;//////// ;Track0 タイトルコールとこの音源の楽しみ方 ;//////// ;ナレーション(タイトルコール) ;9 「あやかし郷愁譚(きょうしゅうたんたん)。 洗濯狐 お紺」 「このトラックは、この音源―― 環境安眠バイノーラルボイスドラマ――の楽しみ方を解説するトラックです。 すぐに物語を楽しみたい方は、飛ばしてしまってくださいね?」 「……ん……(呼吸音)」 「うふふふっ、わたし、お紺(こん)の説明をお聴きくださるのですね、ありがとうございます」 「この音源は、あなたが疲れてしまったときに、 なかなか寝付かれない夜に、 気持ちをやわらかにときほぐす――」 「そのお手伝いをできたらいいな、ということを目的とした音源です」 「……山深く、鉄道駅さえ存在しない隠れ里。 あなたのお耳で、こころで訪ねて、ひとときの安らぎを得る」 「そんなちいさな旅のお手伝いを、お紺にどうぞ、させてください」 「そうして――うふふっ。 旅をしながら、お紺たち“あやかし”に。 あやかしたちの残された最後のの聖地である“茂伸(ものべの)”に。 ほんの少しだけでも親しんでいただけたらいいな、なぁんて、思ったりもしています」 「けど一番は、なによりも。 あなたにやすらいでいただくこと。 こころにからだに、そうしてお耳に。 ふんわりとしたやわらかを、ほんの少しでもお届けすること」 「そうするために、もしよろしければ。 暑くも寒くもない、いつ寝入って大丈夫ないごこちのいい場所で。 どうぞ体の力をぬいて――イヤホンや、ヘッドホンをお耳につけて、旅の支度をしてみてください」 「お支度が整いますまで、お紺、お待ちしてますね?」 「……(呼吸音)」 「ん……(呼吸音)」 「……まだかなー……まぁだかなー」 「……(呼吸音)」 「あ、お支度、よろしいのですか? 少しだけ、お紺にも確かめさせてくださいね?」 ;3 「右のお耳〜」 ;7 「左のお耳〜」 ;9 「うふふっ? 大丈夫ですか? もしも右左を間違えてたら、こっそりお直しくださいね? お紺、目をつむってまってますから」 「…………(呼吸音)…………よろしいですか?」 「それでは、こちらがきっぷです。 駅前のバス停から、茂伸村(ものべのむら)―― 大土地(おおとち)いきのバスへとご乗車ください」 「そうして、終点のバス駅にまでたどり着きましたら。 バス駅から少しはずれたところの、お紺のお洗濯屋さんに、 どうぞいつでも、なんどでも訪ねてきてくださ――<SE 激しい雷>――きゃっ!!?」 ;環境音 豪雨/家の外で 「ああ……ひどい雷……雨音も――」 ;SE 室内、軽い足音 ;SE 窓を開ける →雨音ボリュームアップ ;15 「わ……吹き込んできてしまいそう」 ;SE 窓閉→雨音Voldown 「……この雨では、旅する方も足止めでしょうね。 ……雨の時間が、ほんのひとときだけであっても、 旅疲れを癒やす、そのお役にたてばいいのですけれど」 「あ、いけない」 ;SE 軽足音 ;9 「お話がそれてしまいましたね――こほん。 そうしたわけで、この音源は、 あなたのお疲れをほんのわずかでもやわらげて、優しい眠りに導けるよう…… 祈って、願って、つくられている」 ;SE 雷 「きゃっ!? ……はうう〜 雷様はせっかちですね。 先を急げとおっしゃってます」 「ですので、名残惜しいですけれど、 “この音源の聞き方”は、 そろそろおしまいにいたしましょう」 「それでは、ひとたびはさようなら。 ですけれど――すぐ。 きっと、もうすぐに――」 「茂伸で――物語の中でおあいしましょう」 ;環境音 豪雨 →FO ;//////// ;Track1:お紺の洗濯屋さん(イントロダクション) ;//////// :環境音 FI 蝉しぐれ ;SE  ;ブザー音→バスドア閉まる↓ ;バス走行音FO→アスファルト歩く足音数秒→激しい雷(*) ;;*の激雷は、Tr0でお紺が屋内で聞いたものと同じ ;環境音 蝉しぐれFO 豪雨FI ;SE 豪雨の中を走る足音→一瞬立ち止まる→ ;短い距離を駆けて→ :SE 激しいノック ;(間・数秒) ;SE 激しいノック ;9(扉越し)  「はい……どなたでしょう? 旅のお方でしょうか?」 :SE ドア開(横開きの木戸) ;9 「あぁ……ひどく降られてしまったのですね。 いきなりの夕立ですものね」 「おあがりください。どうぞ、中に。 困ったときはお互いさまです。ご遠慮なさらず」 ;SE ドア閉め(環境音ボリュームダウン) ;10 「少しだけお待ちになってね? すぐに、湯上がり手ぬぐいをお持ちしますから」 ;SE タンス引き出し→引き出し閉じる :1 「おまたせしました。お拭きしましょう。 ね? 旅の方。 頭をすこぉし、どうか、下げてくださいな」 「いえいえ、ご遠慮は不要です。 ここはもとより、“洗濯屋”。 お迎えすることも、お洗濯も、 お紺の――わたしのお仕事ですから」 「さ、どうぞ? ね? すこぉしだけ頭を下げて」 「――ありがとうございます。 それでは、お拭きいたしますね?」 「ん……<SE タオルで頭をふく>……ん…… (呼吸音)……こんなに濡れて…………(呼吸音)」 「……んっ……(呼吸音)……。 うん。後ろ頭もお拭きしましょう。 ね? 旅の方――きゃっ!?」 「あ……いえ、少し驚いただけ…… 大きなくしゃみ。 お体、冷えてしまったんですね」 「このままですと、お風邪をひいてしまいます。 お着替えの方が先ですね。 ああ、気の効かない洗濯狐ですみません」 「すぐに浴衣をお持ちしましょう。 乾いた浴衣をお貸ししますから―― ですから、その間に、ね?」 ;SE タオル渡す。ぽふっ 「どうぞ、この湯あがりてぬぐいで、 うしろあたまとお体の、雨をおぬぐいくださいな」 ;SE タオルで体をふく :16(マイクと逆向き) ;SE 引き出し開け 「浴衣、浴衣――ん……」 :16マイク向き 「ね! 旅の方、お好きな色って――きゃあっ!」 :16マイク逆向き 「い、いえ――お紺こそ、失礼いたしました。 急に、振り返ってしまったりして…………はうっ」 ;ぼそっと。静岡弁(ああ、恥ずかしいの意) 「ああ、てーさいのわりーことぉ――えっ!?」 「いえいえ、お紺は、別に、なんにも。 なんにもいってございませんよ? おほほほほ」 「それより! えと、あのっ、お体――あ、よかった。 でしたら、ね? こちら、浴衣」 ;8 マイク逆向き 「どうぞ、遠慮なくお着替えください。 お紺と同じお名前の――うふふっ、紺色の浴衣です」 「濡れてしまったものは、残らずお預かりさせてください。 囲炉裏に火を起こして、干して乾かしてしまいましょう」 ;環境音。焚き木、パチ、パチ。→フェードでボリューム絞る ;9逆向き ;濡れた服を絞る 「ん……」 ;SE 水滴落ちる 「ん――んっ……ふっ――」 ;SE 水滴 「うんっ」 ;SE 洗濯物を振って伸ばす。パンっ! 「ふぅ……こんなものでしょうか? 絞っても絞っても、冷たい水が次から次に…… これでは旅の方、すっかり冷えてしまいましたよね」 「ここに干せば――よいしょ―― 二、三刻(とき)もせず乾きましょう。 ああ、いけない。 すっかり旅の方をおまたせしてしまいました」 ;9(正常) 「いかがですか、お着替え――あら」 「あ…………」 「ああ、いえ、よくお似合いで…… とてもお似合いで、つい―― その、少し懐かしくなってしまって」 「その浴衣。お紺の父様(ととさま)のものだったんです。 それで、つい―― けれど……少し、ふしぎです」 「……旅のお方と、父様と。 お顔、少しも似てませんのに――あ」 「いやだ、お髪(ぐし)―― 旅の方の髪の毛、まだ濡れたままではないですか」 ;1 「いますぐにお拭き――ああ、いえ。 せっかくです、ね? 旅の方」 「ここはお紺に、 こころとからだを、こぉんとおあずけくださいませんか?」 「え? あら、いやだ。 『ぽぉん』だなんて、縁起でもない。 『こぉん』ですよ? 『こぉん』」 「だって――うふふっ、お紺は、洗濯狐ですから!」 ;環境音 焚き火F.O. ;//////// ;Track2:お紺の洗髪 ;//////// ;環境音 豪雨 ;9 「……雨、少しも弱まりませんね。 ただの夕立――にわか雨かと思ったのですけれど」 ;SE 窓閉め →環境音豪雨ボリュームダウン 「さて、おまたせをしてしまいました」 ;SE ヤカンが湯気を吐く。しゅんしゅん 「お湯もすっかり沸いたようです。 たらいのお水に……ん……よいしょ。 