『雪と秋』 01:蒲焼 秋「ねぇ雪。今日の夕ご飯はカバ焼きだって」 雪「そうなんだ。私、カバ焼き好き」 秋「うん、私も。でも、動物園に行くと悲しくなるよね」 雪「……なんで?」 秋「だって、あんな可愛らしい見た目のカバさんを食べちゃうんだから」 雪「え……。うなぎじゃないの?」 秋「カバだね」 雪「カバなの……?」 秋「カバ焼きって言ってるでしょ?」 雪「カバなんだ……」 秋「カバだよ」 雪「……そうなんだ」 秋「カバさん可哀想だね。カバさんには家族がいて、愛するヒトがいるのに。人間に殺されて食べられちゃうの。殺されたくないって叫びながら」 雪「かわいそう……」 秋「でも、命に感謝して食べるのも、大切なことなんだよ」 雪「だけど……カバさん……私、好きだから……だから……私……」 秋「わかった。それじゃあ今日のカバ焼きは、雪の代わりに私が食べてあげる」 雪「ほんと……?ありがと」 秋「いいんだよ!お姉ちゃんだからね。くふふ」 雪「……なんで意地悪する時の笑い方してるの?」 秋「ううん、何でもないよ。ほら、リビング行こ」 雪「うん」 02:テスト 秋「雪、そういえばテストの結果どうだった?」 雪「……秋ちゃんには関係ないでしょ」 秋「あー、点数悪かったんだ。ほら、見せて」 雪「あっ、勝手に取らないでよ」 秋「国語31点、算数18点、理科24点、社会20点。……ふざけたの?」 雪「ちゃんとしたよ……」 秋「ほら、私は全部100点だったよ」 雪「……ほっといてよ。もういいから」 秋「でもさ。このまま勉強できなかったら、雪無職だよ?無職になったら、内臓売らなきゃダメなんだよ」 雪「……うそ」 秋「私の目が嘘ついてる人間の目に見える?ホントだよ。メスでお腹切り裂かれて、内臓全部取られちゃうんだよ」 雪「やだ……」 秋「強制だよ。内臓は売られて、死体はホルマリンって言うので瓶詰めされて、お金持ちの家に飾られちゃうんだよ」 雪「いや……やだ……やだよ……」 秋「麻酔もしてくれないからすっごく痛いよ。血もいっぱいでるし。勉強しておけばよかったって後悔しながら死んじゃうの」 雪「ぐす……ぐす……やだ……死にたくない……死にたくない……」 秋「ごめんごめん。冗談だよ。だから、泣かないで。よしよし。ハンカチ使って」 雪「……ぐす。……ありがと」 秋「勉強しないと、こうやって怖いことになるんだよ。勉強、私が教えてあげるから。一緒に良い点取って、みんなのこと見返そ?……ね?」 雪「……うん」 秋「それじゃあまずは国語からだね」 03:突き指 秋「雪。指、大丈夫?まだ痛む?」 雪「うん。痛い」 秋「雪って、相変わらず運動音痴だよね。ドッジボールで突き指なんて。しかも両手とも……くふふ」 雪「笑わないでよ……。それに、秋ちゃんまで早退しなくてもいいのに……」 秋「ダメだよ。雪一人じゃ、ちゃんと下校できないでしょ?途中で迷子になったりさ」 雪「……私のことなんだと思ってるの」 秋「誘拐されるかもしれないじゃん」 雪「……二人でもされるよ」 秋「二人なら、誘拐されても、一緒でしょ?」 雪「……」 秋「それに、雪の誘拐される瞬間の顔想像したら、面白いなって」 雪「……秋ちゃんってほんといじわるだよね」 秋「くす。愛の鞭だよ」 雪「もういい。指痛いから、もう寝る」 秋「あ、ちょっと待って」 雪「なに?」 秋「これ」 雪「プリン?秋ちゃんのでしょ」 秋「突き指して、嫌な日になったから。だからこれ食べたら、プラスマイナス0になれるよ」 雪「……ありがと」 秋「食べさせてあげるから、お口開けて」 雪「うん」 秋「はい、あーん。……美味しい?」 雪「……うん。おいしぃ」 04:三者面談 秋「雪、またお部屋暗くして。電気ぐらい付けなよ」 雪「……」 秋「ねぇ雪、お風呂沸いたって。一緒に入ろ」 雪「……入らない」 秋「聞いたよ。三者面談で、ママと先生に怒られたんだってね」 雪「……」 秋「お小遣いも、来月分なしにされて」 雪「……ほっといてよ」 秋「……勉強、頑張ったのにね」 雪「……頑張っても意味ないもん」 秋「お風呂入らないと、またママに怒られちゃうよ」 雪「……」 秋「じゃあ今日は、私も入らないでおこっかな」 雪「……」 秋「ほら、雪の好きな映画、持ってきたよ。