変態のお兄さんです。 まあ、やると言ってしまいましたから……最後まで歌いますよ。 ♪〜眠れ眠れ母の胸に ♪〜ねむれねむれ母の手に ♪〜あたたかきその袖に ♪〜包まれて眠れよや ♪〜眠れ眠れかわいいわが子 ♪〜一夜寝て覚めてみよ ♪〜くれないのばらの花 ♪〜ひらくぞよまくらべに どうですか?リラックス、できましたか? ……それならよかったです。 お兄さん、すごく落ち着いた顔してます。 そんなに私の歌、良かったですか? えへへ……ありがとうございます。 嬉しいです。嬉しいので……もう歌ってあげません。 このまま……お兄さんをもっとリラックスさせちゃいますね。 ほら、ちゃんと目は瞑ってください。 私のことを見上げていては、眠れませんよ。 そうです。ギュッと瞑らなくてもいいんです。 優しく、自然に……目を閉じてくださいね。 そのまま……まずは深呼吸をしましょう。 ゆっくりと長く呼吸をするんです。 行きますよ…… 大きく息を吸って……深く吐く…… 大きく息を吸って……深く吐く…… その調子ですよ。ちゃんと呼吸できて偉いです。 ママがちゃんと見ていてあげますから、呼吸を整えていきましょうね。 えへへ……お兄さんは本当に変態さんです。 吸って……吐いて…… 吸って……吐いて…… 吸って……吐いて…… そのまま気持ちのいいリズムで、深呼吸を続けてください。 吸って……吐いて…… 吸って……吐いて…… 吸って……吐いて…… ……どうしたんですか?急に手なんて握って。 寂しくなってしまいましたか? 安心してください。私はどこにもいきませんよ。 やると言ったのですから、私はそこまで無責任じゃありません。 ほら、続けますよ。 吸って……吐いて…… 吸って……吐いて…… 吸って……吐いて…… 吸って……吐いて…… お兄さんすごくリラックスできていますよ。 もう体が、ふわふわと宙に浮いているみたいに軽くなってるはずです。 いつもそういう音声を聞いている私が言うのですから間違いありません。 落ち着いて来たので、もう寝てしまいましょう。 ここからは何も考えずにボーッとするんです。 普段私がしているのと一緒ですよ。 呼吸をするのすら忘れて無になるんです。 私も一緒にしてあげますから、ゆっくり、ゆっくり眠りにつきましょうね。 最後に……添い寝でしたね。 隣、失礼します。それでは……おやすみなさい。 4章 蘭子のヒミツ  添い寝する幼女の気配を感じながら精神統一をしていると不意に彼女が独り言を呟きます。彼女のヒミツを知った貴方は彼女を抱きしめ慰めますが、事態はあらぬ方向へ……変人たちが交わる奇妙な物語の終結。 ふう……今日は色々とありすぎました。 まあ……たまには楽しい思いをするのも悪くないかもしれません。 ……いえ、ダメです。よくありません。 ゆりちゃん……私は大丈夫……私はちゃんと……まだ覚えていますから…… それは誰だって……お兄さん、起きていたんですか。 私が子守唄まで歌ってあげたんですから、黙って寝てくださいよ。 美少女に添い寝されたら寝れない……? 寝かしつけと添い寝を所望したのはお兄さんですよ?ちゃんと寝てくれないと私が馬鹿みたいじゃないですか。 それよりって……はぁ……はいはい、別に隠すつもりはないので話してあげます。 ゆりちゃんと言うのは、私の中学の頃の友達……否、親友……もとい女神様です。 ほら、信仰する女神様がいると言っていたではありませんか。 私たちは中学の頃バトミントン部のダブルスペアでした。 私が小鈴蘭子でゆりちゃんが草間百合子で2人ともお花の名前が入っているので密かにflowers(フラワーズ)というユニット名をつけていました。可愛くないですか? 何を隠そう私とゆりちゃんは誰もが認める校内一番お似合いのカップルだったんです。 ふふふ……これは少々自慢になってしまうのですが、ゆりちゃんが生徒会長に立候補したときには、もちろん私が推薦者に選ばれました。 あれは本当に良かったです。 私の最推しであるゆりちゃんが学校のトップに君臨する……その補佐を私ができたんですからね。 えっ……私とゆりちゃんが付き合っていたのかって……? そんなことあるわけないじゃないですか。お兄さん頭は大丈夫ですか? ゆりちゃんとはそんな関係ではありません。