ゆるゆる、足していきますね?」 :SE たらいに張った水にお湯をそそぐ。とぽ――とぽとぽ 「……(呼吸音)……ん……っと! こんなところでどうでしょう?」 ;SE たらいの湯を指先でさぐる。ちゃぷり。 「……まだ少しぬるすぎますね――ん――」 :とぽとぽ 「……ふぅ――今度はどうでしょう?」 ;ちゃぷり――ちゃぶ! 「あ! 今度は少しだけあつすぎますね。 けど……水を足しては、きっと埋まりすぎます」 「ね? 旅の方。 少しだけお手をお借りしてよろしいですか?」 ;1 「あら、うれしい。 うふふっ、ありがとうございます」 「でしたら、ね? そのお手で――(呼吸音)―― はい。この棒を、お使いになって」 「たらいの中のお湯をゆるぅり、 波だてないようゆるぅり、ゆるぅり、 湯もみして、冷ましておいてくださいまし」 「え? ……コツ、ですか? ん――と。 いままでお紺は、特に考えずに手を動かして……」 「あ。そうですね。 それでは、ふふふ、失礼いたしますね?」 ;6(密着) 「こうして、ぴとり。手を添えて――」 「ゆっくりゆっくり、ゆるうりゆるうり、 なみだてないよう、しぶきをたてたりしないよう。 ゆっくりゆっくり、ゆるうり、ゆるうり」 「……(呼吸音)……うん、いい塩梅になってまいりました。 力をいれず……(呼吸音)……波だてず――」 「ゆるうり、ゆるうり。 かき回したりするのではなく、 お湯を撫で、なだめてあげるみたいに、ゆるうり」 「ゆるうり、ゆるうり――(呼吸音) ――ゆるうり――(密着解除)うん」 ;SE 水音(ちゃぷ) ;1 「たいへん結構なお点前です。 それでは、もう少しの間だけ、どうぞ、続けていてくださいね?」 「お紺は、その間に――」 ;SE 軽足音 ;16 「ん……石鹸と椿油と――<SE 引き出し開ける> あとは、うふふっ。天花粉(てんかふん)」 ;SE 軽足音 ;1 「さてさて。おまたせいたしました。 どうぞ、お手を止めてください。 すっかり支度も整いました――と」 ;SE ちゃぷ 「うんっ――いいお湯――って、 お紺にとっていいお湯でも、仕方のないことでした」 「ね? 旅の方。このたらいの湯の湯加減を 右手のお指で、どうぞ、はかっていただけませんか?」 ;SE ちゃぷ ;2 「『いいお湯』。ですか? うふふ、うれしい。 好みの湯加減――旅の方とお紺とで、いっしょ、ですね。 気があいます――あら」 「うふふふ――あ、いえ、 ほんのささやかなことなのですけれど」 「たらいの中で、ほぉら、ね? うふふっ。 <SE  ちゃぷちゃぷ> 旅の方のお指と、お紺の指と、 なかよくお風呂に入ってるなぁ、って」 「それがなんだかかわいらしくて―― このままのんびりするものきっと、素敵でしょうけど」 (ちゃぷっ) ;1 「いまはなにより、 旅の方のお髪を綺麗にかわかさないと。 ずいぶん、おまたせしてしまいました」 「乾かすまえに、雨の汚れを落としましょうね? それでは、ごろぉり。体を横たえてくださいませ」 ;1上方。マイクと逆向き 「ああ、違います、旅の方。 うつぶせではなく、仰向けに。 お顔を、ね? 天井に向けてくださいな」 ;1上方。マイク向き 「はい。結構です。 そうしたら――んっ―― お頭(つむ)、失礼いたしますね?」 ;1上方。至近。 「どうぞ、力を抜いてください。 お紺にまかせて――そうです、こうして、 お首を、お紺の腿の上に――」 ;SE (ちゃぷ……) 「それでは最初に、髪を濡らしてすすぎましょう。 痒いところが出てきましたら、 遠慮なくお知らせくださいね?」 「ん…………(呼吸音)……ん…… 旅の方の髪……うふふ――指ざわりがとても良いですね」 「お湯と一緒に、お紺の指をぐすふるようで…… ん……(呼吸音)……ふ……ん―― うふふ、お紺も、気持ちいいです」 「旅の方はいかがですか? かゆいところはございませんか?」 「はい、右耳の後ろですね? うふふっ、お紺のような狐もそこは、 かしかしと、掻くのを好むところです」 ;SE 水音 ;3 「こうして、ゆるうりと――<洗髪SE>―― いかかです? 旅の方。 え? 『もう少し強く』ですか? かしこまりました」 「ん……<洗髪SE>……ん……<洗髪SE> すこぉし強めて――