……おや。君か。  どうした? 眠れない、のか?    ……いや、謝る必要はない。  君が気に病む事はないんだ。  ……うん。  考えてみれば当然だな。  いくら大人びているとはいえ、君はまだ若い。  新しい家で、寝つけないのは当たり前だ。  私の配慮が足りなかったようだ。  すまない。  その……仲間にもよく言われるんだ。  『レイラは融通が利かない』とか……『鈍感だ』とか……。  そのせいで、君に悲しい想いをさせてしまったらしい。  ごめんな。  だが。  君と暮らすからには、これらの欠点も改めていくつもりだ。  私は君の同居人だ。  君が快適に暮らせるよう、最大限務める責務がある。  それに、いつまでも鬼だの、朴念仁だのとは言われていられないからな。  だからその……。  君さえよければの話だが。  来るか?    よし……おいで。  狭くないか? そうか。  はは。よかった。    で……? どうしたんだ?  わざわざ私の所に来るという事は、何かあったんだろう。  うん。  うん。  ほう……?  ……そうか。  なるほどな。  明日からの学校が不安だったのか。  ……そうだったのか……。  いや、すまん。至極自然な感情だと思うよ。  ただ、君はやはり、同期の中でもひときわ落ち着いているから。  てっきり、そういう悩みとか、恐怖とかとは無縁だと思ってしまっていたんだ。    いや、そうだろう。  私が君と同年代だったら、真っ先に君を意識するぞ。  何せ君は有望だ。人柄もいい。  私なら『ライバルになるのはきっとこいつだ』『置いて行かれないようにしないとな』と、確実に思うだろう。  あ、すまん。『こいつ』などと言って。  とにかく。  これからは、このように君に何かあった時。  私が最初に気づくようにする。  だからその時は君も、こんな風に想いを打ち明けてくれ。  そうだ。私は君の保護者になる女だからな。  これからは、上司としてだけでなく、同居人としても頼りにしてほしい。  わかったか?  そうだ。こうしよう。  ……これから私の話す事をよく聞いて。  それから、少し未来を想像してみてくれ。  よし。いいか?  君は大丈夫だ。私が保証する。  君はこれからこの土地で、きっと立派な功績を残す。  そして、我が騎士団の誇りとなるだろう。  その時は、きっと君の仲間が傍らにいて……。  私も必ずそこにいる。  どうだ。想像すると、何だか明るい気持ちになるだろう。  その始まりが君の明日だ。安心していい。  よし、よし。  おお、そうか。  眠れる気がしてきたか?  ああ。それは頼もしいな。  うん。そうだ。私達は一緒だ。  一緒に、この街を守って行こう。  おやすみ。今日もよく頑張ったな。  明日も……よろしく頼む。