あら……貴方様でしたか。  ふふ。  いつも、何処からともなくいらっしゃる。  不思議なメイド様ですね。    ええ……存じ上げております。  今夜この屋敷で行われるパーティは、ただの晩餐会などではない。  私達の中から、選りすぐった者を競売にかけるための物だと。  そして、最初に売られるのは私。  ……ですね?    その準備として……私は急に、このような立派な部屋に入れられた。  そうでしょう?    あら。  なぜ、貴方様がそのような顔をなさるのです。  ここに連れて来られた時から、覚悟は決めております。  仮に私が逃げた所で、他の子が犠牲になるだけ。  であれば、年長の私が、この役目を担う。  あの子達の姉貴分として、出来る事はこれ位しかございませんわ。  それに、本日のお客様方は、私に大層ご関心がおありなのだとか。  羊だけでなく、蛇や蝙蝠。  『複数の特徴を持つ亜人は珍しい』と、鼻息を荒くしていると言うではありませんか。  ですから、少しは貴方様のお役に立てるはずです。  時間は私が稼ぎます。  貴方様はどうか、あの子達を救う手立てを探して下さいまし。    ふふ。  とうに存じ上げておりましたわ。  貴方様が、ただのメイドではない事は。  例え私がここを去っても。  貴方様であれば、きっとあの子達をお救いして下さると信じております。  私がお会いできるのは……きっとこれが最後でしょうけれど。      お慕いしております。  貴方様がこうして、隠れてお出ましになられては、私達を励まし、沢山の物を与えて下さった事。  私には、何よりの幸せでございました。    これまで、本当にお世話になりました。  どうか……あの子達をよろしくお願い致します。