ただ、ゆりちゃんは最高で最愛で……唯一の友達だってだけです。 ええ……お兄さんの言う通りです。 私は高校に友達がいません。それが何か? 何かおかしいですか? だって新しい友達を作ったりなんかしたら、ゆりちゃんのことを忘れてしまうかもしれないじゃないですか。だったら作らないほうがいいですよね? では、お兄さんは小学校の頃の友達をちゃんと覚えていますか? 覚えていないでしょう?人は大抵そうですよ。 新しい友達ができれば、古い友達は忘れてしまう。 新しい出来事があれば、古い出来事は忘れてしまうんです。 だから、私は普段からあまり幸せにならないように生活をしています。 あんまり幸せになってしまうと、ゆりちゃんと過ごした幸せな日々を忘れてしまいそうですからね。それだけは絶対に嫌なんです。 ……そんなに彼女のことが気になるなら連絡を取ればいい? はぁ……お兄さん。もしそれができるならそもそもこんな生活してませんよ。もう少し考えてから発言したらどうですか? 私もできればゆりちゃんと一緒にキラキラ輝かしい高校生活を送りたかったです。 でもそれはもう…… そんなに暗くならないでください。 ゆりちゃんは今もきっとどこかで楽しくやってますから。 そう思えば……私も少しは幸せです。 んっ……頭を……撫でてくれるんですか? はぁ……普通許しませんよ? お兄さんくらいの年齢の人が近所の女子高生の体を触るなんて、すぐにでも通報ものです。 でも……今の私は少し寛容ですので許してあげます。 私、ゆりちゃんのことを誰かに話すのは久しぶりなんです。話し相手がそもそもいませんでしたから。 久しぶりに話してみると彼女の顔や声や匂い……いろんな記憶が思い起こされました。 お兄さんには感謝をしないといけませんね。 偶然の出会いでしたが、今日は私の身の回りのお世話をしてくれたり、話し相手になってくれたりして本当にありがとうございました。 もう……どうしてお兄さんが泣くんですか。 でも……ありがとうございます。 私のために泣いてくれたんですよね? はぁ……お兄さんの情けない顔を見ていたら私も悲しくなって来てしまいました。 ううう……ゆりちゃん……ゆりちゃんに……会いたいです。 んっ……?え、ええ……? いえ、お兄さんは何か勘違いしていませんか? いやいや、さっき私は言ったではありませんか。 『ゆりちゃんは今もどこかで楽しくやっている』って。 どういう読み取り方をすれば、ゆりちゃんが死んだことになるんですか? 私の親友を勝手に殺さないでください。 あーもう、なんて失礼なお兄さんなんでしょう。 ゆりちゃんは普通に生きています。 ただ、お家の都合で中学卒業と共に隣の県に引っ越しをしてしまっただけです。 もちろん、お別れ会を勝手に開きましたがそこでゆりちゃんの連絡先を聞くのを忘れて……小鈴蘭子、一生の不覚です。 な、何ですかお兄さん急に真顔になって。さっきの涙はどこに行ったんですか。 親友だったら向こうから連絡がある……? う、う、う……うるさいですね! 私が必死に目を背けていたことをそんな真顔で言わないでください……! 私とゆりちゃんは心の友です。これは絶対です。ええ、絶対ですとも。 全く、失礼しちゃいますね! 何だかお兄さんのせいで気分がすぐれないので私はふて寝します! お兄さんも早く寝ることですね! あーあ、ゆりちゃんのことでも思い出して安眠しちゃおっと。 ……お兄さんは私のことでも考えてバブバブしながら寝ちゃえばいいんです。 おやすみなさい!おやすみなさい! 5章 縁側での再会  彼女を救い出す算段が立った貴方は、早速彼女の家へ侵入します。相も変わらず彼女は縁側で凍結中。しかし貴方が用意した最高のプレゼントに、彼女は重い腰を上げて一歩を踏み出すことを決心するのでした。「これからは私とイチャイチャするためにせいぜい精進することです」 ふう、今日も良い天気です。 こういう天気の良い日は縁側でボーッとするに限ります。 よっこらしょ…… そういえば、あれからお兄さんはどうしたんでしょう。 私の最大限の善意で国家権力には通報しないで置いてあげましたが……変態のお兄さんのことです。 私の知らないところで、小さな女の子に声をかけて通報されていないとも限りません。 