おお。君か。 また眠れないのか? うん。いいぞ。 おいで。 なんだ。今日はどうした? 学校で何かやらかしたか。 それとも、これからの事について悩んでいる? はは。そりゃそうさ。 常日頃鈍いだの、観察眼に欠けるなどと言われている私でも、君の事なら自信がある。 何と言ったって、もう一か月も一緒に暮らしているんだからな。 私もだんだん、君という人間への理解を深めているという訳だ。 たとえば、こんな事がわかるぞ。 端的に言えば、君は見た目で損をしがちなんだな。 そう。 君はいかにも聡明だ。 問題なんてまず起こさなそうだし、周りからも『手がかからない』『この子ならきっと大丈夫だ』と放っておかれがちだ。 だが……実はそんなにしっかりしていない。 おまけに、かなりの淋しがり屋だ。 なのに、なかなかそれを理解されず、今まで色々苦労してきたんだろうと、今はわかるよ。 だから……こんな時は、どうするんだ? そう! 私に頼るんだ。 さぁ。話してみろ。 ……ふむ。 ほう……。 ……むっ。 そういう事か……。 うん。君の気持ちはよくわかった。 確かにそうだな。 今の暮らしに慣れてきたからこそ、気づいてしまう悩みというのもあるな。 そうか……。 そうだなぁ……。 では、今日は、この一ヶ月の歩みを振り返ってみるのはどうだ。 約一か月前、君はこの家で新しい暮らしを始めた。 慣れない事だらけだったろう。 不満に思う事や残念な事。 思うようにいかなかった事もあったはずだ。 だが、最終的には、どれもきちんと乗り越えた。 そんな君なら。 仮にまだ問題が残されていたとしても。 今後、これまでにない苦しみに直面したとしても。 きっと大丈夫だと、私は確信しているよ。 なぜなら、君はとてもよい子だし、考える力がある。 何より私がついているからな。 この私がいる限り、君を一人で悩ませはしない。 君がいつかこの家を出ていく日があったとしても、私は必ず、君の力になり続けると約束しよう。 だから、大丈夫だ。 よし、よし。 今日も話してくれてありがとうな。 おやすみ。君はいつも、とてもよくやっているよ。 たとえ君が、今の自分に満足していなかったとしても。 私は君を肯定しよう。 君は立派だ。私の自慢の部下であり、仲間だ。 だから……今日も安心して眠るといい。 うん。 おやすみ。