一緒に見よ」 雪「……。怒られちゃうよ」 秋「どうせ怒られるんだから、一緒でしょ?」 雪「…………」 秋「それと、はい」 雪「……なに、それ」 秋「メロディちゃんのぬいぐるみ。欲しがってたでしょ?」 雪「……どうしてくれるの?」 秋「私ね、三者面談で沢山褒められて、お小遣い増やしてもらったから。だから、雪にプレゼント」 雪「…………いらない。嬉しくない」 秋「……。…………そっか。……ごめんね」 雪「…………。……秋ちゃん。……やっぱり、ほしい」 秋「ふふ。いいよ」 雪「……ありがと」 秋「でも、タダじゃないから。次良い点取って、お小遣い増やしてもらえたら、お返しちょうだい」 雪「……。うん」 秋「…………」 雪「…………」 秋「電気消えてると、映画も雰囲気出るね」 雪「うん」 05-誕生会 秋「雪。もうみんな帰ったから、お風呂入ってもいいよ。……ごめんね。誕生会、長引いちゃって」 雪「……うん」 秋「雪も降りてこればよかったのに。こんないっぱい、プレゼントもらえたよ」 雪「……私はいいから。楽しくないし」 秋「お部屋で体育座りしてるよりかは楽しいよ」 雪「……楽しくない。……それに、みんな、私にプレゼントしたくないし」 秋「そんなことない・・・のかなぁ……?うん、多分そんなことないよ。多分」 雪「……秋ちゃん嫌い」 秋「私は好きだよ」 雪「……」 秋「余った分のケーキ、持ってきたよ。いちごショート、好きでしょ?」 雪「……うん」 秋「あ、待って。ケータイ借りてきたから、誕生記念に、ケーキと一緒に二人で撮ろ」 雪「……別にいいけど」 秋「ふふ。それじゃあ、はいチーズ」 雪「……」 秋「う〜ん。雪、真顔だね。顔かわいいんだから、もっと笑ったらいいのに」 雪「……」 秋「ほぉら、もう一枚。笑って?」 雪「楽しいことないし。ケーキ食べていい?」 秋「ふーん。わかった。それじゃあ、ほっぺツマんで、笑い方教えてあげる」 雪「んん〜。やめへ……わかっはから……わかっは……わらうから……やめへ……」 秋「ふふ、初めから素直にそうすればいいんだよ。ほら、笑顔」 雪「……こお?」 秋「引き攣ってるね。……上手く笑えたらモテるのになぁ。特に大人の男の人に」 雪「…………ほんと?」 秋「うん。きっと、振り向いてもらえるよ。沢山笑ったら。雪のこと大好きってなるよ」 雪「……わかった」 秋「大好きな人に結婚申し込まれるところ想像して……その時の気持ちは?」 雪「……」 秋「うん、良い笑顔。それじゃあ……はいチーズ」 06:track5B-2 秋「雪、ただいま」 雪「……」 秋「雪、寝てるの?」 雪「……」 秋「雪、よしよし。たくさん頑張ったね」 雪「……」 秋「雪、私ね、付き合うことになったんだ」 雪「……」 秋「来週、一緒に遊ぶ約束もしたの」 雪「……」 秋「きっと楽しいだろうなぁ。沢山イチャイチャして」 雪「……」 秋「……。だからさ、雪も、一緒に行こ」 雪「…………。……なんで?」 秋「ねぇ雪。好きな男の人に彼女がいたら、アタックしちゃダメって法律はないんだよ。彼女は、一人じゃないとダメって法律もないし。一回振られたら、諦めないといけないって法律もないの」 雪「……。うん」 秋「それに、一度振った女は、罪悪感とかで、気になっちゃうのが男の人の心理らしいよ」 雪「……そうなんだ」 秋「雪の話して、雪の気持ち教えてあげたから、もしかしたら今ごろ、心が揺れてるかもね」 雪「……そう、なんだ」 秋「……でも、私も雪に取られたくないから。だから、雪に取られないように頑張るよ」 雪「……」 秋「だからね、また二人で色々考えて、沢山アピールして……二人で取り合って、振り向いてもらえるように、がんばろ」 雪「……」 秋「次はきっと、好きになってもらえるから」 雪「……ほんと?」 秋「私が雪に、嘘ついたことある?」 雪「……いっぱいあるよ」 秋「ふふふ。それじゃあ嘘かどうか確かめるために、会いに行こ。えっちな服また買ってさ」 雪「…………うん」 秋「でも、その前に……まずはその顔、直さないとね。目元赤く腫れさせちゃって、それに、そんな掠れた声じゃ、好きになってもらえないからね」 雪「……わかった」 秋「ねぇ、雪」 雪「……なに?」 秋「大好きだよ」 雪「…………。うん」