やはり私の手で終止符を打つべきだったかも…… そんなつれないことは言わないでって……この声は! はぁ、お兄さんどうしたんですか? お兄さんの家と私の家はお隣だからと言って、庭から入ってくるのは普通に不法侵入ですよ? お引き取りください……ってどうしたんですか?スマートフォンなんか見せて。 ん? 画面をよく見ろ? こ、これは……ゆりちゃん!? お兄さんどうしてゆりちゃんの画像を持っているんですか!? まさか盗撮……ではありませんよね。 私は盗撮したことありますが、こんなに綺麗なアングルでは撮れませんから。 えっ……ア、アカウント? これ、ゆりちゃんのSNSのアカウントなんですか!? お兄さん、まさか最初からゆりちゃんと繋がって……最悪です! つまりお兄さんはゆりちゃんから逃げられた私を内心ほくそ笑みながら……私を慰めたり、頭を撫でたりしたのでしょう!ぐぬぬ……悪趣味がすぎます! えっ? 違う……?と、特定……? 何々……ゆりちゃんの名前で検索をしてまずはアカウントを見つけて…… だけど鍵垢だったから学校の生徒になりすまして近づいて相互フォローになった…… はぁ、お兄さん……悪趣味がすぎますね。 私が言うのも何ですが、呆れるほどの不審者野郎です。 本来なら社会のために今ここで警察に差し出すのが正しいのでしょうけど、今回は私に利があるので不問にしてあげます。 さて、もう少しゆりちゃんのアカウントを見せてください。 ほうほう……ゆりちゃんはこの学校に通っていたのですか。 全く聞いたことのない高校です。 まあ他県の高校なんて普通分かりませんからね。 どんな投稿をしているのでしょう。 どれどれ……って何ですかこの男は! ゆりちゃんと肩を組んで、なんてうらやま……コホン。 なんて馴れ馴れしい男なんでしょう! えっ、この男……ゆりちゃんの彼氏なんですか!? は、はぁ!? ゆ、ゆりちゃん私に内緒で彼氏を作るなんて…… お兄さん!次はこの男を調べるんです! 家柄が良いかちゃんと調べてください! 何処の馬の骨かわからない輩にゆりちゃんを任せられません! ほう……そちらも調査済みですか。 流石お兄さん。不審行動に関してお兄さんの右に出るものはいませんね。 えっ……学年主席の優良生徒……ですって!? そんな馬鹿な! ふふっ……ふふふふっ……! ふふふふふふっ……! こうなれば路線変更です。 決めました。コートに咲く花──『flowers』の次なる戦場は井戸端です。 私はゆりちゃんとママ友になって一生ご近所付き合いすることにしました! ふふふ……私の人生設計は完璧です。 赤ちゃんを抱えながら、夫の惚気話をするゆりちゃん……ちょっと旦那にはムカっとしますが幸せならそれでオッケーでしょう。 そうと決まればお兄さん、ゆりちゃんの元にいきましょう。 そしてゆりちゃんとダブルデートするんです。 ……ん? 何をボケーっとしてるんですか? 私はお兄さんに話をしているんですよ? 自分で良いのか……ですか? 何言ってるんですか? 私には友達がいないと、この前言ったばかりじゃないですか。 残念なことに私の世界に登場する男性はお兄さんしかいませんよ。 だから……デートするならお兄さん以外考えられませんよね? それに、お兄さんは勘違いしているかもしれませんが、別に私はお兄さんのこと嫌いではありませんよ? 確かにお兄さんは素行が気持ち悪すぎます。しかし、私が一度でもお兄さんのことを嫌いだなんて言いましたっけ? ええ、そうでしょう。全く、お兄さんは早とちりですね。 まあ、嫌いとは言っていませんが、お兄さんと添い寝をするのは心から嫌でしたよ。 冷静に考えて、大して接点のない男性からいきなり添い寝を頼まれたらキモいと思うのは必然ですよね? ……って、お兄さんも自覚あったんですか? まさか……まあ、変にお兄さんを過大評価するのはやめておきましょう。 確かに私はあのとき、自ら進んで嫌なことをしていた節がありますが、ゆりちゃんが見つかった今わざわざ自分を痛めつける必要はありません。 したがって、私は近所の変態お兄さんとイチャイチャする道理などないと言うことです。 だから……これからは私とイチャイチャするためにせいぜい精進することです。 ね? 私の彼氏さん?